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現在所有している、これから売却予定の不動産物件等に、休眠抵当権がついているかどうか確認を行うことはとても大事なことです。
売却したい不動産物件に休眠抵当権がついていると、売却を行うことが難しいか、買いたたかれてしまうことがあるためです。
不動産物件に休眠抵当権がついているとどうなるのか?については詳しくは「【抵当権を消す】休眠抵当権(休眠担保権)とは?」に記述したので、合わせてお読みください。
では、所有する不動産物件に休眠抵当権がついているというのは、どのような状態のことを指すのでしょうか。
このことについて理解するために、休眠抵当権の定義について理解しましょう。
休眠抵当権、または、休眠担保権とは、一般的に現在も抹消されておらず、明治・大正・昭和時代(初期)に設定された古い抵当権(担保権)のことです。
しかしこの定義だけでは、所有する不動産に設定された休眠抵当権がどのようなパターンの休眠抵当権で、どのような対処方法で抵当権の抹消を行うことができるのかを判断することはできません。
たしかに休眠抵当権とは古い抵当権のことですが、この古い抵当権にもいくつかの要素があり、実際の抵当権の状況によって、抵当権を抹消するための対処方法が異なります。
休眠抵当権(休眠担保権)のパターン分けに必要な要素にはおおまかに
■抵当権者が行方不明かどうか
■抵当権者が法人か個人か
■抵当権者が抵当権抹消のために、現在も協力してくれるかどうか
■弁済の証書等の債権が消滅したことを証明する書類があるかどうか
■抵当権の債権額が高いのか安いのか
■弁済期からの経過した期間が20年以上経過しているかどうか
これらのことについて確認する必要があります。
これらの要素によって、実際に設定された休眠抵当権の抹消方法や抹消にかかる期間や費用が異なってきます。
休眠抵当権のパターンごとの対処方法については、3.の章で記述しますが、まずは次の章で、休眠抵当権関連で使用される専門用語の意味についてご説明します。
休眠抵当権関連の話には、一般の方には聞き慣れない専門用語も多く使われています。
ここでは休眠抵当権の確認のために必要な専門用語について簡単に解説いたします。
①自然人
②行方不明
③弁済期
④解散と清算結了
①自然人
自然人とは法上の概念で、権利義務の主体となる個人のことを指します。
そのため、自然人という言葉が出てきたら、それは法人ではなく個人のことなんだと考えていただいて大丈夫です。
②行方不明
抵当権者(担保権者)が法人か自然人かによって、行方不明の判断基準が変わります。
自然人の行方不明とは、現在登記簿に記載の住所に抵当権者が存在しておらず、どこに居住しているかがわからない状況のことを意味します。また、抵当権者が死亡している場合には、その相続人が行方不明かどうかで、抵当権者が行方不明かどうかを判断します。
法人の行方不明とは、登記簿に記載がなく、さらに閉鎖登記簿も廃棄済みで、その存在を登記簿から確認できない場合のことを指します。後述しますが、閉鎖登記簿などで法人そのものの存在が確認できる場合は、解散もしくは決算結了をした法人でも、行方不明ということにはなりません。
③弁済期
弁済期とは、「弁済期日」とも言いますが、債務者が債務の弁済を行なわなければならない期限のことを指します。
④解散と清算結了
解散も清算結了も法人に関する言葉です。
解散とは、法人格を消滅させるために必要な法的手続きのことを指します。
清算結了とは、清算会社の清算に関する手続きが全て完了し、完全に会社がなくなる状態になったことを指します。清算会社の債権や債務、また残っている財産が全てゼロになった状態のことです。
以上4つの専門用語を簡単にご説明しました。
このあたりをおさえておいていただければ、休眠抵当権のパターン分けも理解しやすくなります。
休眠抵当権にどのようなパターンがあり、どのような休眠抵当権の抹消方法があるかについて、パターンごとに順番に解説します。
ご自身の所有する不動産物件の状況と照らし合わせながら、実際にどの休眠抵当権のパターンが該当するのか、下記のパターンから選択し、是非ご一読ください。ほとんどのケースが下記の項目のどれかに当てはまるはずです。
抵当権者が自然人で、行方不明ではなく、協力してくれる場合は、共同申請登記という方法で、共同で抵当権抹消登記を行うことができます。この場合、基本的には休眠抵当権ではなく、通常の抵当権抹消登記申請の方法と変わりません。
