A-7.瑕疵と解除(契約不適合と解除)

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不動産売買契約を締結する際には、売買契約の目的物を十分に調査し、重要事項説明書等によって十分な説明がなされることになります。
しかしながら、それでも、不動産が引き渡された後になってはじめて、その不動産が有する欠陥が発覚することがあります。
そのような欠陥を有する商品を購入した買主としては、欠陥のない商品と交換してもらいたいと考えることになると思いますが、不動産の場合には、その特定の不動産についての売買契約が締結されているのであって、その不動産に欠陥が認められたからといって、別の不動産と交換してもらうということは考えられません。
そこで、民法は、売主に対して瑕疵担保責任という責任を課すことで買主を保護してきました。この責任は、民法が改正されたことによって、契約不適合責任という名前に変わっていますが、その根本的な性質は変わっておらず、契約の解除や損害賠償等を求める権利を買主に認めることで、買主を保護するためのものと理解されています。
締結された契約が事後的に解除されることになる訳ですから、大きなトラブルに繋がることが多く、瑕疵担保責任(契約不適合責任)を買主から追及されるような事態は厳に避ける必要があります。
そこで、今回は、瑕疵担保責任(契約不適合責任)の内容や、瑕疵担保責任が認められた場合に、買主からどのような請求がなされ得るのかについて解説させていただこうと思います。
どのような内容が「瑕疵」として扱われるのかという具体例については、別のページで解説させていただいておりますので、こちらを御確認ください。

1.瑕疵担保責任とは何か

(1)改正前民法の内容

冒頭でお話させていただきましたとおり、民法が改正されたことに伴い、「瑕疵」という言葉は用いられなくなり、契約不適合責任という用語を用いるようになりました。
しかしながら、基本となる考え方は変わっておりませんから、まずは改正前民法の内容を確認したいと思います。

改正前民法

第570条
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用す る。…
第566条
1項 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。

つまり、売買の目的物に「隠れた瑕疵」があった場合、買主は契約の解除や損害賠償請求をすることができる旨が定められていたのです。

(2)改正民法の内容

一方で、2020年4月1日から施行された改正民法においては、上述した条文が次のように改正されています。

改正民法

第562条
1項 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2項 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。
第563条
1項 前条第1項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2項 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
1号 履行の追完が不能であるとき。
2号 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
3号 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期 間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
4号 前3号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完 を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
3項 第1項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。
第564条
前2条の規定は、第455条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。
第565条
前3条の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について準用する。
第566条
売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

見て直ぐにわかることは、条文の数が増えており、定められている内容についても詳細になっているという点です。
もっとも、従前「隠れた瑕疵」と表現されていた部分については、「契約の内容に適合しない」という表現に改められているにすぎず、条文の規定が詳細になっているのは、売主が買主に対して求めることのできる内容の部分です。

(3)売主に責任が認められる根拠

冒頭でお伝えしたとおり、瑕疵担保責任(契約不適合責任)は、買主を保護するために売主等に課された制度です。
不動産売買契約等、契約の対象となる目的物が特定されているような場合、その契約によって認められる売主の債務は、その目的物を引き渡すことになります。逆に、買主の債務は代金を支払うことになります。
仮に、契約の対象となっている不動産に何らかの欠陥がある場合であっても、売主に似たような条件の別の不動産を買主に引き渡す義務が生じることはなく、売主としてはその欠陥を有する不動産を引き渡すことになります(この点について、改正民法によって、このような不動産を引き渡しただけでは、売主の債務が履行されたことにはならないことが明記されました)。
この時に、欠陥がない場合と同様の代金を支払う義務を買主に課してしまうのはフェアではありません。この不公平を是正するための制度が、瑕疵担保責任(契約不適合責任)と呼ばれるものになります。
したがって、売主に課される責任ではありますが、売主に対する制裁として課されているものではありませんから、売主側に何らの過失が認められない場合であっても、この責任は発生することがあるのです。

2.瑕疵担保責任(契約不適合責任)の効果

(1)契約の解除

改正民法第564条は、民法第541条等による解除権の行使を妨げない旨を定めています。

改正民法

第541条
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
第542条
1項 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
1号 債務の全部の履行が不能であるとき。
2号 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
3号 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
4号 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期 間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
5号 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
2項 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
1号 債務の一部の履行が不能であるとき。
2号 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
第543条
債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前2条の規定による契約の解除をすることができない。

