共有名義の不動産を所有していると他の共有者が自己破産をしてしまうケースがあります。たとえば、兄弟で実家を相続したものの弟が自己破産してしまうケース、夫婦で共有名義で購入した自宅について夫が自己破産してしまうケースなどさまざまなケースがあります。
このように共有者が自己破産してしまった場合には、共有不動産はどうなってしまうのでしょうか。また、共有者の自己破産により他の共有者にはどのような影響が及ぶのでしょうか。
今回は、不動産の共有者が自己破産した場合の影響などについてわかりやすく解説します。
目次
自己破産とは、借金の返済ができなくなった場合に行う債務整理の一種であり、裁判所により免責を認めてもらうことで借金の返済義務を免除してもらうことができます。すなわち、自己破産により原則としてすべての借金がゼロになりますので、借金問題を根本から解決できる手続きです。
自己破産は、借金をゼロにすることができるという大きなメリットがありますが、一定金額以上の資産を持っている場合にはすべて手放さなければならないというデメリットもあります。また、税金や社会保険料などは免責に対象外(非免責債権)となりますし、浪費やギャンブルでできた借金については、原則として免責を受けることはできません(免責不許可事由)。
このように自己破産には、メリットだけでなくデメリットもありますので、自己破産をお考えの方は、専門家である弁護士のアドバイスを受けながら進めていくようにしましょう。
自己破産をすると破産者の共有持分はどうなってしまうのでしょうか。
自己破産のデメリットで説明したとおり、自己破産では、一定金額以上の資産はすべて手放さなければなりません。不動産の共有持分も独立した権利として、金銭価値を有するものになりますので、基本的には、自己破産手続での処分の対象になります。
なお、破産者に処分可能な財産がある場合には、裁判所によって選任された破産管財人により財産の処分が進められます。破産管財人によって処分された財産については、債権者への配当にまわさなければなりません。
破産手続きにおける共有持分の処分方法には、以下の3つの方法が考えられます。
任意売却とは、破産管財人が裁判所の許可を受けることで破産財団に属する不動産を任意に売却する手続きです。破産財団に属する不動産については、債権者への配当の原資となりますので、より多くの配当を行うためにも、より高額な金額での売却が望まれます。
後述する競売手続きでは、相場よりも低い金額での売却になりますので、まずは、一般市場での売却をするために任意売却が行われます。
破産者の共有持分に抵当権が設定されている場合には、抵当権者である金融機関により担保不動産競売が行われる場合があります。
競売物件の入札目安となる売却標準額は、一般的な市場相場の7割程度といわれています。競売になるかどうかは担保権者の判断になりますが、担保権者が一般市場で売却した方が高く売れると判断した場合には、あえて競売を行わず、破産管財人による任意売却に委ねるケースもあります。
共有物分割請求とは、共有不動産の共有状態を解消する手続きです。
共有持分のみの売却では、買い手が見つからなかったり、見つかったとしても相場よりも低い金額でしか売却できないケースが多いです。そのため、少しでも高い金額で売却するには、共有持分のみの売却ではなく、共有不動産全体の売却が望ましいといえます。
そこで、破産管財には、他の共有者と共同で共有不動産全体の売却を行いますが、他の共有者の同意が得られない場合には、裁判所に共有物分割請求訴訟を提起します。裁判になれば、裁判所が適切な分割方法を決定してくれます。
共有者が自己破産すると他の共有者にはどのような影響が生じるのでしょうか。
自己破産により破産者である共有者の持分は、処分されてしまいますが、処分の対象は共有不動産全体ではなく、あくまでも「共有持分」に限られます。そのため、共有者が自己破産したとしても、他の共有者の共有持分が強制的に処分されたり、共有不動産全体が処分されるということはありませんのでご安心ください。
破産者の共有持分については、破産管財人による任意売却、競売、共有物分割請求のいずれかの方法によって処分されます。いずれにしても破産者は、共有持分を手放さなければならなくなりますので、破産者の共有持分はそれを取得した第三者に引き継がれることになります。その結果、共有不動産は、第三者との共有状態になってしまいます。
共有不動産を処分するためには、共有者全員の同意が必要になりますので、見ず知らずの第三者が共有者に加わると、同意を得る際に苦労するなどのデメリットが生じます。
破産者の共有持分は、一般市場での売却は難しいケースが多いため、破産管財人から他の共有者に対して、共有持分の買い取りが求められることがあります。執拗に買い取りを迫られるようなことはありませんが、破産管財人の連絡に対応しなければならないという煩わしさはあるでしょう。
共有者との話し合いでは持分の買い取りや共有不動産の一括売却を実現できない場合には、破産管財人により共有物分割請求訴訟が提起される可能性があります。
共有物分割請求訴訟では、共有者全員が当事者になる必要がありますので、争いを望んでいない共有者も強制的に被告となり裁判に参加する必要があります。それにより時間や手間がとられるというデメリットが生じます。
共有者が自己破産した場合には、共有者の持分は、処分され第三者に移転してしまいます。第三者との共有となればさまざまな支障が生じる可能性がありますので、それを回避するには以下のような方法を検討する必要があります。
第三者との不動産の共有を回避するには、破産者から共有持分の買い取るという方法があります。
破産管財人が選任されている場合には、破産管財人に破産者の共有持分を買い取る意向がある旨を伝えれば、話し合いに応じてくれるでしょう。ただし、破産手続きにおける共有持分の売却にあたっては、裁判所の許可が必要になりますので、相場よりも著しく低い金額での売却は認められません。そのため、共有持分を買い取るためにはある程度の資金を準備する必要があります。
なお、破産手続前に共有者から持分の買い取りを打診されることがありますが、自己破産を予定しているのであればその人から持分を買い取るのはやめておいた方がよいでしょう。破産直前に財産処分をすると財産隠しとみなされたり、不相当な価格だと詐害行為として否認の対象になる可能性があるからです。
「破産者の共有持分を買い取るだけの資金を準備できない」、「破産者の共有持分を買い取ってまで共有不動産を維持する熱意はない」という場合には、自分の持分を含めて任意売却することも検討してみましょう。
将来、共有不動産を売却しようとしても、共有者になった第三者や他の共有者が同意してくれるとは限りません。自分の持分だけを手放すよりも、共有不動産全体を売却して持分に応じた売却代金の分配を受ける方がより有利な金額で売却できる可能性があります。
共有者が自己破産すると、共有者の持分は、破産管財人による任意売却、競売、共有物分割請求という方法により処分されます。しかし、処分の対象は、あくまでも共有持分に限られますので、共有者の自己破産により他の共有者の持分に影響が及ぶことはありません。
共有者が自己破産をした場合には、共有持分の買い取りや共有不動産の売却ができるよい機会になりますので、一度検討してみるとよいでしょう。自分だけではどのように対応したらよいか判断できない場合には、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
ダーウィン法律事務所では、不動産に強い弁護士が、共有不動産の取り扱いに力を入れています。共有不動産についてお悩みがある方は、当事務所までお気軽にご相談ください。
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