宅建業者に対する行政処分・刑事処分を徹底解説

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宅建業を営む場合には、国家資格としての免許が必要となります。そのため、これを管轄する国土交通省が、宅建業者の違法・不正行為に対して、監督処分(行政処分)を行うことがあります。また、宅建業者ではなく、宅建士に対する監督処分(行政処分)を行う事もあります。また、悪質性が高い違法行為の場合には、行政処分のみならず、刑事処分として懲役刑や罰金の処分が下ることも珍しくありません。
以下では、

1 監督処分の種類

監督処分には、指示処分、業務停止処分、免許取消処分が定められています。

(1)指示処分

免許権者である国土交通大臣又は都道府県知事は、宅建業者に対して必要な指示を行うことができます(宅建業法65条1項)。具体的には、宅建業法に違反した場合のみならず、以下の事由が認められるときに行われる(宅建業法65条1項各号)。
・業務に関し取引関係者に損害を与え、または与えるおそれが大であるとき
・業務に関し取引の公正を害する行為をし、または害するおそれが大であるとき
・宅建業務に関して他の法令に違反し、宅建業者として不適当と認められるとき
・宅建士が監督処分を受けた場合において、宅建業者の責めに帰すべき事由があるとき

(2)業務停止処分

免許権者である国土交通大臣又は都道府県知事は、宅建業者に対して1年以内の期間を定めて、その業務の全部又は一部の停止を命じることができます(宅建業法65条2項)。業務停止に違反すると免許取消処分となるほか(宅建業法66条1項9号)刑事罰の対象にもなります。具体的な、業務停止処分行為としては、

・指示処分に違反したとき
・宅建業に関し不正または著しく不当な行為をしたとき
・営業保証金供託届出前の事業開始(不足額を2週間以内に供託しないとき含む)
・新事務所設置に際し弁済業務保証金分担金を納付しないとき
・特別弁済業務保証金分担金を通知後1ヶ月以内に納付しないとき
・保証協会社員が還付充当金を通知後2週間以内に納付しないとき
・保証協会社員の地位を失った場合に1週間以内に営業保証金の供託をしないとき
・専任の宅建士設置要件を欠いたとき(2週間以内に補充しないとき含む)
・従業者名簿を備え付けていないとき
・取引態様の明示義務違反
・誇大広告等の禁止違反
・重要事項の説明義務違反(書面を交付して説明しなかったとき含む)
・37条書面の交付義務違反
・媒介および代理契約書面の交付、価額の根拠の明示義務違反
・自ら売主の場合の完成・未完成物件の手付金等保全措置義務違反
・手付の信用供与による契約誘引
・限度額を超える報酬受領、不当に高額の報酬要求
・重要な事実の不告知
・不当な履行遅延
・守秘義務違反

(3)免許取消処分

免許取消処分には、免許権者である国土交通大臣又は都道府県知事は、必ず免許を取り消さなければならない必要的取消処分と裁量により免許を取り消すことができる裁量的取消処分とがあります。

【必要的取消処分 宅建業法66条1項各号】
・宅建業者が成年後見人・被保佐人・復権を得ない破産者であるとき
・宅建業者が禁錮以上の刑に処せられ、執行の終わり等から5年を経過しない者
・宅建業者が宅建業法違反や傷害罪等で罰金の刑に処せられ、執行の終わり等から5年を経過しない者
・「成年者と同一の能力を有しない未成年者である宅建業者の法定代理人」または「個人である宅建業者の政令で定める使用人」または「法人である宅建業者の役員と政令で定める使用人」が、上記3つのいずれかに該当するとき
・「成年者と同一の能力を有しない未成年者である宅建業者の法定代理人」または「個人である宅建業者の政令で定める使用人」または「法人である宅建業者の役員と政令で定める使用人」が、下記4つのいずれかの者に該当するとき
・不正手段による免許取得、業務停止処分に違反するとして免許を取り消され、取消日から5年を経過しない者
・上記の者が法人の場合、免許取消処分の聴聞の期日、場所の公示日60日以内にその法人の役員であった者で、取消しの日から5年を経過しない者
・上記に該当するとして免許取消処分の聴聞の公示がなされ、公示の日から処分決定までの間に解散または廃業の届出をし、その届出から5年を経過しない者
・上記の期間内に合併により消滅した法人、または解散・廃業の届出をした法人の、聴聞の公示日前60日以内に役員であった者で、その消滅または届出から5年を経過しない者
・免許換えの手続きを怠ったとき
・不正手段により免許を取得したとき
・業務停止処分対象行為で情状が特に重いとき
・業務停止処分に違反したとき
・免許を受けてから1年以内に宅建業務を開始しないとき
・1年以上宅建業務を休止したとき

