宅建業免許が必要な場合とは?具体的な取引類型や判断基準を解説

宅建業免許が必要な場合とは?具体的な取引類型や判断基準を解説

宅地建物取引業を行う際には、管轄の行政庁に対して、宅建業免許の申請を行い、宅建業免許を取得する必要があります。「不動産業=宅地建物取引業」ではありませんので、不動産取引のなかには、宅建業免許がなくても行えるものもあります。そのため、不動産業者としては、宅建業免許が必要な場合とそうでない場合をしっかりと理解しておくことが大切です。

今回は、具体的な取引類型や判断基準に基づいて、宅建業免許が必要な場合とそうでない場合をわかりやすく解説します。
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1、宅地建物取引業とは


弁護士
荒川 香遥
そもそも「宅地建物取引業」とは、どのような取引なのでしょうか。まずは、宅地建物取引業の概要と不動産業との違いをみていきましょう。

(1)宅地建物取引業の概要

宅地建物取引業とは、宅地建物取引業法に基づき宅地や建物の売買または交換などを行うことをいいます。土地や建物は、高額で取引されますので、宅地建物取引業を免許制にすることで、購入者の保護事業者の不正防止を図っています。

そのため、不動産業のなかでも宅地建物取引業を行う場合には、必ず宅建業免許を取得する必要があります。

なお、宅建業免許を取得するためには、主たる事務所のある都道府県に申請を行い、都道府県知事の承認を得る必要があります。2つ以上の都道府県にまたがって事務所を置く場合には、主たる事務所のある都道府県を管轄する地方整備局長などに申請を行い、国土交通大臣の承認を得る必要があります。

(2)宅地建物取引業と不動産業の違い

一般的には「宅地建物取引業=不動産業」という認識を持っている方が多いですが、厳密にいえば両者は異なる業務になります。

簡単にいえば、不動産業のなかに宅地建物取引業が含まれているイメージになりますので、宅建業免許がなくても行うことができる不動産取引も存在します。これから不動産業を行うことを検討しているという方は、宅建業免許が必要な場合にあたるかどうかをしっかりと理解しておくことが大切です。

2、宅建業免許が必要となる取引と不要な取引


弁護士
荒川 香遥
宅建業免許が必要となるのはどのような取引なのでしょうか。以下では、宅建業免許が必要となる取引と不要な取引についてみていきましょう。

(1)宅建業免許が必要となる取引

宅建業免許が必要になるのは、業として、以下のような不動産の取引を行う場合です。「業として行う」場合の基準については、後述しますので、以下では具体的な取引類型を説明します。

①宅地または建物の売買

宅地または建物の売買を行う場合には、宅建業免許が必要となります。売買とは、民法555条が規定する取引類型であり、売主が買主に対して、宅地または建物の所有権を移転し、これと引換えに代金の支払いを約する契約が売買契約にあたります。

なお、宅建業免許が必要になるのは、不動産業者が売主になる場合だけでなく、買主になる場合も含まれます。

②宅地または建物の交換

宅地または建物の交換を行う場合には、宅建業免許が必要になります。交換とは、民法586条が規定する取引類型であり、当事者が金銭以外の財産権である宅地または建物の所有権を移転することを約する契約が交換契約にあたります。

③宅地または建物の売買、交換または貸借の代理

宅地または建物の売買、交換または貸借の「代理」を行う場合には、宅建業免許が必要になります。売買および交換は、既に説明したとおりですが、貸借には、無償で宅地建物を使用収益する使用貸借(民法593条)と賃料を支払って宅地建物を使用収益する賃貸借(民法601条)が含まれます。

④宅地または建物の売買、交換または貸借の媒介

宅地または建物の売買、交換または貸借の「媒介」を行う場合には、宅建業免許が必要になります。

媒介とは、契約当事者の委託を受けて、両者の間に立ち売買、交換、貸借の契約成立に向けてあっせん尽力する事実行為をいいます。

(2)宅建業免許が不要な取引

以下のような取引については、宅地建物取引業には該当しませんので、宅建業免許は不要です。

①宅地または建物の貸借

宅地または建物の貸借を行う場合には、宅建業免許は不要です。貸借に関して宅建業免許が必要になるのは、「貸借の代理」または「貸借の媒介」だけですので、不動産業者が自ら保有する賃貸物件を賃貸に出したとしても宅地建物取引業にはあたりません。

そのため、不動産賃貸業務をメインで行う不動産業者に関しては、宅建業免許を取得することなく、取引を行うことが可能です。

②宅地の造成または建物の建築

宅地の造成や建物の建築は、宅地建物取引業には該当しませんので、宅建業免許は不要です。

ただし、建設工事の業務を行うためには、軽微な建設工事を除いて、建設業法3条の建設業の許可が必要になりますので注意が必要です。

なお、建設業者が建物の建設を行い、それを販売する行為は、宅地または建物の売買に該当しますので、宅建業免許が必要になります。

③不動産管理(サブリース)

