共有不動産のよくある5つのトラブルと解決方法をわかりやすく解説

共有不動産には、税制上のメリットや公平な分割ができるなどのメリットがありますので、単独名義ではなく共有名義の状態にしている方もいるでしょう。

しかし、不動産を共有しているとさまざまなトラブルが生じる可能性があります。共有不動産のメリットを上回るようなデメリットを感じるときには、共有状態を解消するなどの方法を検討する必要があります。では、実際に共有不動産には、どのようなトラブルが生じるのでしょうか。

今回は、共有不動産でよくある5つのトラブルとその解決方法をわかりやすく解説します。

1、共有不動産とはどのようなもの?


弁護士
荒川 香遥
そもそも共有不動産とはどのようなものなのでしょうか。以下では、共有不動産の定義と共有不動産が生じる4つのケースを説明します。

(1)共有不動産の定義

不動産の所有形態には、大きく分けて単独所有と共有の2つの方法があります。

共有不動産とは、ひとつの土地や建物を複数人が所有者となって共有している状態をいいます。単独所有であれば、所有者がその不動産の100%の権利を有していますが、共有の場合には、各共有者が共有持分割合を設定して、それぞれ不動産に対して権利を有しています。

不動産の共有持分については、登記をすることができますので、不動産登記事項証明書を確認すれば、誰がどのような割合で不動産を共有しているのかがわかります。

(2)共有不動産が生じる4つのケース

共有不動産が生じるケースとしては、主に以下の4つのケースが考えられます。

①遺言による指定

被相続人が遺言書を残して亡くなった場合、基本的には遺言書の内容に従って遺産が分けられます。被相続人が所有する不動産を、複数人に相続させる旨の遺言を残していた場合には、その不動産は、被相続人の死亡をきっかけとして共有状態になります。

遺言書で不動産の分割方法を定めるときには、単独所有の形にすることが多いですが、さまざまな理由で共有状態にすることもあります。

②遺産分割協議での共有分割

被相続人が遺言書を作成していなかった場合、相続人により遺産分割協議によって遺産の分け方を決めていきます。遺産分割協議で相続人全員が不動産を共有分割することに合意すれば、遺産分割をきっかけとして不動産が共有状態になります。

共有分割が選択されるケースとしては、誰が遺産である不動産を相続するかの話し合いがまとまらず、最終的な手段としてとられるケースが多いです。

③親子で二世帯住宅の購入

将来、親と同居することを見越して、二世帯住宅を購入する方も少なくありません。二世帯住宅を購入する際には、子世帯だけでは資金が足りず、親世帯からも援助を求めることがあります。

このようにお互いに資金を出し合って不動産を購入する場合には、それぞれの出資額に応じた持分割合を設定することになりますので、不動産が共有状態になります。

なお、お互いに資金を出し合って購入したにもかかわらず、不動産を単独名義にしてしまうと、贈与があったものと扱われてしまいますので注意が必要です。

④夫婦でマイホームの購入

共働き夫婦がマイホームを購入する場合、どちらか単独で住宅ローンの申込みをするよりも、夫婦で住宅ローンの申し込みをした方がより多くの融資を受けられる可能性が高くなります。連帯債務型のローンやペアローンを利用すると、不動産は、ローンの負担割合に応じた共有状態となります。

2、共有不動産でよくある5つのトラブル


弁護士
荒川 香遥
共有不動産では、以下のような5つのトラブルが生じる可能性があります。

(1)共有不動産を利用する際のトラブル

共有不動産には、共有持分割合が設定されていますが、それは各共有者が共有不動産の割合的な部分の利用しかできないというわけではありません。各共有者は、それぞれの共有持分に応じて、共有不動産の全部を使用することができます。

たとえば、A、B、Cの3人で土地を共有しており、各共有者の共有持分割合は、3分の1ずつだったとします。Aが土地を利用したいという場合には、土地の3分の1の面積にあたる部分を利用できるというわけではなく、共有不動産全体を利用することができるのです。

