C-1.媒介契約の種類

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売買仲介・媒介 賃貸仲介・媒介 

不動産の売買契約賃貸借契約を行う場合の多くは、売主(貸主)と買主(借主)との間を宅地建物取引業者が媒介を行う事が一般的です。
日常的に用いられる媒介行為ですので、日常のルーティンとして行われておりますが、一般のかたからすると媒介?となじみのない言葉があるため、法的なトラブルに発展することもあります。

今回のコラムでは、この点について解説いたします。以下、宅地建物取引業法を宅建業法といい、宅地建物取引業法施行規則を宅建業法施行規則といいます。

1 媒介契約と宅建業法との関係

(1)媒介と仲介の意味

一般用語として、媒介と仲介という表現がありますが、宅建業法では、「媒介」(宅建業法第2条2号)や「媒介契約」(宅建業法第34条の2)として、媒介という言葉が用いられますが、取引実務では、「仲介」という言葉も用いられており、両者は、同じ意味で用いられています。
裁判例を俯瞰しても、いずれの表現を行う裁判例もありますので、「媒介」だからこのような結論になると、「仲介」だからこのような結論になるといった、言葉の意味そのものからの違いは特に無く、宅建業者が負う法的な義務という側面でも違いはありません。

(2)法的性質

媒介契約の法的性質については、民法の準委任契約(民法656条)の性質を有すると考えられています。準委任契約とは、法律行為以外の事務を委託し、他方がこれを受諾することによってなされる契約をいいます。
そのため、委任契約と同じ法的性質を有するため、受託者である宅建業者は、「善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務」(民法644条)を負うこととなります。これは、後述いたしますが、媒介契約の種類に関わらず、負う義務ですので、一般媒介だから、少し手を抜いて処理をしてもいいということになりませんので注意が必要です。
また、宅建業法第31条1項にも、「宅地建物取引業者は、取引の関係者に対し、信義を旨とし、誠実にその業務を行なわなければならない。」として、信義誠実義務が課されています。

(3)宅建業法との関係

宅建業法では、媒介契約締結するにあたって、宅建業者が行うべき行為について定められていますので、これと反する媒介契約は無効となります。
宅地建物の売買契約または交換契約の媒介を行為を実施する場合、宅建業法34条の2により、規制がされています。かつては、このようなルールが定められておらず、媒介契約の内容が不明瞭であるがゆえに、契約の締結のトラブルや報酬緒巡るトラブルが多かった歴史があります。

(参考:電子政府の総合窓口 イーカブ 宅地建物取引業法 第三十四条の二

2 媒介契約の種類

宅建業法では、3種類の媒介契約を定めています。それぞれの整理は下記通りです。

一般媒介契約 専任媒介契約 専属専任媒介契約
契約できる媒介業者の数 同時に何社とでも可能 同時に一社のみ 同時に一社のみ
状況報告 法令上の義務は無い 2週間に一回以上の頻度で報告
※宅建業法34の2第9項
1週間に一回以上の頻度で報告
※宅建業法34の2第9項
自己発見取引 可能 可能 不可
不動産流通機構(レインズ)掲載 法令上の義務は無い 義務
※媒介契約日の翌日から7日以内※休業日数は算入せず
※建業法34の2第5項、宅建業法施行規則第15条の10第1項
義務
※媒介契約日の翌日から5日以内
※休業日数は算入せず
※宅建業法34の2第5項、宅建業法施行規則第15条の10第1項
契約期間 定めなし
※行政指導により3ヶ月程度が通常
最長3ヶ月 最長3ヶ月
メリット 依頼者(エンドユーザー)は、複数の業者に頼むことができ、情報の差による売買金額の差を埋めることが期待できる 媒介業者は、広告費をかけて活動ができるため、売買までの成約期間が早まることが想定される 媒介業者は、広告費をかけて活動ができるため、売買までの成約期間が早まることが想定される
デメリット ・インターネット等の普及で情報の格差は減っている。
・媒介業者が広告費などのコストをかけられず売買までに時間がかかることが想定される
・他の業者に頼む際に他の業者に頼んでいることを「明示」するか「非明示」とすることも選べるため、「非明示」の場合にはさらに媒介業者の販売意欲を減退させる可能性がある。
・囲い込み(両手仲介をもくろむため、他の媒介業者からの問い合わせに対応しない行為)が行われる可能性がある。 ・囲い込み(両手仲介をもくろむため、他の媒介業者からの問い合わせに対応しない行為)が行われる可能性がある。
・自分で買主や売主を見つけてきても取引ができない。