賃貸不動産の管理やマンションの管理については、宅地建物取引業には該当しませんので、宅建業免許は不要です。また、賃貸物件のオーナーから賃貸物件を一括して賃借して転貸するサブリースについても、宅地建物取引業には該当しませんので、宅建業免許は不要です。

ただし、不動産賃貸管理業では、賃貸不動産の貸借の媒介や代理を行うこともありますので、その場合には、宅建業免許が必要になります。

④民泊

住宅の全部または一部を活用して、旅行者などに宿泊サービスを提供することを「民泊」といいます。民泊は、宅地建物取引業には該当しませんので、宅建業免許は不要です。

ただし、民泊業を営むためには、旅館業法上の許可または住宅宿泊事業法上の登録を受ける必要がありますので注意が必要です。

3、宅建業を「業として行う」ことの判断基準


弁護士
荒川 香遥
2章で説明した取引類型を「業として行う」場合に宅建業免許が必要になります。「業として行う」とは、宅地建物の取引を社会通念上事業の遂行とみることができる程度に行うことをいいます。その判断は、以下の要素に基づいて総合的に判断されます。

(1)取引の対象者

広く一般の人を対象として取引を行おうとするものについては事業性が高く、取引の当事者に特定の関係が認められるものについては事業性が低いです。

なお、特定の関係とは、親族間、隣接する土地所有者などの代替が容易でないものをいいます。

(2)取引の目的

取引の目的が利益を目的とするものについては事業性が高く、特定の資金需要の充足を目的とするものについては事業性が低いです。

特定の資金需要の例としては、相続税の納税、住み替えに伴う既存住宅の処分など利益を得るためにおこなうものではないものが挙げられます。

(3)取引対象物件の取得経緯

転売するために取得した物件の取引は事業性が高く、相続または自ら使用するために取得した物件の取引は事業性が低いです。

自ら使用するために取得した物件の例としては、個人の居住用の住宅、事業者の事業所、工場、社宅などの宅地建物が挙げられます。

(4)取引の態様

自ら購入者を募り一般消費者に直接販売しようとするものについては事業性が高く、宅地建物取引業者に代理または媒介を依頼して販売しようとするものについては事業性が低いです。

(5)取引の反復継続性

反復継続的に取引を行おうとするものについては事業性が高く、1回限りの取引として行おうとするものについては事業性が低いです。

なお、反復継続性の有無は、現在の状況のみならず過去の行為や将来の行為の予定、その蓋然性も含めて判断します。また、1回の販売行為として行われるものであっても、区画割りして宅地の販売をするなど複数の人に対して行われるものについては、反復継続的な取引に該当します。

4、無免許で宅建業を営んだ場合の罰則


弁護士
荒川 香遥
宅建業免許を受けることなく宅地建物取引業を行った場合、どのような罰則が科されるのでしょうか。以下で詳しくみていきましょう。

宅地建物取引業を無免許で行うことは、宅地建物取引業法の免許制度の根幹を揺るがす重大な違反行為になります。そのため、宅建業免許を受けることなく無免許で宅地建物取引企業を営んだ場合には、宅地建物取引業法違反として、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはこれらの併科という罰則が科されます。

なお、無免許には、宅建業免許の申請を行っていない者だけでなく、以下の者も含まれます。
表

5、まとめ


弁護士
荒川 香遥
不動産業の中には宅建業免許がなければ行えない業務もあります。宅地建物取引業に該当するかどうか曖昧な業務もありますので、正確に判断するためにもまずは弁護士に相談することをおすすめします。

宅地建物取引業法では、不動産の購入者の保護と事業者の不正防止を図る目的で、一定引類型に該当する不動産取引については、宅建業免許が必要であるとしています。「不動産業=宅地建物取引業」ではありませんので、不動産業営む方は、どのような取引類型が宅地建物取引業に該当するのかをしっかりと理解し、無免許営業にならないように注意が必要です。

もっとも、「業として行う」の判断に関しては、さまざまな要素を踏まえての総合判断になりますので、正確に判断するのが難しいという場合には、専門家である弁護士に相談するのがおすすめです。不動産業に詳しい弁護士をお探しの方は、ダーウィン法律事務所までお気軽にご相談ください。

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この記事を監修した弁護士

荒川香遥
  • 弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士

    荒川 香遥

    ■東京弁護士会
    ■不動産法学会

    相続、不動産、宗教法務に深く精通しております。全国的にも珍しい公正証書遺言の無効判決を獲得するなど、相続案件について豊富な経験を有しております。また、自身も僧籍を有し、宗教法人法務にも精通しておりますので、相続の周辺業務であるお墓に関する問題も専門的に対応可能です。

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