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休眠抵当権の弁済証書による抹消とは、休眠抵当権の抵当権者が行方不明で、かつ抵当権者に対して全ての債務を弁済(返済) したことを証明する書類があれば、共同申請ではなく、単独申請で休眠抵当権の抹消ができる方法のことです。
弁済証書を添付しての単独による休眠抵当権の抹消は、不動産登記法第70条第3項前段にて特例として規定されている抵当権の抹消方法で、以下の条文で規定されています。
不動産登記法第70条第1項と第3項前段
第70条
1 登記権利者は、登記義務者の所在が知れないため登記義務者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないときは、非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第九十九条に規定する公示催告の申立てをすることができる。
3 第一項に規定する場合において、登記権利者が先取特権、質権又は抵当権の被担保債権が消滅したことを証する情報として政令で定めるものを提供したときは、第六十条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独でそれらの権利に関する登記の抹消を申請することができる。
引用元:e-GOV法令検索
このように、不動産登記法第70条によって、休眠抵当権の抵当権者が行方不明で、かつ全ての弁済が完了していることを証明する書類がある場合には、共同による申請ではなく、単独で登記の抹消を行うことができるということを規定してくれているのが、不動産登記法第70条の第3項前段となります。
なお、行方不明である抵当権者に関しては、自然人(個人のこと)でも法人でもどちらであったとしても、行方不明であることを証明することができれば大丈夫です。
弁償証書による抹消が可能かどうかの判断は、抵当権者の所在が不明であることと、弁済が完了していることを、それぞれ証明する書類があるかどうかが最も重要な判断基準となります。
登記義務者の所在が不明であることを証明する書類については、
「【休眠抵当権抹消】行方不明であることの証明とは?」に解説させていただきましたので、そちらをご一読ください。
弁済が完了していることを証明する書類、つまり弁済証書とは、債務が完済されていることを金融機関などが証明する書類のことをいいます。
抵当権解除証書、抵当権放棄証書とも言われていたりします。
抵当権者が行方不明が証明でき、こちらの書類があり、弁済が全て完了していることが証明できていれば、そのままスムーズに休眠抵当権の抹消登記申請を行うことが可能です。
しかし、実際には休眠抵当権はとても古い時代の抵当権ですし、そもそも抵当権者は行方不明ですので、弁済証書が残っていることの方が稀です。
そのため、弁済証書による抹消はほとんど利用されていません。
弁済証書による抹消登記申請の手順に関して、大きく分けて3つとなります。
こちらの手順については「【休眠抵当権抹消】行方不明であることの証明とは?」に解説させていただいておりますので解説は省略しますが、行方不明であることの証明は、自然人(個人)の行方不明か、法人の行方不明かで、行方不明の証明の基準と方法が異なりますので、注意が必要です。
弁済が完了していることを証明する書類とは、債権証書や債権及び最後の2年分の利息、その他の定期金が、完全に完済されているということが証明できるような、受取証書などのことを指しています。
前述しましたが、休眠抵当権はとても古い時代の抵当権ですので、弁済が完了しているかどうかを証明する書類は紛失していることがほとんどです。
抵当権者が行方不明であることの証明書類と、弁済が完了していることを証明する書類が準備できたら、登記申請を行います。
休眠抵当権の抹消登記申請を行うことができるのは、所有権をもっている登記名義人です。
相続を行うなどで、物件についている休眠抵当権を抹消しようとする時は、必ず先に相続登記を完了させてから抹消登記申請を行います。
登記申請書は添付書類と共に、管轄の法務局に提出します。
登記申請書の用紙は法務局のウェブサイト「不動産登記の申請書様式について」からダウンロードが可能です。
申請にかかる時間については、書類さえ整えば一般的な抹消登記申請と変わりません。
書類が受理されてから審査を経て、書類の不備などが無ければ、およそ1日~10日程度で抹消登記申請は完了します。
ただ、期間は管轄の法務局によって異なりますので、気になる方は法務局への確認を行いましょう。
申請にかかる時間とは別に、抵当権者が行方不明であることの証明書類を集める時間や、弁済が完了していることを証明する書類を集める時間は別途かかりますので、その時間も考慮しておく必要があります。
費用に関しては法務局へ支払う登録免許税や、郵送代がかかるので、通常は数千円かかります。
別途、弁護士や司法書士に依頼をする場合は、手数料として別途数万円かかってきます。
いかがでしたでしょうか。
弁済証書による休眠抵当権抹消登記申請は、必要書類さえ整えば、比較的スムーズに申請までできる方法になります。
一方で休眠抵当権で弁済証書があるケースがほとんどありませんので、もし弁済証書が残っていれば運が良いですし、無くてもその他の抹消方法を選ぶことができます。
休眠抵当権のパターンと、それぞれの休眠抵当権抹消の対応方法については、「休眠抵当権の確認と抵当権抹消の対応方法について」に解説させていただきましたので、そちらを是非ご一読ください。
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