つまり、契約不適合の目的物を引き渡しただけでは、売主の債務が履行されたことにはならず、債務不履行になることを前提に、解除権の行使を認めるものとしているのです。
改正民法の解除に関する規程は、債務者(不動産売買契約における瑕疵担保責任(契約不適合責任)との関係では売主)の過失を問題としていませんから、売主に何らの落ち度がない場合であっても、買主は解除する事が可能となります。
一方で、買主に落ち度がある場合には、解除権の行使は認めないものとしています。契約が解除されると、売主としては売買代金を返金する必要がありますし、大きな損害を被るため、買主に落ち度がある場合には、そのような負担を売主に与えないようにしているのです。

(2)損害賠償請求

改正民法564条は、民法第415条の損害賠償の請求を妨げない旨が定められています。

改正民法

第415条
1項 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2項 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
1号 債務の履行が不能であるとき。
2号 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
3号 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解 除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

民法第415条は上述のとおり損害賠償請求が可能である旨を定めています。解除権の行使の話と同様に、契約不適合の目的物を引き渡しただけでは、債務不履行になることを前提にしています。
不動産売買契約における瑕疵担保責任(契約不適合責任)との関係において、民法第415条1項は、売主の「責めに帰することができない事由」が存在する場合には、損害賠償責任を負わない旨を定めています。つまり、買主側の落ち度を問題にはしていませんし、売主は、この損害賠償責任を免れるためには、自ら自身の責任がないことを立証しなくてはならないのです。
なお、賠償を求めることのできる範囲については、現時点においてどのようになるのか不透明な部分が残されています。従前は、信頼利益といって、欠陥のない不動産であると信じたことに伴う利益しか請求できないと考えられていました。民法改正によって、履行利益といって、欠陥のない不動産が引き渡された時に得られる利益についてまで請求することが可能であると考えられていますが、現時点においてこの点の法解釈は確立していません。
しかしながら、売主としては、法改正によって、より大きな賠償責任を負担する可能性があると考えておいた方がいいでしょう。

(3)その他の請求権

まず、改正民法562条は、買主に対して追完請求権を認めています。目的物に欠陥がある場合であっても、その欠陥を修復することができる場合、買主としては契約の目的物となっている不動産を欠陥のない形で引き渡してもらいたいと考えるのが自然だと思いますので、このような請求が可能である旨が定められています。
しかしながら、瑕疵担保責任(契約不適合責任)は、不公平を是正するためのものですから、売主に過大な負担を強いる場合や、買主側に何らかの落ち度がある場合には、追完請求権は認められませんし、そもそも修補が不可能な場合についても追完請求は認められません。
また、単純に購入代金を減額するという解決策も考えられ、この解決策を改正民法第563条が定めています。
これらの規定は、改正前民法には定められていませんでしたが、目的物に欠陥があった場合の解決方法を多様なものにするために、新たに追加されたのです。

3.瑕疵担保責任(契約不適合責任)に関する契約条項

(1)瑕疵担保責任(契約不適合責任)の免除の可否

以上のように、瑕疵担保責任(契約不適合責任)が追及された場合のデメリットには大きいものが認められます。瑕疵担保責任(契約不適合責任)に関する紛争を回避するためには、取引の対象となる不動産の内容について十分に調査し、買主にその内容を全て認識させた上で取引することが一番ですが、事後的に欠陥があったなどと主張されるリスクを全てなくすことはできません。
そこで、契約の際に瑕疵担保責任(契約不適合責任)を免除するような特約を付すことが検討されることになります。
このような特約は、契約当事者が合意した内容であれば有効であると理解されています。瑕疵担保責任(契約不適合責任)を免除することで、安価な購入代金で不動産を入手できることを買主が受け入れるようであれば、そのような特約の効力を否定する必要はないからです。
もっとも、そのような条項を契約書や重要事項説明書に記載しておけば瑕疵担保責任(契約不適合責任)が一切免除されるという訳ではなく、裁判例においてはその特約の効力について厳格に判断されています。
具体的には、そのような特約の効力は、契約締結時に当事者が想定していた瑕疵の内容にとどまることになります。
例えば、東京地判平成20年5月29日(平成19年(ワ)第14903号)は、瑕疵担保責任を免除する特約が付されていたものの、売買契約当時、瑕疵として主張されている地下室の存在は、両当事者ともに認識することはできておらず、瑕疵担保責任を免除する対象に含まれていないと解し、買主の損害賠償請求を認容しています。

