借地の更新料は法律上一律に支払義務があるものではなく、借地契約に更新料支払特約があるか、地主と借地人の間で更新料を支払う合意が成立しているかによって結論が変わります。
更新料の金額についても法律上の定額や割合はありません。実務上は、借地権価格の3~5%程度や、更地価格の2~3%程度が参考にされることがありますが、過去の更新料、契約内容、土地価格、借地権割合、更新期間などによって適正額は異なります。
【弁護士監修】借地の更新料について最初に確認する3つのポイント
この記事では、借地の更新料を支払う義務があるのか、更新料の相場・計算方法、高すぎる更新料を請求された場合の減額交渉、更新料を払えない場合の対処法、更新料を支払わなかった場合の契約解除リスクについて、不動産法務を扱う弁護士が解説します。
目次
借地の更新料とは、借地契約を更新する際に、地主と借地人との合意に基づいて借地人から地主へ支払われる金銭をいいます。
借地借家法や民法には、「借地契約を更新する場合には必ず更新料を支払わなければならない」という規定はありません。
そのため、更新料の問題では、まず借地契約書や過去の更新契約書を確認し、地主と借地人との間に更新料を支払う合意が成立しているかを確認する必要があります。
借地の更新料には、個々の契約によって、将来の地代の補充、長期間にわたり借地関係を継続することの対価、地主が更新について争わないことの対価など、複数の性質が含まれることがあります。
最高裁昭和59年4月20日判決も、借地の更新料がどのような性質を持つかは、更新料支払合意の経緯や賃貸借成立後の事情など、具体的な事実関係を総合して判断すべきものとしています。
借地の更新料を支払う義務があるかは、主として更新料支払特約や更新料を支払う合意の有無によって決まり、地主から請求されたという事実だけで当然に支払義務が発生するわけではありません。
借地契約書に有効な更新料支払特約がある場合には、原則として、その合意内容に従って更新料を支払う義務が生じます。
たとえば、借地契約書に、
「契約を更新するときは、借地人は地主に対して更新料として借地権価格の○%を支払う」
などの条項が明確に定められている場合です。
もっとも、更新料条項が存在するからといって、地主が請求した金額を無条件に支払わなければならないとは限りません。
確認すべき事項には、次のようなものがあります。
特に、「更新時には更新料を支払う」とだけ記載され、合意更新と法定更新のどちらを対象とするのかが明確でない場合には、契約条項の解釈が問題になることがあります。
借地契約書に更新料支払特約がなく、地主と借地人との間に更新料を支払う合意も成立していない場合には、地主から請求されただけで更新料を支払う法的義務が生じるわけではありません。
最高裁昭和51年10月1日判決では、借地契約の更新時に当然に更新料を支払わなければならないという商慣習・事実たる慣習の存在が否定されています。
したがって、地主が「この地域では更新料を払うのが普通だ」と説明したというだけで、直ちに法的な支払義務が生じるわけではありません。
また、過去に一度更新料を支払ったことがある場合も、その事実だけから将来すべての更新について更新料を支払う合意が成立しているとは限りません。
過去の更新料支払がある場合には、金額、支払時の合意内容、更新契約書の記載、その後の地主と借地人とのやり取りを確認して、将来の更新料支払義務まで合意したといえるかを判断します。
普通借地権では、地主と借地人が更新に合意する「合意更新」のほか、借地借家法5条の要件を満たすと地主との合意がなくても「法定更新」が成立する場合があります。
借地借家法5条は、借地契約の更新について次のように定めています。
借地借家法5条1項
借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。
借地借家法5条2項
借地権の存続期間が満了した後借地権者が土地の使用を継続するときも、建物がある場合に限り、前項と同様とする。
したがって、普通借地権では、主に次の2つの法定更新が問題になります。
もっとも、地主が遅滞なく異議を述べ、借地借家法6条の正当事由が認められる場合には、法定更新が阻止されることがあります。
地主による更新拒絶と正当事由については、「借地契約を終了させるには正当事由が必要!借地契約の更新拒絶について解説」で詳しく解説しています。
更新料を支払わなかっただけで常に借地契約が解除されるわけではなく、更新料の支払義務が存在するかに加え、不払いによって地主と借地人との信頼関係が破壊されたといえるかが重要になります。
更新料支払特約や更新料支払合意がなく、借地人に更新料の支払義務がない場合には、更新料を支払わないこと自体を理由として債務不履行解除することはできません。
もっとも、更新料の支払いをめぐって地主との交渉が決裂すると、地主が借地契約の更新そのものに異議を述べることがあります。
その場合でも、普通借地権について地主が更新拒絶をするためには、借地借家法6条に定める正当事由が必要です。
借地借家法6条では、正当事由について、地主・借地人双方が土地を必要とする事情、従前の借地関係、土地の利用状況、地主からの財産上の給付の申出などを考慮して判断するとされています。
そのため、「更新料を支払わなかった」という事情だけで、当然に地主の更新拒絶が認められるわけではありません。
