外壁とは、建物の外に面している壁であり、雨・風・地震などの自然現象や菓子などから建物を守る役割と外観のデザインを形成するという役割を担っている部分です。外壁に欠陥があった場合には、雨の侵入を許し、建物内部の腐食を招いたり、地震があったときに十分な耐震性を発揮できないなどのリスクがあります。
このような外壁の欠陥が見つかった場合には、すぐに売主や施工業者に対して、適切な対応を求めていくことが大切です。
今回は、外壁に欠陥があった場合の契約不適合責任について、わかりやすく解説します。
目次
外壁にはどのような種類があるのでしょうか。以下では、構造上の分類からみた外壁と工法による分類からみた外壁について説明します。
外壁は、構造的に耐力壁と非耐力壁の2種類に分類することができます。
耐力壁とは、建物自体の荷重や地震力・風圧力などの外力などに対して、十分な構造耐力を有する壁体をいいます。耐力壁に何らかの欠陥があった場合には、重大な瑕疵として問題になることが多いです。
非耐力壁とは、耐力壁以外の壁をいいます。主に建物内部で部屋と部屋とを仕切る間仕切壁が非耐力壁にあたりますが、高層建築で使用されるカーテンウォールや鉄骨造のALCパネルなどは、外壁での非耐力壁にあたります。
外壁の工法には、大きく分けて乾式工法(外壁材をボルト・ビスなどで止める方法)と湿式工法(主にセメント、漆喰などを水で練り使用する方法)とがあります。
外壁に生じる主な欠陥としては、以下の6つが挙げられます。
壁量とは、木造建築物の軸組の有効長さのことをいいます。木造建築物では、地震力、風圧力などの水平力は、壁を設けまたは筋交いを入れた軸組(これらを「耐力壁」という)に負担させていることから、各界の張り間方向およびけた行方向に、それぞれ耐力壁を釣り合いよく配置しなければなりません。
建物に必要な耐力壁の絶対量が不足している場合や耐力壁が釣り合いよく配置されていない場合には、台風などの強風が吹いたときに建物が異常に揺れる、小さな地震でも建物がゆっくりと長時間揺れる、建物にゆがみが生じるなどの不具合が生じます。
外壁の傾斜は、建物全体が傾斜している場合と部分的に壁面が傾斜している場合があります。建物全体が傾斜している場合は、地盤の不同沈下が原因と考えられます。また、軸組の設計・施工が不適切なために建物全体が傾斜しまたは外壁の一部が傾斜することもあります。
このような外壁の傾斜が生じると、ドアやサッシの開閉に支障が生じたり、外壁に亀裂が発生することもあります。また、建物全体が傾斜している場合は、内壁も傾斜している可能性が高く、家具と壁に隙間ができたり、建具の開閉に支障が生じることもあります。
木造の場合は、外壁材のひび割れ、透湿防水シートまたはアスファルトフェルトなどの二次防水材の施工方法の間違いや施工不良によって雨漏りが生じます。
鉄骨造の場合は、ALCパネルなどの仕上げ材接合部分の目地コーキング不良などによって雨漏りが生じます。
鉄筋コンクリート造の場合は、ジャンカ、コールドジョイントなどの躯体の施工不良によるひび割れ、壁に発生した貫通ひび割れなどにより雨漏りが生じます。
このような雨漏りが生じると、雨水の侵入により構造体を腐朽させる場合もありますので注意が必要です。
外壁のひび割れの原因は、仕上げ材料によって異なってきますが、大きく分けて、①材料または施工に起因する場合と②構造的な問題による場合が考えられます。
ひび割れが軽微で美観上だけの問題であれば、仕上げ材の補修だけで済むこともありますが、下地部分に不具合がある場合は下地材から補修をしなければなりません。また、不同沈下など地盤や建物の構造に問題がある場合は、外壁部分だけの補修では済まず、建物全体にわたる大掛かりな補修が必要になることもあります。
タイル剥離の原因としては、①伸縮目地の未設置および不適切な施工、②外気環境(温湿度)変化による外装材の伸縮挙動による経年劣化からくる目地などのひび割れ、③施工時の張り付けモルタルの不具合などが挙げられます。
このようなタイル剥離が生じると、周辺を通行する人や車、隣接する建物などに危害を及ぼすおそれがあります。