そのため、共有者の1人が勝手に共有不動産を利用していたとしても、他の共有者は、無断使用をする共有者を追い出すことができません。共有不動産では、このような共有不動産の利用をめぐってトラブルが生じることがあります。

(2)共有不動産を処分する際のトラブル

共有不動産を売却するためには、共有者全員の同意が必要になります。共有者のほとんどが共有不動産の売却に同意しているにもかかわらず、共有者のうちの1人でも反対する人がいると、共有不動産を売却することができません。

また、共有者が行方不明になってしまったり、認知症になってしまった場合には、不在者財産管理人や成年後見人などの特別な手続きを行わなければ、共有不動産を処分することができません。

単独名義であれば、自分の意向だけで不動産を処分することができますが、共有不動産だと他の共有者の意向に左右されてしまうため、共有不動産の処分をめぐってトラブルが生じることがあります。

(3)夫婦が離婚する際のトラブル

夫婦の共有名義でマイホームを購入したものの、その後、離婚してしまうというケースも珍しくありません。

婚姻中に夫婦が購入したマイホームは、夫婦の共有財産になりますので、財産分与の対象になります。ここで問題になるのが住宅ローンが残った状態でのマイホームの財産分与です。住宅ローンが残った状態だと、単純に誰がマイホームを取得するかという問題だけでなく、住宅ローンの負担をどうするのかという問題も絡んできて、より複雑な状況になります。

このように、夫婦名義の共有不動産があると、離婚の際にトラブルになる可能性が高くなります。

(4)共有不動産を相続する際のトラブル

被相続人が不動産の共有持分を有していた場合、それも相続財産に含まれますので、被相続人の共有持分は、相続人に相続されることになります。

共有不動産に関して世代交代が進むと、共有持分はどんどん細分化されていき、権利関係が非常に複雑な状況になってしまいます。ある世代で不動産を処分しようとしても、誰が不動産の共有者であるかわからず、処分が困難になってしまうこともあります。

共有不動産として残しておくと、将来の相続の場面で相続人に迷惑をかける可能性があるため、早めに対策を講じておくことが大切です。

(5)共有不動産の費用負担に関するトラブル

共有不動産から生じた固定資産税、修繕費用、庭木の伐採費用、取り壊し費用などは、各共有者の共有持分に応じて負担するのが原則です。

しかし、実際には、一部の共有者が代表者としてこれらの費用を負担し、各共有者に対して、支払いを請求するという扱いがとられるケースが多いです。他の共有者が任意に支払いに応じてくれれば、特にトラブルにはなりませんが、支払いを拒む共有者がいる場合には、特定の共有者だけに負担が偏ってしまいます。

このような場合には、共有不動産の費用負担に関してトラブルが生じる可能性があります。

3、共有不動産のトラブルを解決する方法


弁護士
荒川 香遥
共有不動産のトラブルは、共有状態を解消することで解決することができます。以下では、共有不動産のトラブルを解決するための共有状態の解消方法を説明します。

(1)共有者同士の話し合いによる共有状態の解消

不動産の共有状態は、共有者同士の話し合いにより解消することができます。共有者全員が共有状態を解消することに同意しているのであれば、以下のような方法をとることが可能です。
・共有不動産全体を売却して、売却金を共有持分に応じてわける
・誰か1人の共有者が共有不動産全体を取得して、他の共有者に対して代償金を支払う

共有不動産に対しては、他の共有者も何らかの不満を抱いている可能性もありますので、まずは、話し合いにより共有状態の解消を目指してみるとよいでしょう。

(2)共有持分の処分

共有者同士の話し合いで解決できない場合には、共有者単独で共有状態を解消することもできます。それが共有持分の処分です。共有不動産全体を処分するには、共有者全員の同意が必要になりますが、共有持分の処分であれば、他の共有者の同意は不要で、共有者が単独で行うことができます。