【裁量的取消処分 宅建業法66条2項及び同法67条】
・営業保証金供託の届出の催告を受け1ヶ月以内に届出をしないとき
・免許に付された条件に違反した場合
・宅建業者の事務所所在地が確知できないとき。宅建業者の所在(法人の場合は役員の所在)を確知できないときは、官報等でその事実を公告し、その公告の日から30日を経過しても、その宅建業者から申出がないとき

2  検査報告について

国土交通大臣は、宅建業を営むすべての者に対して、都道府県知事は当該都道府県区域内で宅建業を営む者に対して、宅建業の適正な運営を確保するため必要があると認められるときは、その業務について必要な報告を求め、又はその職員に事務所その他その業務を行う場所に立ち入り、帳簿、書類その他業務に関係ある物件を検査させることができます(宅建業法72条2項)。
報告や立ち入り検査を正当な理由無く拒んだ場合には、宅建業法の規定に違反することとなるため、指示処分や業務停止処分等の監督処分の対象となりますし、虚偽報告の場合には、刑事罰の制裁もあります。

3 刑事処分について

以下、対応する違法行為と刑事処分の対応表です。

宅建業法79条の2
・重要な事実の不告知懲役2年以下若しくは罰金300万円以下(法人は一億円)。
※懲役と罰金の併科もあります。

対象行為 法定刑
宅建業法79条1号~4号
・不正手段による免許取得
・無免許営業
・名義貸しでの営業
・業務停止処分の違反営業
懲役3年以下若しくは罰金300万円以下(法人は一億円)。
※懲役と罰金の併科もあります。
宅建業法80条
・不実の告知を行い、不当に高額の報酬を要求した。
懲役1年以下若しくは罰金100万円以下
※懲役と罰金の併科もあります。
宅建業法81条
・営業保証金の供託届出前の営業行為
・誇大広告
・不当な履行遅延
・手付貸与等による契約締結の誘引
懲役6ヶ月以下若しくは罰金100万円以下
※懲役と罰金の併科もあります。
宅建業法82条
・専任の取引の設置要件を欠く
・免許申請書の虚偽記載
・名義貸しで他人に営業や広告させた
・報酬基準額を超える報酬を受領した
罰金100万円以下
宅建業法83条
・帳簿の備付け義務違反・記載不備・虚偽記載
・従業員名簿の備付け義務違反・記載不備・虚偽記載
・変更の届出等義務違反・虚偽届出
・標識の掲示をしなかった
・報酬額の掲示をしなかった
・37条書面の交付を怠った
・守秘義務違反
・大臣や知事の検査拒否
罰金50万円以下
宅建業法86条
・登録消除などによる取引士証の返納義務に違反した
・事務禁止処分による取引士証の提出義務に違反した
・重要事項の説明の際の取引士証の提示義務に違反した
罰金10万円以下

なお、刑事処分の場合には、弁護士法人ダーウィン法律事務所では刑事事件専門を専門とする弁護士も在籍しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

4 まとめ

以上、宅建業者に対する監督処分と刑事処分について説明をいたしました。行政処分や刑事処分についてご相談はお気軽にお寄せください。

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