共有物分割請求訴訟とは?不動産の共有状態を解消する訴訟の流れを解説

複数人で不動産を共有していると、共有者同士の意見の衝突などにより、共有不動産の利用や処分が制限されることがあります。このような共有不動産をめぐるトラブルが生じた場合には、共有物分割請求によって解決できる可能性があります。

共有物分割請求には、共有者同士の話し合いや調停により解決を図る方法もありますが、共有物分割についての協議が整わない場合には、最終的に共有物分割請求訴訟を提起する必要があります。

今回は、共有物分割請求訴訟の概要や手続きの流れなどを解説します。

1、共有物分割請求訴訟とは?

共有物分割請求訴訟とは、どのような争いなのでしょうか。以下では、共有物分割請求訴訟の概要と共有物分割請求をすべきケースについて説明します。

(1)共有物分割請求訴訟の概要

共有物分割請求訴訟とは、共有物分割請求を行う方法の1つであり、裁判所を通じて共有状態の解消を図る手続きです。

共有物分割請求には、共有物分割請求訴訟のほかにも、共有者同士の話し合いにより共有状態の解消を図る方法と共有物分割請求調停により共有状態の解消を図る方法があります。しかし、話し合いによる方法と調停による方法では、共有物分割に関する共有者全員の同意が得られなければ解決することができません。これに対して、共有物分割請求訴訟では、共有者の意向にかかわらず、裁判所が適切な分割方法を判断してくれますので、必ず結論を出すことができるという特徴があります。

(2)共有物分割請求をすべきケース

共有物分割請求をすべきケースとしては、以下のケースが挙げられます。

①遺産分割で不動産を共有名義にしたケース

相続人による遺産分割協議を行ったものの、誰が不動産を相続するのか決まらない場合には、法定相続分での共有を選択することがあります。

遺産分割の時点では、共有でも特に問題は生じなかったとしても、その後の事情の変化などにより「不動産を現金化したい」、「土地を別の目的で有効活用したい」などの要望が出てくることもあります。このような不動産の利用または処分をするにあたっては、共有者全員の同意が必要になりますが、一部の共有者が反対している場合には、不動産の利用または処分はできません。

このように遺産分割後の事情の変化により、共有物分割請求をしなければならないケースがあります。

②離婚時に不動産が共有のままになっているケース

共働き夫婦がマイホームを購入する際には、お互いに購入資金を出し合い、ペアローンを利用するなどして、夫婦の共有名義で購入することがあります。円満に婚姻生活を続けている間は、共有名義であっても特に問題は生じませんが、夫婦が離婚することになった場合には、共有状態では不都合が生じることがあります。

離婚時の夫婦の話し合いでは、共有状態が解消できない場合には、共有物分割請求をしなければならないケースがあります。

2、共有物分割請求訴訟の流れ

共有物分割請求訴訟は、以下のような流れで進みます。

(1)裁判所に訴状の提出

共有物分割請求訴訟は、裁判所に訴状を提出することでスタートします。訴状の提出先の裁判所は、被告の住所地を管轄する地方裁判所です。また、共有物分割請求訴訟は、固有必要的共同訴訟にあたりますので、原告となる共有者以外の全員を被告として訴えを提起しなければなりません。

(2)被告に呼出状の送付

訴訟提起をしてから約2~3週間後に、裁判所から被告に対して、口頭弁論期日の呼出状と訴状の副本などが送付されます。

被告は、訴状記載の内容に反論がある場合には、答弁書という書面を作成し、指定された期限までに裁判所に提出しなければなりません。

(3)第1回口頭弁論期日

原告と被告は、裁判所が指定した日時に裁判所に出頭し、第1回口頭弁論期日を行います。口頭弁論期日では、原告からは訴状の陳述、被告からは答弁書の陳述を行います。最初の期日で争いが解決することはほとんどありませんので、次回以降の続行期日が指定されて、最初の期日は終了します。

(4)第2回目以降の期日

2回目以降の期日では、原告および被告の双方から主張立証が行われ、裁判所が共有物分割請求を認めるかどうか、共有物分割請求を認めるとしてどのような分割方法を選択するかを審理します。

なお、一般的な民事裁判であれば、裁判所は、当事者の主張に拘束されますが、共有物分割請求訴訟では、裁判所は、当事者が主張していない分割方法を選択することも可能とされています。

(5)和解

当事者の主張立証が尽くされた段階で、裁判所が和解の勧告をすることがあります。和解は、当事者がお互いに譲歩することで紛争の解決を図る手段であり、原告と被告の双方が和解に応じれば、その時点で訴訟は終了となります。

