A-6.建築条件付き土地

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建築条件付き土地とは、その土地の上に建物を建築する契約を、特定の施工業者等と締結することを条件とされている土地のことを言います。そして、そのようにして建設される住宅のことを売建住宅と呼びます。
逆に、既に土地の上に完成した(又は完成間近の)住宅が存在する状態において、当該不動産が取引される場合、その建物については建売住宅と呼ばれています。
このような用語については、一般的にも周知されてきているように思います。一方で、建築条件付き土地・売建住宅は、建物が完成していない段階で不動産の売買契約を締結することになりますから、実物を確認した上で行う建売住宅の取引よりも、慎重な取引が求められるように思います。
そこで、今回は、建築条件付き土地及び売建住宅に関する取引における注意点等を中心に解説させていただきます。

1.建築条件が付される理由

(1)建物の建築契約によっても利益を得ることができる

建築条件付きの土地は、建築条件が付されていない土地よりも、比較的安価で取引されるのが通常です。建築条件が付されていない土地については、売主は土地の売買代金で利益を得るしかありませんが、建築条件付き土地の場合には、売主と何らかの関係性を有する施行業者に建築を担当させることで、建物の建築との関係でも利益を得られるからです。
土地の取引との関係では、土地を引き渡した後にどのような建物を建築するのかについては、本来的には買主の自由です。売主としては、土地を引き渡し、その土地の代金を受領することで、土地の売買契約に関する主たる債権は回収済であるということができます。
しかしながら、建築条件付き土地として取引を行う場合には、土地の価格を減額していることが多い分、売主としては、土地の購入代金を受領しただけでは、その取引について十分な利益をあげられていないということになります。

(2)建築条件を満たさなかった場合の処理

したがって、買主が何らかの理由で、建築条件に違反し、建物の建設する契約を締結しなかったり、他の施行業者に建築を依頼したりしたような場合には、売主としては契約違反を理由に、土地の契約を解除したいと考えるように思います。
もっとも、建築条件を付しただけでは、このような場合に解除が認められるかというと、そういう訳ではありません。
この点について、最判昭和36年11月21日(民集15巻10号2507頁)は、「当事者が契約をなした主たる目的の達成に必須的でない付随義務の履行を怠ったに過ぎないような場合には、特段の事情の存しない限り、相手方が当該契約を解除することができない」と判示しています。
上記最高裁は、建築条件付き土地についての事案ではありませんが、建築条件付き土地の取引との関係においても、主たる目的は、土地の引渡しと、その対価としての購入代金の支払いということになりますから、建築条件に違反した場合に、契約を解除することは困難だということになります。
また、買主に対する損害賠償の請求にも難しい問題があります。それは、建築条件に違反していることは明らかであっても、この条件に違反したことによってどの程度の金額について損害が生じたのかを立証するのが困難であるため、買主に対して賠償を求める金額を定めにくいからです。

2.建築条件を遵守させるための方法

上述したとおり、建築条件を土地の取引の際に付すことは可能ですが、何らの手立てもしていないと、土地を引き渡した後に、買主が建築条件に違反した場合の処理が後手後手になってしまいます。
そこで、建築条件については、単なる一条項として定めるのではなく、その土地の売買契約の停止条件又は解除条件として定めることが考えられます。

民法

第127条
1項 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
2項 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。
3項 当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。
第128条
条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。
第129条 条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。

停止条件や解除条件という概念は民法に定められたものです。
建築条件を停止条件とする場合、買主が建築条件の定めにしたがって特定の施行業者と建築契約を締結するまでは、停止条件を成就していないことになりますから、それまでの間は土地の売買契約についての効力も発生しないことになります。したがって、売主は土地を引き渡す必要がないことになります。つまり、土地の売買契約を解除することなく、土地を取り戻すことが可能になるのです(とはいえ、契約を残してしまうと、条件を成就させた場合には土地を引き渡さなければいけない状況が続きかねませんから、他の買主を探すこととの関係でも、契約を解除する必要はあるでしょう)。
逆に解除条件とする場合には、建築条件が成就しないことをその内容として定めておくことになろうと思います。

3.建築条件違反の効果

建築条件に違反することによって不利益が生ずるのは専ら売主であり、基本的には買主側への負担は生じないように思います。
そこで、売主としては、買主が建築条件に違反した時のための規定についても、土地の契約書の中に定めておく必要があります。
しかし、この点については法律の定めが存在します。

