共有状態にある未利用土地のトラブルと解決方法を弁護士が解説

土地は、資産になりますので、あっても無駄にはなりません。しかし、有効に活用できていない場合には、税金や管理費用の負担ばかり生じ、負の財産になってしまう可能性もあります。特に、共有状態の土地だと誰も利用せずに放置され、トラブルの原因になることもあります。このような共有状態の未利用土地がある場合には、どのように対処すればよいのでしょうか。

今回は、共有状態にある未利用土地のトラブルとその解決方法をわかりやすく解説します。

1、共有状態にある未利用土地で生じるトラブルとその背景


弁護士
荒川 香遥
共有状態にある未利用土地では、さまざまなトラブルが生じる可能性があります。以下では、よくあるトラブルとその背景について説明します。

(1)未利用土地の活用・売却に関して意見がまとまらない

共有不動産の活用・売却にあたっては、共有者全員の同意が必要になります。共有者が全員同じ意見であれば、未利用土地の活用・売却もスムーズに進めることができますが、共有者の中に一人でも反対する人がいると、共有不動産の活用や売却ができず放置される原因になります。

このような状態が続くと、共有者の死亡・相続が繰り返され、共有者が増えていき、ますます意見の集約が困難な状態になってしまいます。

(2)未利用土地の共有者が特定できない

共有不動産に関して、相続が繰り返されると、現在の共有者が誰であるかがわからない状態になることがあります。また、過去に遺産分割協議が成立したとしても、相続登記を怠っていると、遺産分割の有無がわからず、現在の共有者を正確に把握することができません。

このように未利用土地では、相続登記や遺産分割が放置される結果、共有者が特定できないという事態に陥ることが少なくありません。このような状態になると、いざ未利用土地を活用・売却しようとしても、誰と話し合えばよいかわからず、結局放置することになってしまいます。

(3)売却金額で意見の相違が生じている

共有不動産を売却することについて、共有者の意見が一致しているものの、売却金額について共有者間で意見が生じることもあります。安くてもいいから早く売却したいという共有者と、時間をかけてでも高く売却したいという共有者との間で意見の対立が生じると、共有不動産の売却自体が困難になり、未利用土地が生じる原因となります。

(4)売却したくてもできない

長期間未利用土地となっている不動産は、立地条件が悪いなど流通性に乏しい物件であることが多いです。共有者間で、共有不動産を売却することおよび売却金額について合意ができたとしても、買い手が付かなければ売却することはできません。

(5)自治体に寄付したいが応じてくれない

未利用の共有不動産があると負担ばかり生じるため、自治体に寄付しようと考えることもあります。しかし、自治体では、通路以外は寄付採納承認申請が通らないことも多く、寄付したくても自治体が応じてくれないこともあります。

(6)コストの負担が偏っている

共有不動産の活用・売却ができず、そのまま放置していても以下のようなコストが発生します。

このようなコストは、共有者の共有持分に応じて負担することになりますが、現実的には、共有者のうちの一人が代表者としてこれらのコストを負担していることも少なくありません。コストの負担に偏りが生じると、不満が生じて、共有者同士でトラブルが生じる原因になります。

2、共有関係の解消により未利用土地のトラブルを解決する方法


弁護士
荒川 香遥
共有状態の未利用土地は、トラブルの原因となりますので、以下のような方法で共有状態の解消を目指すべきでしょう。

(1)共有物分割請求

共有物分割請求とは、共有者同士の話し合いまたは訴訟により共有状態の解消を図る方法です。

未利用土地の共有状態を解消したいと考えた場合には、まずはすべての共有者に連絡を取り、共有状態の解消に向けた話し合いを進めていくとよいでしょう。他の共有者も未利用土地の問題で悩んでいる場合には、話し合いに応じてくれる可能性も高いです。

他方、共有者の一人でも共有状態の解消に否定的な人がいる場合には、話し合いでの解決は困難ですので、裁判所に共有物分割請求訴訟を提起します。しかし、未利用土地に関しては、共有状態を解消する手段として換価分割となり競売をすることになる可能性が高いですが、競売では入札者が現れない可能性もあります。

(2)共有持分放棄

共有持分放棄とは、共有不動産に関する自己の持分を手放して、他の共有者に帰属させる方法です。

共有持分放棄は、各共有者の単独の意思表示で行うことができますので、他の共有者の承諾がなくても共有持分を手放すことができます。そのため、以下のようなケースでは、共有持分放棄は、共有状態を解消する有効な手段となります。

ただし、共有持分放棄は、放棄した人の共有持分を他の共有者に押し付ける状態になりますので、他の共有者が登記に協力してくれないこともあります。そのような場合には、登記引取請求の訴訟を提起する必要があります。

(3)共有持分譲渡

共有持分譲渡とは、共有持分の譲渡人と譲受人との合意により、共有持分の譲渡を行う方法です。共有持分の譲渡を無償で行う場合には「贈与」、対価を得て行う場合には「売買」の形式となります。