判決になれば、後述する分割方法のいずれかが選択されることになりますが、裁判所の判断は、必ずしも当事者が希望するものとは限りません。和解では、お互いの合意があれば柔軟な解決方法も可能となりますので、和解による解決も検討するとよいでしょう。

(6)判決

和解が成立しない場合には、その後も審理が続行され、最終的に裁判所が判決を言い渡します。裁判所の判決に不服がある場合には、高等裁判所に控訴することもできますが、その場合には、判決を受け取った日の翌日から2週間以内に行わなければなりません。

3、共有物分割請求訴訟での分割方法

共有物分割請求訴訟では、以下のいずれかの分割方法が決定されます。

(1)現物分割

現物分割とは、共有不動産を共有者の持分割合に応じて物理的に分ける方法です。

たとえば、1筆の土地を2人で共有している場合には、土地を2筆に分筆し、それぞれの土地を単独所有にすることによって共有状態を解消することができます。

ただし、現物分割は、物理的に分割することが困難な建物には適用することができませんので、主に土地の共有物分割請求の事案で適用される方法です。

なお、現物分割がそもそもできない土地である場合や現物分割により著しく価格が減少する場合には現物分割を選択することはできません。具体的には、以下のようなケースです。
●土地の狭小、細分化が生じるケース
●建築基準法上の接道義務を満たさなくなるケース
●共有土地上に第三者の建物があるケース

(2)賠償分割

賠償分割とは、共有者の1人が他の共有者の持分を買い取ることにより共有状態の解消を図る方法です。賠償分割には、「全面的価格賠償」と「一部価格賠償」の2種類があります。

全面的価格賠償とは、共有者の1人がすべての共有持分を取得し、共有持分を取得した人が他の共有者に賠償金を支払うという方法です。一部価格賠償とは、現物分割を選択した際に各共有者の取得金額に差が生じる場合に、差額分を賠償金で調整する方法です。この2つの方法のなかでは、実務上は、全面的価格賠償が選択されるケースが圧倒的に多いです。

共有者の中に共有不動産の取得を希望する人がいる場合には、賠償分割が選択されます。

(3)競売分割

競売分割とは、共有物を競売によって第三者に売却し、売却代金を共有持分に応じて分ける方法です。

競売分割では、共有不動産を金銭に換えてから分けることができますので、非常に公平で単純な方法といえます。しかし、競売では、入札者が得られる物件情報が非常に限定されていることから、市場価格の7割程度の金額でしか売却できないなどのデメリットがあります。

そのため、判決により競売分割が言い渡される見込みがある事案では、裁判の途中で和解をし、不動産会社を仲介した通常の売却方法を選択することもあります。

4、不動産の共有解消をお考えの方は弁護士に相談を

不動産の共有状態を解消する場合には、共有物分割請求を行いますが、そのためには当事者の話し合い、調停、訴訟といった手続きが必要になります。

しかし、共有者同士でトラブルが生じた状態では、話し合いをしようとしても、お互いに感情的になってしまい、話し合いを進めることができず、精神的にも大きなストレスとなります。また、調停や訴訟といった法的対応が必要になるケースでは、専門的知識が要求されますので、一般の方だけでは適切に手続きを進めることが困難といえるでしょう。

このような不動産の共有問題でお困りの方は、まずは、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士であれば、当事者に代わって他の共有者と交渉を行うことができますので、交渉に要する精神的ストレスも大幅に軽減されます。また、調停や訴訟になったとしても、弁護士が対応することができますので、希望する分割方法を実現できる可能性が高くなるでしょう。

5、まとめ

共有物分割請求訴訟では、最終的に裁判所が現物分割、賠償分割、競売分割の3つの方法から適切な分割方法を判断してくれます。そのため、共有者同士の話し合いで解決できない場合には、共有物分割請求訴訟も視野に入れていく必要があります。

だたし、共有物分割請求訴訟は、一般的な民事訴訟とは異なる特殊な訴訟になります。共有不動産に関する知識や経験がなければ適切に手続きを進めていくことができませんので、共有不動産の問題でお困りの方は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

ダーウィン法律事務所では、共有不動産の取り扱いに力を入れています。共有不動産についてお悩みがある方は、当事務所までお気軽にご相談ください。

この記事を監修した弁護士

荒川香遥
  • 弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士

    荒川 香遥

    ■東京弁護士会
    ■不動産法学会

    相続、不動産、宗教法務に深く精通しております。全国的にも珍しい公正証書遺言の無効判決を獲得するなど、相続案件について豊富な経験を有しております。また、自身も僧籍を有し、宗教法人法務にも精通しておりますので、相続の周辺業務であるお墓に関する問題も専門的に対応可能です。

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