ただし、共有持分だけの売却だと一般の購入希望者が見つからない可能性が高いため、共有持分の買取を専門に行っている買取業者への売却が中心となるでしょう。

(3)共有持分の放棄

共有持分の放棄とは、自分の共有持分を手放して、他の共有者に帰属させることをいいます。

共有持分の処分と同様に、共有持分の放棄は、共有者が単独で行うことができますが、基本的には無償での放棄になりますので対価が得られないという点がデメリットといえます。

また、共有持分の放棄自体は、共有者が単独でできますが、共有持分放棄による所有権移転登記にあたっては、共有者との共同申請になりますので、他の共有者の協力が必要です。協力が得られないときは、裁判手続きが必要になります。

(4)共有物分割請求訴訟

共有物分割請求訴訟とは、裁判所を通じて共有状態の解消を図る手続きです。裁判所に共有物分割請求訴訟を提起すると、裁判所は、以下の方法のうち、いずれか適切な方法を選択してくれますので、それにより共有状態を解消することができます。

当事者同士の話し合いでは解決できないときは、共有物分割請求訴訟を検討してみるとよいでしょう。

4、共有不動産のトラブルでお困りの方は弁護士に相談を


弁護士
荒川 香遥
共有不動産に関するトラブルでお困りの方は、弁護士に相談することをおすすめします。

(1)最適な解決方法をアドバイスできる

共有不動産にはさまざまなトラブルが生じる可能性がありますが、トラブルの内容によって解決方法もさまざまです。誤った対応をしてしまうと、トラブルがより深刻化してしまい、簡単には解決できない状況になる可能性もあります。

そのため、共有不動産のトラブルに直面したときは、無理して自分で対応するよりもまずは専門家である弁護士に相談するべきです。共有不動産のトラブルに詳しい弁護士であれば、状況に応じた最適な解決方法をアドバイスしてくれるでしょう。

(2)共有者との交渉を任せることができる

共有不動産のトラブルを解決するには、まずは他の共有者との話し合いが欠かせません。

しかし、共有者同士の関係性によっては、話し合いができない可能性もありますし、話し合いをしたことでより問題がこじれてしまう可能性もあります。

そのようなケースでは、弁護士に対応を依頼するのがおすすめです。弁護士であれば、代理人として他の共有者との交渉を行うことができますので、ご自身の負担を大幅に軽減することができます。

(3)裁判手続きにも対応できる

共有者同士の話し合いで解決できない問題は、最終的に裁判所に訴えを提起する必要があります。裁判手続きになると一般の方だけでは対応するのが困難ですので、弁護士への依頼が必要です。

共有不動産のトラブルに詳しい弁護士であれば、裁判になったとしても、豊富な知識や経験に基づいて適切に解決に導いてくれます。

5、まとめ


弁護士
荒川 香遥
当事務所までお気軽にご相談ください。

共有不動産は、利用・処分・離婚・相続・費用負担などの場面でトラブルが生じる可能性を秘めています。現状特に問題が生じていなくても、共有不動産をそのまま放置していると、将来何らかのトラブルが生じる可能性がありますので、できる限り早めに対処することが大切です。

共有不動産のトラブルを解決するためには、共有不動産のトラブルに詳しい弁護士のサポートが必要になります。ダーウィン法律事務所では、共有不動産に関する豊富な知識と経験がありますので、共有不動産についてお悩みがある方は、当事務所までお気軽にご相談ください。

この記事を監修した弁護士

荒川香遥
  • 弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士

    荒川 香遥

    ■東京弁護士会
    ■不動産法学会

    相続、不動産、宗教法務に深く精通しております。全国的にも珍しい公正証書遺言の無効判決を獲得するなど、相続案件について豊富な経験を有しております。また、自身も僧籍を有し、宗教法人法務にも精通しておりますので、相続の周辺業務であるお墓に関する問題も専門的に対応可能です。

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