マンションの設備に不備があったら買主は売主へ契約不適合責任を問えるのでしょうか?
契約不適合責任とは、物の売主が買主に対して負う責任です。
結論的には、設備に不備がある場合でも買主が売主へ契約不適合責任を追及できるケースがあります。ただし全てのケースではないので、どういった場合に責任が認められるのか知っておきましょう。
また売主ではなく不動産仲介業者に調査や説明義務違反の責任が認められる可能性もあります。
この記事ではマンション設備に不備がある場合の契約不適合責任や不動産仲介業者の説明義務について、裁判例を交えて解説します。
目次
マンション設備不具合があると、買主は契約の目的を達することができない可能性があります。このように売買の対象物件が契約目的に合致しない場合、買主は売主へ「契約不適合責任」を問えます。契約不適合責任が発生すると、買主は売主に対し、修補請求や代金減額請求、解除や損害賠償請求などができます。
ただしマンション設備に不具合があったとしてもすべてのケースで契約不適合責任が認められるわけではありません。軽微な不備な場合には「対象物が通常有するべき性質を備えていない」とまではいえず、契約不適合責任が発生しないと考えられます。
裁判例でも設備に不良がある場合、契約不適合責任を認めるものと認めないものがあります。
以下でそれぞれみていきましょう。
賃貸マンションの売買契約で消防設備に欠陥があったケースです。
買主は売主から約2億8000万円で賃貸マンションを購入しました。このマンションは、消防法上の非特定防火対象物であり消防設備を設置しなければなりませんでした。ところがこのマンションでは避難ハッチとはしごがサビによって使えなくなっており、消防署からは「消火器を交換するように」といわれていた状況でした。
それにもかかわらず、売主は買主に消防設備の不具合を説明しなかったので、買主が瑕疵担保責任(改正前民法の契約不適合責任に相当する責任)にもとづいて損害賠償請求を起こしました。
裁判所は以下のように述べて、買主の請求を認めました。
●避難ハッチとはしごにサビや腐食による危険が生じているので、消防法17条1項所定の基準を満たさない消防設備の不備がある
●消火器については、消防当局から交換を求められたにもかかわらず、その交換をしていないので消防法等関連法規の基準を満たさず、設備上の不備といえる
●これら消防設備の不備によると本件マンションの消防設備は「通常有すべき品質、性能を有していない」といえ、民法570条にいう瑕疵にあたる
以上のように裁判所は消火設備の不具合が瑕疵(欠陥)であると認定し、買主の売主に対する法令違反状態を是正するための工事費用の請求を認めました。
電気や水道のメーターが古くなり、検定証印が表示する有効期間を経過していたケースです。このように有効期間を過ぎたメーターを使用することは計量法上認められません。よって電気や水道メーターには瑕疵があると認定されました。
ただし本件では瑕疵担保責任の免除条項があったので結論的には買主から売主への損害賠償請求が棄却されました。
建物の売買が行われたケースで、2階のガス配管や各室給湯器、2階部分水道メーターが欠如しており水道利用加入金の未払いがあったケースです。
売主は買主に対し、「給排水管の故障は発見していない」などと説明していました。
裁判所はガス配管欠如や給湯器の欠如、水道メーターの欠如などについて、買主の主張する瑕疵担保責任を認めました。
買主がルーフバルコニーつきのマンションを購入しましたが、上階のバルコニーの一部が自室のルーフバルコニーに落下したり落下するおそれがあったりしたため、ルーフバルコニーを使用できなかったと主張し、損害賠償を行ったケースです。
裁判所は「本件建物に付属するルーフバルコニーは、通常備えるべき品質・性能を欠いていた」「ルーフバルコニーは本件建物(マンション)に付随する」として瑕疵担保責任を認めました。
シェアハウスとして利用されていた物件のサッシ網戸に不具合があったケースです。
裁判所は以下のような事情から瑕疵担保責任を否定しました。
●不具合がサッシ網戸にあったとしても、本件建物を一般的な居宅として使用することができないとはいえない
●築30年を超える中古住宅が有すべき通常の性能を欠いていると評価することはできない
●本件不動産が現にシェアハウスとして転貸されていたことからも明らかであって、サッシ網戸に不具合があることをもって本件建物に瑕疵があるとはいえない
同じく地上デジタルテレビの受信装置の不備についても瑕疵担保責任が否定されています。
建物の外壁に複数の爆裂があり。ルーフバルコニーなどの防水機能が低下して漏水が発生し、建物1階の排水管から漏水があって手すりの取付部分も緩んでおり、ベランダの水道管に腐食が発生しているなどの不備があったケースです。
裁判所は「築23年の中古建物においては通常生じ得る経年劣化によるものと考えられる」として瑕疵担保責任を否定しました。
以上のように、マンション設備に不備があった場合、売主には契約不適合責任が発生する可能性があります。
また宅建業法35条1項では、「飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備状況」を説明しなければならない、と規定されています。このように、法律では「日常生活に必要な設備」について、不動産仲介業者に説明義務が課されています。
宅建業法35条に挙げられている項目は例示であり、買主に重大な影響を与える可能性がある場合には、不動産仲介業者は35条に記載されていない事項であっても調査・説明者なければなりません。不動産仲介業者が調査や説明をしなかった場合、買主から不法行為や債務不履行にもとづいて損害賠償請求をされる可能性もあります。
不動産仲介業者は不動産に付随する設備の専門家ではありません。よって宅建業者として通常の注意を尽くせば認識できる範囲で調査を行い、その結果を買主へ説明すれば義務を果たしたと考えられます。それ以上に専門的な調査を実施する必要はありません。
判例や裁判例でも不動産仲介業者の責任を認めたものがあります。
たとえばマンションの防火戸が火災時に作動しなかったケースでは、不動産仲介業者に不法行為責任が認められています(最高裁平成17年9月16日)。
契約不適合責任については弁護士までご相談ください
マンション設備に不備があった場合、買主や売主、不動産仲介業者の間でトラブルになるケースが多々あります。契約不適合責任が発生する可能性があり、売主さまや買主さまがお困りの際にはお気軽に弁護士までご相談ください。ダーウィン法律事務所では、東京都新宿区四谷と東京都立川市にオフィスを構えております、埼玉、神奈川、千葉からのご相談も広く受け付けております。
まずお電話で相談希望を受付後、担当スタッフ、弁護士から折り返しいたします。
立場を明確にしていただく必要がありますので、ご連絡時、下記情報お伝えください