C-4.直接取引と仲介報酬請求について

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該当する業者タイプ
売買仲介・媒介 賃貸仲介・媒介 

仲介業者が、当事者より不動産仲介の委託を受けて対象物件や取引の相手方を探すなどして、契約成立に向けて行動していたときに、委託者が仲介業者を排除して取引の相手方と直接交渉を行うなどして、契約を成立させた場合を直接取引といいます。委託者が、自ら動く場合の他、他所の仲介業者を通じて取引を行った場合も同様です。

委託者としては、仲介報酬を支払うことが惜しくなってこのような直接取引を行うことがあります。
このような直接取引は、委託者が、費用や時間をかけて仲介業者が収集した情報の横取りともいえる行為ですし、仲介業者としては、せっかく成立の目処が経っていたにもかかわらず仲介報酬請求を請求できなくなるどの損害を被ることとなります。
一方で、日常的な不動産取引において、物件成約時と同時に媒介契約書を「形式上」締結するパターンも多く、紛争時に、予め媒介契約書が作成されていない状況も想定できます。
そこで、以下、パターンに分けて、直接取引が行われた場合の仲介報酬請求についてご説明いたします。

1 媒介契約書を締結している場合

標準媒介契約書には、
「媒介契約の有効期間又は有効期間の満了後2年以内に、甲(委託者)が乙(宅建業者)の紹介によって知った相手方と乙を排除して目的物件の売買または交換の契約を締結したときは、乙は、甲に対して、契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を請求することができます」(専任約款10条、専属約款10条、一般約款12条)
と定められています。
したがって、予め媒介契約書を締結している状況で、委託者が直接取引を行った場合には、その責任の追及は容易といます。もっとも、後述するとおり、「契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を請求することができる」と定められているとおり、具体的な報酬としてどの程度請求できるかは、別途考察が必要となります。

2 媒介契約書を締結していない場合

(1) 媒介契約書を締結していなくても、裁判例は、緩やかに仲介契約の成立を認める傾向にある。

ア 売主との仲介契約の成立を裏付ける事実としては、
 ・不動産売却にあたっての必要書類を仲介業者に交付していること
 ・売主と仲介業者が売却価格などの打ち合わせしていること
 ・仲介業者が広告を掲載することについて売主が承諾していること
 ・売主が、仲介業者が買主候補者との応対を任せたり、物件の鍵などの管理を任せたこと
などを総合考慮して、仲介契約の成立を検討することとなります。

イ 一方で、買主との仲介契約の成立を裏付ける事実としては、
 ・買主が仲介業者に希望条件などを伝えていること
 ・仲介業者から、希望物件の資料などを受け取り、購入条件を打ち合わせしたこと
 ・価格交渉をしたり、内見に同行させたこと
などを総合考慮して仲介契約の成立を検討することとなります。

(2) 仲介業者を排除したといえるか

次に、委託者が仲介業者を排除したといえるかについては、委託者が仲介業者が集めた情報を利用して、仲介行為の成約の機会を喪失させ、かつ、その状態が信義則に違反する状態(民法1条2項)であったかどうかで判断します。
具体的には、排除といえるためには、結局の所、仲介業者において成約の機会を喪失させたと評価できる程度のものが必要となるため、ただ委託者が直接契約をしただけでなく、委託者が仲介業者を排除した時点で、仲介業者が委託者に提供した資料や情報の内容、与えた情報と委託者による直接取引の時期が近接しているか否か、成約に向けての成熟度合いなどを総合考慮して信義則に反する態様での直接取引と判断されて初めて「排除」と評価できます。

次に、排除と認められるとしても、委託者に排除の故意までを必要せず、裁判所としては、仲介業者の仲介活動と仲介契約終了後の売買契約成立との間に相当因果関係があるときは緩やかに排除を認めている(東京高判昭和34年6月23日民集10巻6号1324頁)。
例えば、東京地判平成24年11月16日(2012WLJPCA11168005)によると、「意図的に排除する目的の有無にかかわらず、媒介者の行った労力に対し、その効果が残存していると認められる相当な期間について、媒介者の寄与に応じて仲介手数料の支払い義務を認める趣旨があるものと解するのが合理的であること」と判断した。
一方で、仲介業務の際に、仲介業者に調査義務違反や、説明義務違反などがあり仲介契約が解除されたものの、当該仲介業者が得た情報によって委託者が直接取引を実施したような場合には、解除にいたる経緯を総合考慮して、仲介業者による報酬請求を認めないという結論もありえます。

3 報酬額について

前述のとおり、仮に標準媒介契約を締結していたとしても、仲介業者は、「契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を請求する」ことができると定められている。一方で、媒介契約を締結していない場合には、仲介契約の成立が認められ、直接取引が認められた場合に報酬額について争点となります。この場合、商法512条に基づいてやはり「相当な報酬」を請求することができます。
この点、国土交通省告示が示す報酬告示は、あくまで仲介に伴う最高限度金額を定めたにすぎませんので、報酬告示の金額が報酬として当然に認定されるものではないことに注意が必要です(最判例昭和43年8月20日民集22巻8号1677頁)。
具体的には、取引額、媒介の難易、期間、労力その他諸般の事情を斟酌して定められる性質のものを踏まえて、決められることとなります。端的な表現として言えば、仲介業者の「寄与度」がどの程度かを判断することとなります。

4 まとめ

以上のとおり、媒介業者としては、直接取引をされた場合の仲介報酬請求の考え方を説明いたしました。
弊所では、直接取引が行われた場合の仲介報酬請求に関するご相談を受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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