不動産を共有している場合に自分1人が使用する方法について、共有物分割に強い不動産弁護士が解説

不動産を共有していても、自分1人で使用したい場合が少なくありません。そんなときには、他の共有持分権者とよく話し合っておかないと、トラブルになってしまう可能性があります。
また1人で利用するなら他の共有持分権者へ利用料を払わねばなりません。きちんと支払わない場合、ケースによっては他の共有持分権者から明渡し請求をされる可能性もあるので、注意が必要です。

この記事では不動産を共有している場合に自分1人が使用する方法を、弁護士が解説します。共有不動産に居住している方などは、ぜひ参考にしてみてください。

1.共有不動産は1人で使用できる

1-1.共有不動産で1人の共有持分権者ができることは限られる

不動産を共有している場合、1人1人の共有持分権者ができることは限られています。
売却や抵当権設定などの処分行為をするには全員の合意が必要ですし、不動産の管理を行うにも過半数の同意が必要です。
共有物件の場合に1人の共有持分権者ができるのは、保存行為です。保存行為とは、不動産の状態を保存するための行為をいいます。たとえば建物が老朽化して倒壊しそうな場合、1人1人の共有持分権者が自己判断で不動産の修復をすることは可能です。

1-2.不動産の使用は1人でも可能

一方で、共有不動産の使用は各共有持分権者が1人でもできると考えられています。
たとえば居住用の物件を共有している場合、共有持分権者の1人が自宅として住んで占有していても違法ではありません。
他の共有持分権者も、家を単独使用していることを理由に占有している共有持分権者へ退去請求することは基本的にできません。

2.共有不動産を使用する場合、使用料を払わねばならない

共有持分権者の1人だけが共有物件を利用していると、他の共有持分権者との関係で不公平になります。そこで物件の使用者は他の共有持分権者に対し、使用料を払わねばなりません。
物件の使用者が使用料を払わない場合、他の共有持分権者は使用者に対し、不法行為にもとづいて損害賠償請求ができます。
訴訟などで損害賠償請求をすれば、賃料相当額の支払い命令が出ると予想されます。

2-1.使用料の計算方法

使用料を決定する場合には、近隣の家賃相場を参考にします。そのうえで、各共有者の共有持分割合に応じた額を使用料として支払う必要があります。

2-2.使用料計算の具体例

AさんとBさんとCさんの3人が不動産を共有しており、Aさんが1人で居住しているとしましょう。近隣の家賃相場は18万円、共有持分割合は、Aさんが3分の1、Bさんが9分の2、Cさんが9分の4となっています。

この場合、AさんはBさんに対し、使用料として4万円(18万×9分の2)、Cさんに対しては使用料として8万円(18万×9分の4)を払わねばなりません。

3.誰がどのように使用するかは共有者の話し合いによって決定する

共有不動産の場合、管理方法は共有持分権者全員が話し合って決めなければなりません。
法律上、共有物の管理行為については「過半数の合意」で行うルールになっているからです。
「誰がどのように不動産を利用すべきか」という問題は不動産の管理に該当します。
1人が使用するとしても、共有持分権者全員の話し合いにより、誰がどのように使用すべきか決めて、意思を形成しておくべきです。

共有持分権者との話し合いを拒絶して、無理に単独での専有を続けた共有持分権者がいた事案においては、他の共有持分権者からの明渡し請求が認められた裁判例もあります(東京地方裁判所昭和35年9月18日)。

トラブルを避けるためにも、共有不動産の活用方法については、共有持分権者が全員参加する話し合いによって決定しましょう。なお使用方法については全員合意でなく「過半数の合意」で決定できます。
合意ができたら意思決定の証拠として、各共有持分権者が署名押印した書面を残しておくと良いでしょう。

4.使用料が不要になるケース

共有不動産を1人が単独使用する場合、使用者は他の共有持分権者へ使用料を払わねばならないのが原則です。ただし状況によっては、使用料の支払いが不要になる場合があります。
以下でどういったケースなのか、みてみましょう。

