中古住宅の契約不適合責任|雨漏りが起きた場合の対処法を解説

中古住宅を購入する際によくあるトラブルが「雨漏り」です。築年数がある程度経過した中古住宅では、屋根や外壁などの経年劣化により雨漏りが生じやすくなっています。

新築住宅であれば、雨漏りのある状態では当然契約内容に適合していないといえますので、契約不適合責任を追及することができます。しかし、中古住宅の場合には、雨漏りが起きたとしても売主の契約不適合責任を追及できないケースもありますので注意が必要です。

今回は、中古住宅で雨漏りが生じた場合の対処法について、わかりやすく解説します。

1、中古住宅はなぜ雨漏りしやすいのか

新築住宅に比べて中古住宅では雨漏りが生じやすくなっています。それには、以下のような理由があります。

(1)屋根材の老朽化

建物の屋根材として利用されるのは、主に瓦、スレート、ガルバリウム(金属板)の3種類です。それぞれの屋根材の耐用年数は異なりますが、紫外線や風雨に長期間さらされることで屋根材が老朽化し、雨漏りのリスクが高くなっていきます。

築年数の経っている中古物件では、老朽化した屋根の隙間などから雨水が侵入し雨漏りが生じる可能性があります。

(2)外壁の亀裂やコーキングの劣化

雨漏りというと屋根からの雨水の侵入をイメージする方も多いと思います。しかし、雨漏りは屋根だけでなく外壁からも生じるということを覚えておくことが大切です。

外壁も屋根と同様に紫外線や風雨に長期間さらされることで、次第に劣化していきます。定期的な塗装を行うことで防水性能を保つことができますが、それを怠っていた中古住宅では、外壁の亀裂などから雨水が侵入するリスクがあります。また、外壁にサイディングを使用している住宅では、コーキングの劣化によりそこから雨水が侵入する可能性もあります。

(3)昔の建築基準で建てられている

築年数の経過している中古住宅では、昔の建築基準で建てられているものもあります。今では考えられないような工法で建てられているものもあり、そのような物件では必然的に雨漏りのリスクが高くなります。

2、雨漏りが生じた場合には契約不適合責任の追及を検討

中古住宅で雨漏りが生じた場合には、売主に対する契約不適合責任の追及を検討します。

(1)契約不適合責任とは

契約不適合責任とは、売主から引き渡された目的物に種類・数量・品質に関する契約内容との不適合がある場合に生じる売主の責任をいいます。

たとえば、雨漏りがないことを前提に中古住宅を購入したにもかかわらず、入居後しばらくしてから雨漏りが発生したという場合には、目的物の「品質」に売買契約との不適合が生じることになります。このような場合には、売主に対して、契約不適合責任を追及することができます。

契約不適合責任という言葉を聞きなれない方も多いかもしれませんが、これは、以前「瑕疵担保責任」と呼ばれていたものが、民法改正により「契約不適合責任」に変更されたものです。法改正により、「隠れた瑕疵」という要件から「契約内容との不適合」という要件に改められ、一般の方でもわかりやすい表現になり、新たな救済手段も追加されたことで、買主の保護がより一層図られることになりました。

(2)契約不適合責任に基づく責任追及の方法

契約不適合責任に基づいて売主の責任を追及する場合には、以下の4つの方法があります。

①追完請求

追完請求とは、契約内容に適合するように目的物の補修、代替物の引渡し、不足分の引渡しなどを求めることをいいます。

たとえば、屋根材の老朽化により雨漏りが発生したという場合には、売主に対して追完請求をすることで屋根の修理を求めることができます。

ただし、買主の行為が原因で雨漏りが生じたような場合には、売主に対して追完請求をすることはできません。

②代金減額請求

代金減額請求とは、目的物に契約内容との不適合がある場合に、その不適合の程度に応じた代金の減額を求めることをいいます。

たとえば、屋根から雨漏りが発生した場合に、売主が屋根の修理に応じてくれない場合には、修理費用に相当する金額を売買代金から減額するように求めることができます。

ただし、追完請求と同様に買主の行為が原因で雨漏りが生じたような場合には、売主に対して代金減額請求をすることはできません。

③損害賠償請求

雨漏りが生じた物件を引き渡されたことにより、買主に損害が発生した場合には、売主に対して損害賠償請求が可能です。たとえば、雨漏りによって汚損した家具・家電、修理期間中自宅に住めなくなった場合のホテル代などが損害として考えられます。

ただし、契約不適合責任に基づいて損害賠償請求をする場合には、売主に過失があることが必要になります。

④契約の解除

売主に対して、雨漏りの修理を求めたにもかかわらず、相当期間内に対応がないという場合には、売買契約を解除することも可能です。売買契約が解除された場合には、売主に対して既に支払った売買代金全額の返還を求めることができます。

