仲介業者は、不動産の売買または交換の媒介・代理、貸借の媒介・代理をした場合、媒介報酬を請求することができます。不動産仲介業者にとっては、媒介報酬は、主要な収入源の一つですので、可能な限り多くの報酬を得たいと考えるのも当然です。
しかし、媒介報酬には、法律上の規制がありますので、過剰な報酬を請求・受領すると、刑事罰や行政処分を受けるリスクがありますので注意が必要です。また、2024年7月1日から空き家の媒介報酬に関する重要な改正法が施行されていますので、仲介業者の方は、その内容をしっかりと理解しておくことが大切です。
今回は、仲介事業者に向けて、媒介報酬に関する法規制と違反した場合の効果について、不動産問題に詳しい弁護士が解説します。
目次

宅地建物取引業法では、宅地建物取引業者の媒介により売買・交換・貸借が成立した場合に、依頼者から受け取ることができる報酬(媒介報酬)の上限が定められています。
報酬額は、本来であれば当事者間で自由に定めることができるものですが、宅地建物取引業は国民生活との関係が深く、業務の適正な運営と取引の公正確保を図る必要があることから、法律により報酬額の上限が設けられているのです。
具体的な媒介報酬の上限は、宅地建物取引業法46条に基づき、国土交通大臣が告示(報酬告示)により定めています。
報酬告示では、宅地建物取引業者が受け取ることができる媒介報酬の最高額が定められています。具体的な媒介報酬は、媒介契約で定めることになりますが、報酬告示の上限額までの範囲であれば自由に合意することができます。
消費税が課税される宅地建物取引業者が売買の媒介に関して依頼者から受けることができる報酬の額は、依頼者の一方について、当該売買に係る代金の額につき、以下の金額区分ごとの割合を乗じて得た金額を合計した金額以内にしなければなりません。

なお、交換の媒介の場合には、「売買代金額」で計算するのではなく、交換に係る宅地建物の価額で計算します。また、宅地建物取引業者が売主・買主双方の依頼を受けて媒介を行った場合には、宅地建物取引業者は、売主・買主双方から媒介報酬をもらうことができます。
消費税が課税される宅地建物取引業者が売買または交換の代理に関して依頼者から受けることができる報酬の額は、①の計算方法により算出した金額の2倍以内にしなければなりません。
消費税が課税される宅地建物取引業者が貸借の媒介に関して依頼者から受けることができる報酬の額の合計額は、借賃の1か月分の1.1倍に相当する金額以内にしなければなりません。
ただし、依頼を受けたのが居住の用に供する建物の賃貸借の媒介である場合には、依頼者の一方から受けることのできる報酬額は、当該媒介の依頼を受けるにあたり当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の1か月分の0.55倍に相当する金額以内にしなければなりません。
消費税が課税される宅地建物取引業者が貸借の媒介に関して依頼者から受けることができる報酬の額は、借賃の1か月分の1.1倍に相当する金額以内にしなければなりません。
借地契約やオフィスビルの賃貸借契約では、賃料とは別に権利金が授受される場合があります。このような場合について報酬告示は、宅地または建物の賃貸借で権利金の授受があるものの代理または媒介に関して依頼者から受ける報酬の額は、③④の基準ではなく、当該権利金の額を売買の代金の額とみなして、①②の基準により算定された金額が上限になります。