 

(2)レインズの登録

 専任媒介契約や専任専属媒介契約の場合には、レインズへの登録が必要となりますが、売主としては、本当にレインズに登録したのかどうか不安に感じられることがあります。そのため、宅建業者としては、登録後には、遅滞なく、交付が必要となりますし、これは義務となっています(宅建業法34条の2第6項)。

3 宅建業者の義務

(1) 信義誠実義務・善管注意義務

 宅建業者は、前述のとおり、準委任契約の受託としての善管注意義務を負いますし、宅建業法上も、「宅地建物取引業者は、取引の関係者に対し、信義を旨とし、誠実にその業務を行なわなければならない」(宅建業法第31条1項)として信義誠実義務を負います。

 具体的な業務の流れでいえば、下記内容についての義務を負います。

  • ・成約に向けた義務
  • ・物件の調査義務(地中埋設物・瑕疵等)※別コラムにて掲載しております。
  • ・レインズへの登録義務及び登録証明書の交付義務
  • ・媒介状況・申込状況の報告義務
  • ・価格根拠の説明義務
  • ・重要事項説明義務
  • ・成約時の契約締結や引渡の補助義務

(2) 囲い込みについて

 囲い込みとは、専任媒介契約や専任専属媒介契約において、媒介業者が、売主からの仲介報酬のみならず買主からの仲介報酬を得るために、情報の隠蔽や問い合わせに対して誠実に対応しない対応のことを言います。

 不動産の売買においては、情報の質や情報の量によって金額や成約までの期間が変動しますし、媒介契約締結からレインズ登録までの日数をぎりぎりまで伸ばすことで両手取引を目指すことは正当な媒介業務といえますし、経済合理性からも妥当といえるでしょう。

 しかし、レインズへの登録は媒介契約締結の日という基準から起算することを逆手にとって、あえて、媒介契約の媒介日を合理的な理由無く「空欄」にするなどして、手持ち期間を長く撮ることで、両手取引を目指す業者もいます。

 このような対応は、宅建業法の目的を没却するものであり、依頼者の利益を擬制にする行為であるため、宅建業者として負う信義誠実義務・善管注意義務に違反するものといえますので、注意が必要です。

 また、合理的な理由もないのに、レインズ等をみて問い合わせをした他の業者に対して「申込が入っている」などとして問い合わせに応じないことも信義誠実義務・善管注意義務に違反するものといえます。

(3) 介入行為(転売差益の不正取得)について

 加入行為(転売差益の不正取得)とは、売却希望価格より高い金額で買付希望者がいたににも関わらず、宅建業者の利害を有する第三者を介在させることで、媒介業者としては2回の両手取引を実現できることに加えて、転売差益も受領できるなど、売主の利害を害する行為一般をいいます。

 このような行為ももちろん、売主が承諾していない以上、不当に低い金額で媒介を進めたということで、宅建業法違反に該当するものといえます。

(4) 媒介依頼者の義務と義務違反に対して

 これまでは、媒介業者である宅建業者にスポットをあててその義務を考えてきましたが、一方で、媒介契約の一方当事者である媒介依頼者についての義務については下記通りです。

 したがって、媒介依頼者としてもきちんと義務を履行せず、独断で物事をすすめた場合には、媒介業者に対して損害賠償義務を負うこともあります。

 自己発見取引を装って媒介契約期間締結後に媒介業者に秘密裏に売買を進めた場合、標準媒介約款において、売買契約締結後も一定の期間(通常2年間)、このような直接取引は禁止されています。ただ、この場合、媒介を行った宅建業者としては、契約の成立に寄与した割合に応じた報酬を請求することが一般的であるため、どの程度寄与したかという点が争点となります。

 また、媒介依頼者は、専任契約の場合には、他の宅建業者への媒介を依頼しない義務を負い、専任専属契約の場合には、さらに、自己発見取引を行わない義務も負っています。こにれ反した場合には、標準媒介約款に記載された違約金を支払う義務を負います。 

 

4 まとめ

 以上の通り、媒介契約の種類や宅建業者としての義務、媒介依頼者の義務を解説させていただきました。

 どの程度の義務を違反したら、媒介契約を解除できるのか、損害賠償請求が出来るのかについては、個別具体的な考察が必要となりますので、お気軽にご相談ください。

以上

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