土地の売買を行ったとき、地中にコンクリートやプラスチックなどのものが埋まっていたら、買主は売主へ「契約不適合責任」を問えるのでしょうか?
裁判例では、地中からコンクリートガラやプラスチック、浄化槽や排水管などが発見された事件で物件の「瑕疵(欠陥)」と認められたケースがあります。
この記事では地中埋設物がみつかった場合の契約不適合責任について解説します。土地売買で地中の埋設物が発覚して対応にお困りの場合には、ぜひ参考にしてみてください。
目次
地中埋設物とは、地中に埋まっている廃棄物や障害物などをいいます。
具体的にどういった地中埋設物があるのかみてみましょう。
●コンクリートガラ
●コンクリートの塊
●プラスチック
●建物の基礎
●コールタールを含んだレンガ
●導水管、排水管、浄化槽
●井戸
●塩化ビニール管や木材
●庭石
●農業用水路
他にもいろいろなものが埋まっているケースがあります。
地中埋設物があると問題が起こる理由
購入した土地の下に埋設物があると、買主は建物を建築しにくくなってしまいます。
かといって、除去するには費用がかかります。
そこで建物を建築するのに支障がある深さのところに地中埋設物があると、売買取引後に買主と売主間でトラブルが生じてしまうケースが多いのです。
具体的には買主は売主に対し、契約不適合責任を追及したり、説明義務違反にもとづく損害賠償請求を行ったりする可能性があります。
また買主が不動産仲介業者へ債務不履行責任や不法行為責任をもとに損害賠償請求するケースもよくあります。
契約不適合責任とは、売買の対象物が契約目的に合っていないときに売主が買主に対して負う責任です。
たとえば購入した物件に雨漏りがしていると、物件は通常契約目的に適合しているとはいえないでしょう。契約不適合責任が発生する可能性があります。
契約不適合責任が発生すると、買主は売主へ以下のような請求ができます。
物件に欠陥がある場合に修理などを要求して完全なものの履行を求めることです。たとえば地中に埋設物がある場合、撤去を求めることが可能です。
物件に欠陥がある分に関して売買代金の減額を求める請求です。たとえば地中に埋設物がある場合、ない場合と比べて価値の低減が起こります。そこでその低減された価値の分、土地売買代金を減額できます。
売買対象物が契約目的に合っていない場合、買主は売主に対して契約を解除できます。たとえば建物所有目的で土地を購入したのに、地中に大量の廃棄物が埋まっていて建物を建てられない場合、買主は契約を解除してなかったことにできます。
契約不適合(欠陥)によって買主が損害を被った場合には、売主に対して損害賠償請求ができます。契約が有効と信じたことによる損害(信頼利益)だけではなく、契約が有効に履行されたら得られていたはずの利益に相当する損害など(履行利益)も請求できます。
地中に埋設物が見つかると、売主に説明義務違反が認められるケースもあります。
売主の説明義務とは、売主が買主に対して対象物の状態を適切に説明しなければならない義務です。たとえば売主が物件の欠陥を知っていたなら、買主に告げた上で契約を締結しなければなりません。欠陥を告げると通常はその分代金が減額され、公平に取引ができます。
知っているにもかかわらず告げずに高額な金額で売買を行った場合、買主は売主に対して説明義務違反をもとに解除や損害賠償請求を主張できる可能性があります。
地中埋設物がみつかると、建物を建築できなくなったりして売主の期待に反するケースが多く、契約目的に適合しないとして、契約不適合責任が生じる可能性もあります。
ただし地中埋設物が見つかったからといって、すべてのケースで契約不適合責任が発生するとは限りません。
裁判例では、地中埋設物で契約不適合責任が生じるかどうかについて、以下のような判断基準が示されています。
●地中に土以外の異物が存在していたとしても、ただちに土地の瑕疵(欠陥)にあたるとはいえない
●土地上に建物を建築する際に支障となる質・量の異物が地中に存在するためにその土地の外観から通常予想される地盤の整備・改良の程度を超える特別の異物除去工事を必要とする場合には瑕疵となる
つまり地中埋設物が瑕疵に該当するかについては、地中埋設物の質や量が大きく影響します。たとえば埋設物の毒性が強い、大きい、除去しにくいものであれば瑕疵に該当する可能性が高くなります。一方埋設物が小さく簡単に除去できるものであれば、瑕疵には該当しないと判断されやすいでしょう。
埋設物の量も判断に影響を与えます。たとえばコンクリート片があっても少量で簡単に除去できるケースであれば、瑕疵には該当しないと判断される可能性が高まります。
地中埋設物が契約不適合のもととなる「瑕疵」になるかどうかについては専門的な判断を要するので、迷ったときには弁護士へ相談しましょう。
地中に埋設物があった場合、不動産仲介業者にも責任が生じる可能性があります。不動産仲介業者はプロとして、物件の欠陥を調査して当事者へ説明すべき義務を負います。それにもかかわらず調査や説明を怠ると、不動産仲介業者には債務不履行責任や不法行為責任が発生するのです。
地中に想定していない埋設物が発見されたとき、買主は不動産仲介業者にも損害賠償請求できる可能性があります。
不動産仲介業者が地中埋設物に関して説明義務違反となる場合
不動産仲介業者は具体的にどういったケースで地中埋設物に関して調査義務や説明義務を負うのでしょうか?以下でみてみましょう。
実際に地中埋設物の存在を認識していた場合、不動産媒介業者は当事者へその内容を説明しなければなりません。
実際に地中埋設物があるかどうか定かでないケースでも、不動産媒介業者が「地中埋設物があるかもしれない」という可能性を認識していたら、当事者に確かめるなどして調査しなければなりません。認識しているにもかかわらず放置してそのまま取引をさせると、調査義務違反、説明義務違反となる可能性があります。
地中にコンクリートガラが埋まっていることが発覚し、買主が売主へ瑕疵担保責任(改正前民法における契約不適合責任類似の責任)を追求した事案です。買主は不動産仲介業者への損害賠償請求も行いました。
裁判所は物件の瑕疵を認めて瑕疵担保責任は一部認容しましたが、不動産仲介会社の調査・説明義務違反までは認めませんでした。
地中に深さ平均1メートルの農業用水路が埋まっていたケースです。買主は売主へ契約解除と損害賠償請求を行い、不動産仲介業者には調査・説明義務違反に基づく損害賠償請求を行いました。
裁判所は農業用水路を土地の瑕疵と認め、瑕疵担保責任を認容するとともに不動産仲介業者の説明義務違反も認めました。
地中埋設物がある場合に契約不適合責任が発生するかどうかには専門的な判断が必要です。迷ったときには弁護士までご相談ください。