共有持分譲渡も共有持分放棄と同様に他の共有者の関与なく、共有状態を解消できる方法になります。しかし、活用できていない不動産の共有持分を欲しがる人は通常いませんので、共有持分の譲受人を探すのは非常に困難といえます。このような場合には、個人よりも共有持分の買取業者などに打診してみた方が可能性が高いでしょう。

3、共有関係の解消以外の方法での解決方法


弁護士
荒川 香遥
共有状態にある未利用土地の問題は、共有関係の解消以外にも、以下のような方法で解決できる可能性があります。共有状態の解消が難しいという場合には、以下のような方法も検討してみるとよいでしょう。

(1)共有者による活用方法の検討

未利用土地というだけで、敬遠してしまう方も多いと思います。しかし、土地も資産ですので、有効活用することにより、利益を生み出すことができる可能性があります。

共有不動産の売却に反対している共有者がいる場合であっても、売却以外の有効活用であれば、賛成してくれる可能性もあります。そのため、売却以外の活用方法も含めて、共有者同士で話し合いを進めてみるとよいでしょう。

(2)未利用土地の有効活用

未利用土地の広さ、形状、周辺環境によって、土地の活用方法は異なります。以下では、未利用土地の活用方法として考えられるものをいくつか紹介します。

①太陽光発電や風力発電

周辺に民家や商業施設がなく、土地の活用が難しい場所であっても、太陽光発電や風力発電の設備を設置して運用するという活用方法が考えられます。このような活用方法であれば、むしろ民家や商業施設がない場所の方が最適といえるでしょう。

②トランクルーム経営

トランクルーム経営とは、土地にコンテナを設置して、収納スペースとしてレンタルすることをいいます。土地の整備とコンテナの購入だけで始められますので、初期費用を比較的抑えることができるというメリットがあります。

建物とは異なり、日当たりや騒音などの立地の影響を受けることもありませんので、活用の難しい未利用土地にも向いている方法といえるでしょう。

③貸農園

未利用土地が農地である場合には、その土地を貸農園として、第三者に貸し出すという活用用法があります。近年、家庭菜園を持ちたいという人が増えてきていますので、一定の需要が期待できる分野といえます。

④駐車場経営

未利用土地をそのまま放置していても固定資産税などの負担が生じますので、月極駐車場やコインパーキングとしての活用を検討してみてもよいでしょう。初期費用も抑えることができ、短期間で始めることができますので、土地活用の方法としてはよく選ばれる方法といえます。

ただし、駐車場経営は、立地が重要になりますので、未利用土地の立地条件によっては不向きな場合もあります。

4、共有不動産の問題でお困りの方は弁護士に相談を


弁護士
荒川 香遥
共有不動産の問題でお困りの方は、弁護士に相談することをおすすめします。

(1)最適な解決方法をアドバイスできる

不動産が共有状態になっているとさまざまなトラブルが生じる可能性があります。このようなトラブルに巻き込まれたくない、実際にトラブルが生じているため解決したいという場合には、共有状態の解消に向けて行動することが必要です。

共有状態を解消する方法には、いくつか手段がありますので、その中から最適な方法を選択することが重要です。弁護士に相談すれば、最適な解決方法をアドバイスしてもらえますので、その方法を実践することでスムーズにトラブルを解決できるでしょう。

(2)代理人として共有者との交渉を行える

共有状態の解消に向けた交渉を自分で対応するのが難しいという方は、弁護士に依頼するのがおすすめです。弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人となって他の共有者と交渉をしてくれますので、交渉によるストレスは大幅に軽減するでしょう。

また、当事者同士だと、感情的になってしまうこともあり、冷静な話し合いができないことがあります。しかし、弁護士が窓口になればそのようなおそれはないため、スムーズに話し合いを進めることが可能です。

(3)裁判手続きにも対応可能

共有者同士の話し合いで解決できない問題が生じた場合には、裁判所に訴訟を提起する必要があります。

訴訟手続きは、非常に専門的な手続きになりますので、専門家である弁護士のサポートがなければ適切に進めていくのは困難といえます。弁護士に依頼すれば、交渉が決裂したとしても、引き続き訴訟手続きにも対応してもらうことができますので安心して任せることができるでしょう。

5、まとめ


弁護士
荒川 香遥
当事務所までお気軽にご相談ください。

共有不動産に関するトラブルを解決するには、専門家である弁護士のアドバイスやサポートが必要です。自分で解決するのが難しいと感じた場合には早めに弁護士に相談するようにしましょう。

ダーウィン法律事務所では、共有不動産の取り扱いに力を入れています。共有不動産についてお悩みがある方は、当事務所までお気軽にご相談ください。

この記事を監修した弁護士

荒川香遥
  • 弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士

    荒川 香遥

    ■東京弁護士会
    ■不動産法学会

    相続、不動産、宗教法務に深く精通しております。全国的にも珍しい公正証書遺言の無効判決を獲得するなど、相続案件について豊富な経験を有しております。また、自身も僧籍を有し、宗教法人法務にも精通しておりますので、相続の周辺業務であるお墓に関する問題も専門的に対応可能です。

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