3、雨漏りが起きても責任追及ができないケースもある

中古住宅の場合には、雨漏りが起きても責任追及できないケースもありますので注意が必要です。

(1)雨漏りが契約書で明示されていた

契約不適合責任は、引き渡された目的物が契約内容と適合しない場合に発生する売主の責任です。そのため、契約不適合責任を追及する前提として、目的物に契約内容との不適合がある必要があります。

中古住宅を購入する際に、雨漏りがあること、屋根材が劣化していること、外壁に亀裂が生じていることなどが不動産売買契約書や重要事項説明書で明示されていた場合には、それらが契約内容になります。そのため、実際の物件で雨漏りが生じたとしても、契約内容との間に不適合はありませんので、売主に対して契約不適合責任を追及することができません。

中古住宅を購入する際には、売買契約書や重要事項説明書をしっかりと精査することが大切です。

(2)契約不適合責任の免責特約が設けられていた

売主の契約不適合責任は特約で免責することが認められています。不動産売買契約書に契約不適合責任の免責特約が設けられている場合には、中古物件に雨漏りが生じたとしても原則として契約不適合責任を追及することはできません。

ただし、契約不適合責任の免責特約が設けられていたとしても、例外的に契約不適合責任を追及できるケースもあります。具体的には、以下のようなケースです。
●消費者契約法が適用されるケース
●宅建業法が適用されるケース
●売主が契約不適合を知りながら買主に告げなかったケース
●売主の行為により権利に関する不適合が生じたケース
●新築物件を購入したケース

このように例外的に契約不適合責任を追及できるケースもありますので、すぐに諦めてしまうのは禁物です。

(3)契約不適合責任の期間が経過している

契約不適合責任には、権利行使の期間が定められています。目的物に契約内容との不適合があることを知ったときは、その時点から1年以内に売主に対して通知しなければなりません。たとえば、購入した中古物件が雨漏りしていることに築いた場合には、そのときから1年以内に雨漏りがあることを売主に対して通知しなければ、期間経過により契約不適合責任を追及することができなくなってしまいます。

4、雨漏りが問題になった裁判例の紹介

問題となった事例は、買主が売主から築50年以上経過した中古住宅を購入したという事例です。売主からの重要事項説明では不具合や修繕の必要性についての説明は行われなかったものの、実際には雨漏りによる腐食があったという事例です。

裁判所は、以下のように述べて、本件中古住宅の瑕疵を認定しました(東京地判平成30年7月20日)。
●築年数は経過した物件であるものの、直前に設備、水回り、内装、外装などについて大規模なリノベーション工事が行われていた
●築50年以上の中古住宅にしては高額な金額であった
●売主は、買主に対して瑕疵担保責任を負担している(免責特約はない)

すなわち、本件中古住宅は、現状有姿による取引ではなく、住宅としての最低限の基準を満たすものとして売買されたのが相当であり、そこには雨漏りのない建物というのも当然含まれているという判断になります。

5、中古住宅に関するトラブルは弁護士に相談を

中古住宅の購入にあたっては、経年劣化などにより建物に不具合が生じる可能性が高くなっています。家族で生活することを前提に購入したにもかかわらず、雨漏りが起きてしまうと生活に大きな支障が生じてしまいます。そのようなトラブルが生じないようにするためにも、中古物件を購入する場合には、インスペクションを利用するなど慎重に進めていくことが重要です。

しかし、どれだけ注意していても避けられないトラブルもあります。そのようなトラブルに直面した場合にはすぐに弁護士に相談するようにしましょう。専門的知識がない状態で売主である不動産業者を相手にするのは非常にリスクが高いといえます。不動産業者と対等に交渉を進めていくためにも弁護士のサポートが不可欠です。

契約不適合責任を追及することになれば、1年という期間制限がありますので、何らかの不具合に気付いた場合には、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

6、まとめ

中古住宅で雨漏りが発生した場合には、売主に対して契約不適合責任を追及できないケースもあります。契約不適合責任を追及するにあたっては、契約内容の解釈が必要になりますので、まずは専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

不動産に関するトラブルは、不動産に詳しい弁護士に相談することが大切です。ダーウィン法律事務所では、不動産トラブルの解決に力を入れています。不動産についてお悩みがある方は、当事務所までお気軽にご相談ください。

この記事を監修した弁護士

荒川香遥
  • 弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士

    荒川 香遥

    ■東京弁護士会
    ■不動産法学会

    相続、不動産、宗教法務に深く精通しております。全国的にも珍しい公正証書遺言の無効判決を獲得するなど、相続案件について豊富な経験を有しております。また、自身も僧籍を有し、宗教法人法務にも精通しておりますので、相続の周辺業務であるお墓に関する問題も専門的に対応可能です。

    所属弁護士・事務所詳細はこちら