共有者に対して賃料請求できるケースとは?賃料請求の方法と注意点を弁護士が解説

共有者のうちの1人が共有不動産を独占していると他の共有者は、共有者としての管理責任や税金の負担だけが生じ、納得できないという人も少なくないでしょう。

このような場合には、共有不動産を独占使用する共有者に対して、賃料請求が可能です。共有者に対して賃料請求する場合には、きちんと手順を踏んで行わなければ、共有者との間でトラブルになるおそれもありますので注意が必要です。

今回は、共有者に対して賃料請求ができるケースとその方法・注意点などについてわかりやすく解説します。

1、共有者に対して賃料請求ができるケース

共有不動産の共有者に対して、賃料請求ができるケースとしては、主に、以下の2つのケースが挙げられます。

(1)共有者が共有不動産を独占して使用している

共有不動産の共有者には、それぞれ共有持分があります。共有者は、共有持分に応じて共有物全部を使用する権利が認められていますので、独占使用している共有者を追い出すことは原則としてできません。

しかし、共有不動産を独占利用している共有者が自己の共有持分割合を超えて、共有不動産を利用している場合には、独占利用している共有者に対して、賃料請求を行うことができます。

当該共有者との間で賃貸借契約が締結されていなかったとしても、周辺の家賃相場などを参考にして賃料請求をすることが可能です。共有者には、共有不動産の管理責任や税金の負担が生じていますので、1人だけの独占使用に納得ができない場合には、当該共有者への家賃請求を検討するとよいでしょう。

(2)共有不動産の家賃収入を独占している

共有不動産を第三者に貸し出している場合には、賃借人から家賃が支払われているはずです。共有不動産から発生する家賃については、各共有者の持分割合に応じて分配することになりますが、賃借人が各共有者に支払いをするのは非常に煩雑な手続きとなります。

そこで、一般的には、共有者のうちの1人が代表者として賃借人からの家賃全額を受領し、それを他の共有者に分配するという方法がとられます。代表者が独占的に家賃を受領してもよい旨の合意がないにもかかわらず、代表者が家賃収入を独占しているという場合には、家賃収入を独り占めする共有者に対して、賃料の分配を求めることができます。

2、共有者への賃料請求の方法と流れ

共有者に対して賃料請求をする場合には、一般的に、以下のような流れで進めていきます。

(1)共有者との話し合い

共有不動産を独占使用している共有者がいる場合には、その共有者に対して、賃料請求を行います。お互いに話し合いができる関係性であれば、まずは電話やメールなどで連絡をして、共有持分を超える使用分に対する家賃請求を行ってみるとよいでしょう。

その際には、なぜその金額になるのかを明らかにできるように、周辺の家賃相場などを調べておくと話し合いがスムーズに進みます。共有者との話し合いで賃料の支払いの合意ができた場合には、口頭での合意で終わらせるのではなく、必ず、合意書などの書面を作成し、合意内容を残しておくことが大切です。

(2)内容証明郵便での通知

共有者と疎遠で話し合いができる関係性ではない、電話やメールなどで連絡をしたものの拒絶されてしまったという場合には、内容証明郵便を利用する方法もあります。

内容証明郵便とは、いつ、誰が、誰に対して、どのような内容の文書を送ったのかを証明することができる形式の郵便です。内容証明郵便自体には、法的に支払いを強制する効力まではありませんが、後日の証拠として利用できるだけでなく、心理的プレッシャーを与えて事実上支払いを強制する効果が期待できます。

内容証明郵便で通知を行う場合には、弁護士に依頼をして、代理人弁護士により送付してもらうとより効果的です。

(3)民事調停の申立て

当事者同士の話し合いでは解決できない場合には、簡易裁判所の民事調停を利用することができます。

民事調停とは、調停委員が当事者の間に入り、話し合いを進めることで紛争の解決を目指す手続きです。賃料に関する紛争では調停委員には、建築士や不動産鑑定士などの専門的知識を有する人が選任されるケースが多いといえます。そのため、賃料相場で争いがある事案であっても、調停委員による専門的知見を活用することで、公平妥当な解決を図ることが期待できます。

なお、民事調停は、裁判とは異なり、当事者の合意により解決する手段になりますので、当事者の合意が得られなければ調停は不成立となり、その時点で手続きは終了となります。