仕上げ材の不具合としては、外壁材の目地、ジョイント部、サッシ回りなどに用いられるシーリング材の劣化が挙げられます。シーリングは、劣化すると外壁面に粉を吹いたような状態になったり、ひび割れが生じたりします。さらに劣化が進行すると材料自体が破断して、シーリング材の機能を失い、その結果、漏水などが生じて 外壁の劣化が早まることになります。
外壁に上記のような欠陥が見つかったときは、売主または施工業者に対して、契約不適合責任の追及を行います。
契約不適合責任とは、引渡しを受けた目的物が、種類、品質、数量に関して契約内容に適合しない状態であるときに、売買契約の売主に発生する責任をいいます。以前は、「瑕疵担保責任」と呼ばれていましたが、民法改正により「契約不適合責任」という名称に改められました。
改正前の民法では、「隠れた瑕疵」があることが責任追及の要件とされていましたが、契約不適合責任では、目的物が当事者間の契約に適合しているかどうかが要件になります。具体的には、契約内容や契約締結に至る経緯などを踏まえて、当事者が合意した品質や性能を確定したうえで、当該目的物がその品質や性能を有しているかどうかを検討することになります。
外壁に欠陥があり、契約不適合にあたるといえる場合には、以下の方法により、売主の責任を追及することができます。
追完請求とは、目的物の修補、代替物の引き渡し、不足分の引き渡しを求めることをいいます。追完請求は、民法改正による新たに認められた責任追及の方法になります。
代金減額請求とは、不具合の程度に応じた売買代金の減額を求めることをいいます。
目的物に契約不適合があった場合には、相当期間を定めて追完を催告し、当該期間内に追完されないときに代金減額請求ができます。ただし、催告に意味がない場合(追完拒絶、追完履行不能など)には、無催告で代金減額請求を行うことができます。
目的物の契約不適合により、買主に損害が発生した場合には、売主に対して、損害賠償請求ができます。ただし、損害賠償請求をするにあたっては、売主の帰責事由が必要になります。
契約不適合が軽微でない場合には、契約を解除することも可能です。
外壁の欠陥が単なる美観上の問題だった場合には、契約の解除までは認められませんが、地盤の不同沈下が原因など建物の建て替えが必要になる程度の欠陥だったときは契約の解除が認められる可能性があります。
以下では、外壁の欠陥に関する裁判例を紹介します。
この事案は、増改築工事に伴い、当初存在していた耐力壁を撤去したことにより、全体として以前よりも耐力壁が減少することになってしまった事案です。
裁判所は、建築基準法施行令46条4項において、構造強度を確保するために一定量の耐力壁を設置することが求められていることから、建物のリフォームを目的として本件請負契約を締結した当事者の合理的意思解釈として、従前よりも耐力壁が明らかに減少することまでは許容していないものと認定し、本件建物には、必要な耐力壁を設置しなかった点で瑕疵があると認めました。
この事案では、すべての方面の外壁にタイルの浮き、剥離、膨張、亀裂、下がりなどの不具合が生じていました。
裁判所は、これらが生じた原因は、構造用合板とラス網下地の取り付け不良および間柱の断面が小さいことにあるものと認め、被告による工事の不備が本件建物の外壁に不正常な部分が生じた原因であると認定しました。
外壁に生じた欠陥が、単なる美観上の問題ではなく、構造上の問題である場合には、そのまま放置していると構造体の腐食、地震による倒壊などのリスクが高くなります。そのため、外壁の欠陥を見つけたときは、すぐに売主や施工業者に対して、契約不適合責任の追及を行うべきでしょう。
業者を相手に契約不適合責任を追及するにあたっては、専門家である弁護士のサポートが必要になります。ダーウィン法律事務所では、不動産トラブルの取り扱いに力を入れていますので、不動産についてお悩みがある方は、当事務所までお気軽にご相談ください。
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