空き家等の流通促進が喫緊の課題になっていますが、宅地建物取引業者が空き家等を取り扱うにはビジネス上の課題があることから、積極的に空き家等の媒介を行う業者は少数でした。
従来の報酬告示では、売買の場合、売買価額に応じて一定の割合を乗じたものが媒介報酬の上限とされていましたが、老朽化し売却価額が低い空き家等では、宅地建物取引事業者が得られる報酬が少なく、コストに見合わないと判断される結果、取引が進みにくい状況が発生していました。
そこで、このような状況を改善するために空き家等に係る媒介報酬規制の見直しが行われました。
空き家等に係る媒介報酬規制の見直しに関する具体的な内容は、以下のとおりです。
売買取引に関して依頼者の一方から受け取ることができる報酬額は、物件価格に応じて、一定の割合を乗じて得た金額を合計した金額以内とするのが原則です。
しかし、物件価格が800万円以下の低廉な空き家等の売買の媒介については、当該媒介に要する費用などを勘案し、例外的に30万円の1.1倍までの報酬を受領することができます。
なお、報酬告示上は、「空き家等」との表現が用いられていますが、物件価額が800万円以下であることが重要であり、必ずしも空き家である必要はありません。
賃貸借取引に関して依頼者の双方から受け取ることができる報酬額の合計は、1か月分の借賃の1.1倍に相当する金額以内にしなければならないのが原則です。
しかし、現に長期間使用されておらず、または将来にわたり使用の見込みがない宅地建物(長期の空き家等)については、当該媒介に要する費用などを勘案し、貸主である依頼者から1か月分の借賃の2.2倍に相当する金額まで報酬を受領することができます。
なお、現に入居者の募集を行っている賃貸住宅の空き室は、長期の空き家等には該当しませんので、通常の媒介報酬規制が適用されます。

宅地建物取引業者が宅地建物取引業法に違反して、報酬告示の限度を超えて報酬を受けた場合、100万円以下の罰金が科されます。
また、両罰規定がありますので、行為者だけではなく、法人や個人事業主も罰金刑に処せられます。
宅地建物取引業者が宅地建物取引業法に違反して、報酬告示の限度を超えて報酬を受けた場合、以下のような行政処分が科される可能性があります。

報酬告示に違反して報酬を受けた場合には、上記のように刑事罰や行政処分の対象になりますが、当事者間で締結した報酬合意の効力はどうなるのでしょうか。
これについて裁判所は、「宅地建物取引の仲介報酬契約のうち告示所定の額を超える部分の実体的効力を否定し、右契約の実体上の効力を所定最高額の範囲に制限し、これによって一般大衆を保護する趣旨をも含んでいると解すべきであるから、同条項は強行法規で、所定最高額を超える契約部分は無効であると解するのが相当である」と判断しています。
すなわち、宅地建物取引業者が報酬告示の定める限度額を超える報酬の合意をしても、限度額を超過する部分は無効になりますので、すでに受領している場合は、依頼者に超過部分を返還しなければなりません。

媒介報酬は、仲介事業者にとって重要な収入源の一つになりますので、媒介報酬に関してトラブルが生じると、貴重な収入源を失ってしまう可能性があります。誤った対応をするとトラブルが深刻化してしまい、解決困難な状態になってしまいますので、そうなる前に弁護士に相談するようにしましょう。
弁護士に相談することで、媒介報酬に関するトラブルの解決方法をアドバイスしてもらうことができますので、それにより迅速にトラブルを解決できる可能性が高くなります。
当事者同士の交渉では、お互いに感情的になってしまい、事案によっては口論に発展するケースも珍しくありません。そうなってしまうと、本題である媒介報酬のトラブルの話し合いをすることができず、報酬の支払いがどんどん先延ばしになってしまいます。
弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人として相手方との交渉を担当できますので、自分たちで対応するのが難しいと感じるときは、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。弁護士なら法的観点から適切に問題を解決に導いてくれますので、交渉にかかる時間や労力を大幅に減らすことができます。
媒介報酬に関するトラブルが生じたときに弁護士に依頼することもできますが、顧問弁護士を利用すれば、トラブルの予防にも対応することができます。
トラブルが発生してからでは、弁護士が介入したとしても解決までにある程度の時間を要しますので、仲介事業者としては、トラブルを予防するという視点が重要です。顧問弁護士がいれば、いつでも気軽に相談ができ、法的リスクのある事項については事前に指摘してもらえますので、トラブル予防の効果が期待できるでしょう。
媒介報酬には、法律上、上限額が設けられていますので、その範囲内で報酬の合意をしなければなりません。特に、空き家等の媒介報酬については、2024年7月から重要な改正内容を含む改正法が施行されていますので、仲介事業者としては、しっかりと理解しておくようにしましょう。
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