有効な更新料支払合意があるにもかかわらず更新料を支払わない場合には債務不履行となり、不払いの経緯や金額などによっては借地契約の解除が認められる可能性があります。
もっとも、土地賃貸借は長期間継続する契約であるため、一度の債務不履行があれば直ちに契約解除が認められるというものではありません。
更新料の不払いによる解除が認められるかについては、たとえば次の事情が問題になります。
最高裁昭和59年4月20日判決は、更新料の支払いが更新後の土地賃貸借契約の重要な要素として組み込まれ、当事者の信頼関係を維持する基盤となっていた事案で、更新料不払いを理由とする契約解除を認めました。
この判決から、「更新料を一度払わなかったら必ず契約を解除される」と理解するのは正確ではありません。
最高裁は、更新料支払合意が成立した経緯、契約成立後の当事者双方の事情、更新料が契約の中で果たしていた役割など、具体的事情を総合して判断しています。
そのため、更新料の不払いによる解除リスクを判断するときには、単純に「特約があるか」だけではなく、契約関係全体を検討する必要があります。
借地の更新料に法定相場はありませんが、実務上は借地権価格の3~5%程度や、更地価格の2~3%程度が一つの参考とされることがあり、過去の更新料、更新期間、土地価格、借地条件などによって金額は変動します。
借地の更新料は、借地権価格の3~5%程度を目安とする方法や、更地価格の2~3%程度を参考にする方法がありますが、いずれも法律で定められた一律の割合ではありません。
裁判例でも、具体的な土地や契約条件に応じて異なる割合が採用されています。
たとえば、東京地裁平成30年2月28日判決では、東京都内で更地価格の2~3%程度の更新料の例が多いこと、過去に実際に支払われた更新料の割合、対象地域における更新料の実情などを考慮し、対象事案では更地価格の2.5%という評価が採用されています。
したがって、「更新料は必ず借地権価格の5%」「必ず更地価格の3%」という計算は適切ではありません。
更新料を検討するときには、主に次の事情を確認します。
借地の更新料を概算する方法の一つとして、「更地価格×借地権割合×3~5%」という計算式がありますが、これは簡易的な目安であり、契約上の算定方法や過去の更新実績がある場合にはそれらを優先して検討します。
更新料の簡易的な計算例
更地価格 × 借地権割合 × 3~5%
例:更地価格5,000万円、借地権割合70%の場合
5,000万円 × 70% × 3% = 105万円
5,000万円 × 70% × 5% = 175万円
この条件では、借地権価格を基礎とした単純計算では105万円~175万円程度が一つの参考値になります。
一方、更地価格を直接基礎として2~3%を乗じる考え方を用いると、同じ更地価格5,000万円の場合には100万円~150万円となります。
計算方法によって金額に差が生じるため、更新料については計算式だけではなく、契約書、前回更新料、土地価格、借地条件を併せて検討する必要があります。
更新料を計算する際の「更地価格」と国税庁が公表する路線価は同じものではなく、路線価は主として相続税・贈与税における土地評価の基準として使用される価格です。
元となる土地価格を調べるとき、国税庁の路線価を利用する方法がありますが、路線価に土地面積を単純に乗じた金額をそのまま実勢の更地価格と考えることは適切ではありません。
路線価方式による土地評価では、路線価に奥行価格補正率など各種補正を行った上で面積を乗じて評価します。
また、国税庁の路線価図には地域ごとの借地権割合が表示されており、相続税・贈与税上の普通借地権の評価では、原則として、
自用地としての価額 × 借地権割合
によって借地権の価額を評価します。
もっとも、この評価方法は相続税・贈与税のための財産評価方法です。
地主と借地人との間で実際の更新料を交渉する場合には、路線価・借地権割合だけでなく、実勢価格、公示価格、過去の更新料、借地契約の内容なども検討する必要があります。
借地権の種類や普通借地権・定期借地権の違いについては、「借地権とは?借地権の種類やメリット・デメリットを解説」もあわせてご覧ください。
地主から請求された更新料が高すぎると感じた場合には、直ちに提示額を支払うのではなく、①支払義務、②契約上の計算方法、③前回更新料、④現在の土地価格、⑤地主の算定根拠を確認した上で減額交渉を行います。
更新料の金額を交渉する前に、そもそも借地人に更新料を支払う法的義務があるかを確認することが最優先です。
借地契約書に更新料支払特約がなく、別途の合意も存在しないのであれば、「相場より高いか」という問題以前に、そもそも支払義務があるのかが問題になります。
確認すべき資料は、主に次のとおりです。
地主から高額な更新料を請求された場合には、「更新料○○万円」という結論だけではなく、土地価格・借地権割合・更新料率など、具体的な算定根拠の開示を求めることが重要です。
たとえば地主が「借地権価格の10%」と主張しているのであれば、なぜ10%なのか、どの土地価格を基礎にしているのかを確認します。
更新料と借地権譲渡の承諾料は別のものです。
借地権譲渡承諾料では借地権価格の10%程度が一つの目安として問題になることがありますが、それをそのまま更新料の割合として使用することは適切ではありません。
2回目以降の更新では、前回の更新時に実際に支払った更新料やその算定方法が、今回の更新料を検討する重要な資料になることがあります。