(4)訴訟提起

そもそも当事者による話し合いが期待できない事案では、民事調停の申立てをすることなく、いきなり訴訟提起をすることも可能です。

共有不動産を独占的に使用する共有者への賃料請求は、不当利得返還請求という法律構成によって行いますが、その際には、賃料を請求する共有者の側で不当利得の要件に該当することを主張立証していかなければなりません。裁判は、非常に複雑な手続きになりますので、適切に裁判を進めていくためにも、弁護士に依頼するのがおすすめです。

3、共有状態の解消により賃料トラブルの解決が可能

共有不動産の賃料トラブルに巻き込まれたくないという場合には、共有状態の解消を検討してみるとよいでしょう。

(1)共有不動産の売却

共有状態の解消をする方法の1つが共有不動産を売却するという方法です。

共有不動産を売却することができれば、売却代金を共有持分割合に応じて分配すればよいため、公平に共有状態を解消することができます。

ただし、共有不動産を売却するためには、共有者全員の合意が必要になりますので、共有者単独で進めることができません。共有者のうち1人が共有不動産を独占的に使用している状況だと、当該共有者は共有不動産の売却に同意してくれない可能性もありますので注意が必要です。

(2)共有持分の売却

共有不動産の売却ができない場合には、共有者が有する共有持分を売却することでも共有状態を解消することができます。共有不動産の売却とは異なり、共有持分の売却であれば、各共有者が単独で行うことが可能です。

もっとも、不動産の購入を検討している人のほとんどが自分で利用するのが目的ですので、共有持分のみの売却では買い手を見つけるのが難しいケースが多いです。共有持分の買い取りを専門にしている買取業者も存在しますが、相場よりも低い金額での買い取りになる可能性がある点に注意が必要です。

(3)共有物分割請求訴訟の提起

上記の方法では共有状態の解消を図ることができない場合には、裁判所に共有物分割請求訴訟を提起するという方法もあります。裁判所を利用するこの方法であれば、当事者間の合意がなくても裁判所が適当と考える共有物の分割方法を判断してくれますので、必ず結論を出すことができるというメリットがあります。

ただし、どのような分割方法になるかは、裁判所の判断に委ねられていますので、当事者が希望する分割方法になるとは限らない点に注意が必要です。

4、共有不動産に関するトラブルは弁護士に相談を!

単独所有の不動産とは異なり、共有不動産では、使用、管理、処分に関して共有者間の意見の食い違いが生じ、トラブルになるケースが多いです。

共有不動産を独り占めしている共有者がいたとしても、原則として共有不動産の明け渡し請求はできず、共有持分を超えた使用に対する賃料の請求ができるに過ぎません。素直に賃料の支払いに応じてくれればよいですが、そうでない場合には、訴訟提起が必要になるなど非常に煩雑な手続きとなります。

少しでも共有不動産に関するトラブルによる負担を軽減したいという場合には、トラブルの対応を弁護士に任せるのがおすすめです。弁護士であれば、共有者本人に代わって、共有者との交渉や調停、裁判などの対応を行うことができますので、ご本人の負担は大幅に軽減されるはずです。

また、弁護士であれば共有状態の解消に向けた具体的な提案も行うことができますので、共有物分割請求などにより、共有不動産に関する問題を根本的に解決することも可能です。

共有不動産に関するトラブルでお悩みの方は、まずは、弁護士に相談するようにしましょう。

5、まとめ

共有者が共有不動産を独占使用している場合には、当該共有者に対して、賃料請求をすることができます。しかし、独占使用している共有者が賃料の支払いに応じてくれない場合には、民事調停や裁判手続きが必要になります。その際には、専門家である弁護士のサポートが不可欠となりますので、不動産問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

ダーウィン法律事務所では、共有不動産の取り扱いに力を入れています。共有不動産についてお悩みがある方は、当事務所までお気軽にご相談ください。

この記事を監修した弁護士

荒川香遥
  • 弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士

    荒川 香遥

    ■東京弁護士会
    ■不動産法学会

    相続、不動産、宗教法務に深く精通しております。全国的にも珍しい公正証書遺言の無効判決を獲得するなど、相続案件について豊富な経験を有しております。また、自身も僧籍を有し、宗教法人法務にも精通しておりますので、相続の周辺業務であるお墓に関する問題も専門的に対応可能です。

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