抵当権者が自然人で、行方不明ではなく、協力してくれない場合は、訴訟を起こし判決により休眠抵当権抹消を行う必要があります。訴訟を起こし判決により休眠抵当権抹消を行うためには、それなりの時間と費用、手続きが必要になります。
閉鎖登記簿などで法人そのものの存在が確認できる場合は、解散もしくは決算結了をした法人でも、行方不明ということにはなりません。この場合は供託による休眠抵当権抹消を行うことができません。
法人が解散・清算結了している場合、その法人の代表は清算人と呼ばれます。通常、抵当権者が法人で行方不明ではなく、解散もしくは清算結了をしている場合は、この清算人を探し、生存していれば協力をお願いし、共同申請登記という方法で、共同で抵当権抹消登記を行うことができます。また、生存していなければ清算人を選任して協力してもらうことで、手続きを行うことができます。
また、抵当権者である法人の清算人が休眠抵当権抹消登記申請の協力をしてくれない場合は、抵当権者が自然人の時と同様、訴訟を起こし判決により休眠抵当権抹消を行う必要があります。訴訟を起こし判決により休眠抵当権抹消を行うためには、それなりの時間と費用、手続きが必要になります。
抵当権者である法人が解散もしくは清算結了をしていない場合は、その抵当権者である法人の代表者を探し協力してもらい、共同申請登記という方法で、共同で抵当権抹消登記を行うことができます。
また、抵当権者である法人が休眠抵当権抹消登記申請の協力をしてくれない場合は、訴訟を起こす必要があります。
抵当権者が自然人もしくは法人で、行方不明である場合でも、債権消滅の証拠書類がある場合は、弁済証書による抹消方法、または除権決定による抹消方法で抵当権抹消登記の申請を行うことができます。
弁済証書による抹消を行う場合、休眠抵当権等が全て消滅しているということを証明する書類がある場合に、これらの証拠書類を添付することができれば、登記権利者、つまり不動産物件所有者が単独で休眠抵当権の抹消登記の申請を行うことができます。
また、抵当権者に名乗り出てもらうよう、裁判所を通じて公示催告の申立を行うことを、除権決定といいます。
除権決定による抹消方法の場合、抵当権が消滅している必要があります。
公示催告の申立を行い、その結果抵当権者が名乗り出てこなければ、除権判決(抵当権消滅)を得ることができ、登記権利者が単独で休眠抵当権の抹消登記の申請を行うことができます。
ただ、抵当権者が行方不明で債権消滅の証拠書類があることはほとんどないため、これらの方法で休眠抵当権抹消登記申請を行うことはほとんどないというのが現状です。
抵当権者が自然人もしくは法人で、行方不明であり、債権消滅の証拠書類がなく、弁済期から長い期間が空いているという意味では休眠抵当権ですが、この場合、公示送達(こうじそうたつ)により抵当権者に対し訴訟を起こすことで休眠抵当権の抹消を行うことが可能です。
弁済期とは、「弁済期日」とも言いますが、債務者が債務の弁済を行なわなければならない期限のことを指します。
また、ここでいう公示送達とは、何らかの理由で抵当権者が誰なのか、また住所・居所がわからなかったりする場合に、法的に送達したものとする手続きのことです。
抵当権者が自然人もしくは法人で、行方不明であり、弁済期から20年以上が経っている場合は、供託という方法で、休眠抵当権抹消を行うことができます。債権・利息・遅延損害金の全額を法務局に供託するという方法です。休眠抵当権抹消の方法の中では一番主流の方法です。
この供託による休眠抵当権抹消は、明治・大正・昭和の初期の時代に設定された債権額が、100円であったり、1000円であったりと、現代からすると極めて少額の場合には供託金も少なくて済むので有効な方法です。
しかし、昭和の後期の時代の休眠抵当権の場合、明治・大正・昭和初期と比べると、インフレが起きた影響で債権額は高額である可能性もあり、その場合は支払う供託金は数百万円である可能性もあったりと、あまり現実的な方法にはなりません。
その場合は、公示送達による休眠抵当権抹消方法や、判決による休眠抵当権抹消方法が有効です。
また、抵当権者が法人だった場合、行方不明の判断基準が自然人と異なりますので、注意が必要です。
いかがでしたでしょうか。
ご自身の所有する不動産物件の状況と同じパターンはありましたか。
休眠抵当権は抵当権者が法人か個人かや行方不明かどうか、また書類が揃っているかどうかや債権額によっても、休眠抵当権抹消登記申請の対応方法が全く異なることがご理解いただけたかと思います。
他にも、休眠抵当権に関してより詳しい記事をアップしていますので、是非ご一読ください。
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