土地価格が上昇していれば前回と同額になるとは限りませんが、前回から大幅に増額されている場合には、その理由を確認する必要があります。
前回の金額、土地価格の変化、地代の変化、今回の更新期間などを比較して交渉します。
更新料の減額交渉では、「高すぎる」と主張するだけでなく、契約内容、過去の更新料、土地価格、裁判例などを示して合理的な金額を具体的に提示することが有効です。
たとえば、地主から500万円を請求されているのに対し、対象土地の価格や過去の更新料から150万円程度が合理的と考えるのであれば、その計算根拠を示して交渉します。
地主との関係は更新後も続くため、単純に支払いを拒否するか全額支払うかという二択ではなく、法的な支払義務と経済的な妥当性を分けて検討することが重要です。
借地の更新料を払えない場合には、まず支払義務の有無と請求額の妥当性を確認し、支払義務がある場合には、支払期限を放置せず、減額・分割払い・支払猶予などを地主と交渉することが重要です。
地主から更新料を請求されたからといって、資金を用意する前に、まず契約上その更新料を支払う義務があるのかを確認する必要があります。
有効な更新料支払特約がない場合には、そもそも請求に応じる必要がない可能性があります。
また、支払義務自体はあっても、地主が契約上の計算方法を超える金額を請求している可能性があります。
更新料の支払義務があり、一括払いだけが困難な場合には、地主との合意によって分割払いまたは支払期限の猶予を設定できることがあります。
たとえば300万円の更新料について、100万円を先に支払い、残額200万円を一定期間で分割して支払うなど、具体的な支払計画を提示します。
単に「払えない」と伝えるよりも、支払可能額、支払時期、分割回数を具体的に提示した方が交渉しやすくなります。
地主から請求された更新料そのものが高額である場合には、請求額を前提に分割交渉をするのではなく、まず適正額への減額を求め、その上で支払方法を協議することが重要です。
たとえば500万円を請求されている場合に、「500万円を分割してください」と交渉すると、500万円という金額自体を認めたと受け取られる可能性があります。
請求額に争いがある場合には、金額への異議を留保した上で交渉する必要があります。
有効な更新料支払義務がある場合に、地主からの請求を無視して長期間不払いを続けると、事情によっては借地契約の解除を主張されるリスクがあります。
前述した最高裁昭和59年4月20日判決のように、更新料の支払いが更新後の契約関係の重要な基盤となっているケースでは、不払いが契約解除につながることがあります。
そのため、支払義務がある可能性が高いものの資金的に支払えない場合には、何も対応しないのではなく、地主へ事情を説明し、早期に支払方法を協議する必要があります。
借地の更新料を弁護士に相談するメリットは、更新料の支払義務、適正額、契約解除リスクを整理した上で、地主との減額・分割交渉まで対応できることです。
弁護士は、借地契約書、更新契約書、過去の支払状況などを確認し、更新料支払特約が有効に成立しているか、法定更新の場合にも適用されるかを検討できます。
更新料の問題では、「相場はいくらか」を調べる前に「支払義務があるか」を判断する必要があります。
この順序を逆にすると、本来支払義務がない可能性があるのに、「相場まで減額してもらう交渉」をしてしまうことになります。
更新料の金額が争われる場合には、土地価格、借地権割合、過去の更新料、地代、更新期間、裁判例などを踏まえて、地主の提示額が合理的かを検討します。
必要に応じて、不動産鑑定その他の専門的な評価を検討することもあります。
地主から高額な更新料を請求された場合や一括払いが困難な場合には、弁護士が借地人に代わって減額、分割払い、支払猶予などを交渉できます。
特に、地主が更新料を支払わなければ更新を認めないと主張している場合には、普通借地権の法定更新や正当事由の問題も含めて対応する必要があります。
地主による借地契約の更新拒絶については、「借地契約を終了させるには正当事由が必要!借地契約の更新拒絶について解説」もあわせてご覧ください。
借地の更新料は、法律上一律に支払義務や金額が決まっているものではなく、更新料支払特約・過去の合意・土地価格・借地権割合・更新期間などを確認して、支払義務と適正額を個別に判断する必要があります。
地主から更新料を請求された場合は、次の順番で確認することが重要です。
また、借地権には普通借地権、定期借地権など複数の種類があり、更新の有無や期間満了時の処理も異なります。借地権の種類については、「借地権とは?借地権の種類やメリット・デメリットを解説」をご覧ください。
借地の更新料で地主とトラブルになっている方へ
更新料については、「請求された金額が相場より高いか」を検討するだけでは不十分です。まず更新料の支払義務があるかを確認した上で、金額の妥当性、支払方法、契約解除や更新拒絶のリスクを整理する必要があります。
ダーウィン法律事務所では、借地・底地をはじめとする不動産案件を取り扱っています。地主から高額な更新料を請求された場合、更新料を支払えない場合、更新料をめぐって契約解除や更新拒絶を主張されている場合には、地主と合意する前にご相談ください。
まずご依頼の流れ(必読)をご確認いただき、お電話で相談希望を受付後、担当スタッフ、弁護士から折り返しいたします。
立場を明確にしていただく必要がありますので、ご連絡時、下記情報お伝えください