4-1.相続によって1人で物件を利用する場合

1つは相続によって被相続人の同居者が物件を使用し続ける場合です。
たとえば親と同居していた長男が親の死亡後も家に住み続ける場合が典型です。
この場合、他に兄弟がいたら、長男は他の兄弟と不動産を共有することになるので、共有不動産を1人で使用している状態になります。本来であれば不動産の使用料を払わねばならないとも考えられるでしょう。
しかし遺産相続によって元の同居者が引き続いて不動産を利用する場合、被相続人も「遺産分割時までは同居者が不動産を使用し続けることを許諾していた」と考えられます。
よって使用貸借の合意ができていたと解釈され、同居者は不動産に単独で住み続けられます(最高裁判所平成8年12月17日)。

不動産を単独で使用できる期間

被相続人と同居していた相続人が不動産を単独で使用できるといっても、いつまでも単独使用できるわけではありません。時的な限界があります。
具体的には「遺産分割時」までに限定されます。
遺産分割により、不動産の所有者が決まったら、それ以降は所有者へ物件の使用料を払わねばなりません。遺産分割後も物件を共有することにしたら、その時点から他の共有持分権者へ共有持分割合に応じた使用料を払わねばならないのです。

使用料の支払いをしないで権利関係をスッキリさせるには、遺産分割において居住者本人が物件を単独取得すると良いでしょう。

4-2.内縁の配偶者の場合

生前に内縁の配偶者が不動産を被相続人と共有していた場合、内縁の配偶者は物件を無償で単独使用できます。内縁の配偶者間においては、お互いに使用対貸借関係が認められるからです。
たとえば内縁の夫が死亡した場合を考えてみましょう。内縁の妻は内縁の夫の共有持分を相続できません。内縁の夫に子どもがいたら、子どもが相続してしまいます。すると子どもは共有持分権にもとづいて、内縁の妻へ明渡し請求や使用料の請求をする可能性があります。

しかし内縁の夫と妻の間には相互に使用貸借契約が成立しているので、子どもからの明渡しや使用料の請求はできません(最高裁判所平成10年2月26日)。
このようにして、配偶者居住権や相続権のない内縁の配偶者であっても居住権は守られる仕組みになっています。

5.明渡し請求は原則として認められない

共有物件の場合、1人が単独使用していても、明渡し請求は基本的に認められません。
各共有持分権者には物件を単独使用する権限が認められるからです。
他の共有持分権者が納得できない場合、使用料を請求するしか取りうる手段は基本的にありません。

6.単独使用で明渡し請求されるケースとは

共有物件の場合、1人が単独使用していても他の共有持分権者からの明渡し請求までは認められないのが原則です。しかし一定の場合には、明渡し請求が認められる可能性があります。
たとえば以下のような場合です。
●他の共有持分権者を実力で排除して無理に占有を強奪し、物件に住み始めた
●共有する土地を無断で大規模に造成した
●共有地上の通路を妨害した

なお共有する土地上に他の共有持分権者の意思に反して建物を建築した場合、明け渡しを認める裁判例と認めない裁判例があります。ケースバイケースの判断が必要になるといえるでしょう。

7.使用を妨害する共有者への妨害排除請求権も認められる

共有物件の使用者が他の共有持分権者を妨害する方法で専有すると、妨害排除請求権を行使される可能性があります。明渡しまでは認められなくても、差止請求や原状回復請求などが認められる、という意味です。たとえば以下のような場合です。
●共有の土地に勝手に土盛り工事をした
●共有の農地を宅地化しようとした
●共有ビルに勝手に自動ドアやカウンターを設置した
●共有の立ち木を伐採した

共有不動産を1人が使用していると、共有持分権者間でトラブルになるケースが多々あります。困ったときには弁護士に相談して解決方法を模索しましょう。
ダーウィン法律事務所では共有不動産の取り扱いに力を入れております。共有不動産についてお悩みがある場合には、お気軽にご相談ください。ダーウィン法律事務所では、東京都新宿区四谷と東京都立川市にオフィスを構えております、埼玉、神奈川、千葉からのご相談も広く受け付けております。