不動産の表示に関する公正競争規約

第1条
この公正競争規約(以下「規約」という。)は、不当景品類及び不当表示防止法…第31条第1項の規定に基づき、不動産の取引について行う表示に関する事項を定めることにより、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択及び事業者間の公正な競争を確保することを目的とする
第5条
事業者は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、宅建業法第33条に規定する許可等の処分があった後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物の内容又は取引条件その他取引に関する広告表示をしてはならない。
第6条
1項 前条の規定は、建築条件付土地取引に関する広告表示中に表示される当該土地に建築すべき建物に関する表示については、次に掲げるすべての要件を満たすものに限り、適用しない。
1号 次の事項について、見やすい場所に、見やすい大きさ、見やすい色彩の文字により、分かりやすい表現で表示していること。
ア 取引の対象が建築条件付土地である旨
イ 建築請負契約を締結すべき期限(土地購入者が表示された建物の設計プランを採用するか否かを問わず、土地購入者が自己の希望する建物の設計協議をするために必要な相当の期間を経過した日以降に設定される期限)
ウ 建築条件が成就しない場合においては、土地売買契約は、解除され、かつ、土地購入者から受領した金銭は、名目のいかんにかかわらず、すべて遅滞なく返還する旨
エ 表示に係る建物の設計プランについて、次に掲げる事項
(ア)当該プランは、土地の購入者の設計プランの参考に資するための一例であって、当該プラン を採用するか否かは土地購入者の自由な判断に委ねられている旨
(イ)当該プランに係る建物の建築代金並びにこれ以外に必要となる費用の内容及びその額
2項 土地取引に係る第8条に規定する必要な表示事項を満たしていること。
第26条
1項 公正取引協議会は、第5条から第23条までの規定に違反する事実があると思料するときは、その事実について必要な調査を行うため、当該事業者若しくは参考人を招致し、これらの者に資料の提出、報告若しくは意見を求め、又は当該事業者の事務所その他の事業を行う場所に立ち入ることができる。
第27条
1項 公正取引協議会は、第5条及び第8条から第23条までの規定に違反する行為があると認めるときは、当該違反行為を行った事業者に対し、当該違反行為を排除するために必要な措置を直ちに採るべきこと並びに第5条及び第8条から第23条までの規定に違反する行為を再び行ってはならないこと を警告し、又は50万円以下の違約金を課すことができる。
2項 事業者は、前項に規定する警告を受けたときは、当該警告の内容である措置を直ちに実施し、又は当該警告の内容に反する行為を行ってはならない。
3項 公正取引協議会は、事業者が前項の規定に違反していると認めるときは、当該事業者に対し、500万円以下の違約金を課し、公正取引協議会の構成員である資格を停止し、除名処分をし、又は消費者庁長官に対し、必要な措置を講ずるよう求めることができる。

上述した内容は、広告表示に関する規程ですから、全ての土地の取引に妥当するものではありませんが、建築条件付き土地の買主を募集するにあたっては、広告が用いられるケースがほとんどであるといえるでしょうから、上述した内容を遵守しなければ、違約金等の支払を求められることになります。
売主としては、建築条件が成就されなかった場合、事前に支払わせた金額について返済しなければいけなくなります。
そうすると、違約金等の定めを設けることで、理不尽な建築条件違反について対応することになるものと思われます。
また、建築条件の成就に長い時間をかければかける程、その条件が成就されなかった場合の機会損失を売主は負担することとなってしまいます。したがって、請負契約の締結までの期限については3月程度と定めることが多いように思います。あまりにも短い期間を定めると、買主が建築内容について十分に検討することができず、不当な契約内容と解されるおそれがあるためです。

4.建築条件を付するときの注意点

当たり前の話ですが、建築条件を付した土地の売買契約は、建物の建築前に締結されるものです。建築条件が付されていない場合と比較すれば、建築する建物の内容に制限がかかってしまいますが、建売住宅を販売する場合と比較すると、買主の選択の余地は大きいはずです。
したがって、建築する建物の内容がほぼ決まっている程度に、建築契約の内容の幅が狭い場合には、実質的には建築条件付きの土地の売買というよりも、建売住宅の売買契約と評価されかねません。このような場合には、上述した公正競争規約にも違反することとなります。
また、建築条件付き土地の売買契約が解除されるのは、買主と土地の売主との諍いによるものではなく、その多くは買主と請負業者との間の諍いによるものです。買主の希望と請負人の設計内容が乖離する場合に、両者の信頼関係が損なわれ、土地の契約についての解除にも繋がってしまうのです。
そうすると、買主と請負人との間の建築契約について、売主は当事者ではないのですが、事後的に土地の契約まで解除されてしまうリスクを減らすためには、その工事の内容についても、土地の契約の前に十分にヒアリングを行っておくことが望ましいものといえるでしょう。

5.まとめ

土地の売買契約の際に、建築条件を付すること自体は、特に違法なものではありません。土地の売買契約と建物の建築契約の抱き合わせ契約のような側面があることから、違法性が主張されることもありますが、実務上定着しており、適切な運用がなされれば、このような条件を付することを控える必要はありません。
一方で、売主からすれば、売買契約が締結された場合、土地を引き渡して代金を受領できれば、瑕疵担保責任(契約不適合責任)等の問題を除いて、土地の取引を終えることができるのにもかかわらず、土地の契約の中で、建物の建築契約を条件とすることによって、建物の建築契約にかかるトラブルを理由とする、土地の売買契約の解除のリスクも負うことになってしまいます。
建築条件を付する場合には、この点についてのリスクを十分に認識しておく必要があるでしょう。

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