(2)瑕疵担保責任(契約不適合責任)を免除するための条項

以上のように、契約当時、買主が想定できていないような瑕疵が発見された場合には、瑕疵担保責任を免除する特約の効力が及ばないことになります。民法改正によって契約不適合責任と改められた現段階においては、より一層契約当事者の意思の内容が重視されることが予想されます。
したがって、契約の際に、瑕疵担保責任(契約不適合責任)を免除したいと考える場合には、その免除の対象となる範囲について、買主に対して正確に説明することが求められます。
また、契約書や重要事項説明書の中でも、瑕疵担保責任(契約不適合責任)を免除する旨を正確に表記する必要があります。
この点について、東京地判平成28年4月13日(平成26年(ワ)第12837号等)は、買主に対する説明が不十分であったことに加えて、瑕疵担保責任について定められた契約書上の不動文字について、当該条項を破棄する旨の特約が定められているだけでは、瑕疵担保責任を免除する旨が合意されたものと解することはできない旨が判示されています。
また、札幌地判平成17年4月22日(平成14年(ワ)第1853号)は、重要事項説明書の中に、瑕疵担保責任を免除する旨の記載がなされていたとしても、その瑕疵について一切買主に対して説明していないことや、瑕疵担保責任免除特約の対象として他の瑕疵を想定していた可能性があることなどを理由に、瑕疵担保責任免除特約の効力を否定しています。
ですから、単に瑕疵担保責任(契約不適合責任)を一切免除する旨を契約書や重要事項説明書に記載するだけでは足りず、具体的にどのような内容の瑕疵を念頭においているのかについて、具体的に定めることが望ましいものといえます。

4.他の法律との関係

以上のように、瑕疵担保責任(契約不適合責任)を免除することは可能です。しかしながら、買主を保護するための重要な権利を放棄させる内容になりますから、他の法律によって、瑕疵担保責任(契約不適合責任)を免除・制限する条項は制限されています。
まず、宅地建物取引業法との関係です。

宅地建物取引業法

第40条
1項 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法…第566条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
2 前項の規定に反する特約は、無効とする。

つまり、瑕疵担保責任(契約不適合責任)を追及できる期間の制限について、過度に買主に不利な期間を定められないようにしています。
次に、消費者契約法との関係も問題となります。

消費者契約法

第8条
1項 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
1号 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
2号 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項
3号 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
4号 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項
2項 前項第1号又は第2号に掲げる条項のうち、消費者契約が有償契約である場合において、引き渡された目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき…に、これにより消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任を免除し、又は当該事業者にその責任の有無若しくは限度を決定する権限を付与するものについては、次に掲げる場合に該当するときは、同項の規定は、適用しない。
1号 当該消費者契約において、引き渡された目的物が種類又は品質に関 して契約の内容に適合しないときに、当該事業者が履行の追完をする責任又は不適合の程度に応じた代金若しくは報酬の減額をする責任を負うこととされている場合
2号 当該消費者と当該事業者の委託を受けた他の事業者との間の契約又は当該事業者と他の事業者との間の当該消費者のためにする契約で、当該消費者契約の締結に先立って又はこれと同時に締結されたものにおいて、引き渡された目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないときに、当該他の事業者が、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことにより当該消費者に生じた損害を賠償する責任の全部若しくは一部を負い、又は履行の追完をする責任を負うこととされている場合

つまり、消費者契約にあたる不動産売買契約との関係では、損害賠償責任を免除するような特約を付せない可能性があるのです。
その他にも住宅品質確保法等による制限があります。瑕疵担保責任(契約不適合責任)の免除に関する条項を契約内容に盛り込む場合には、他の法律による制約の有無についても検討しなければ、事後的にその特約が無効とされてしまう可能性がありますので、注意が必要です。

5.まとめ

今回は、瑕疵担保責任(契約不適合責任)の性質や、その責任が認められた場合に、売買契約の当事者にどのような権利義務が発生するのかについて解説させていただきました。
契約の解除や損害賠償請求が可能となる訳ですから、売主に対する負担は大きなものとなります。したがって、契約締結の段階で、このような責任が発生することのないように努める必要があります。そこで、契約条項との関係についても簡単に触れさせていただきました。
一方で、今回の解説の中では、果たしてどのような欠陥が「瑕疵」又は「契約不適合」と認められるのかについては触れませんでした。この点については、別のページで解説させていただきますので、適宜そちらも参考になさってください。

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