不動産の購入は、多くの人にとって人生で一度きりの大きな決断になります。他方、不動産には、法律上さまざまな規制がありますので、それらを正確に理解していなければ、希望どおりの不動産の利用や処分ができずにトラブルになることがあります。
不動産仲介業者は、このような不動産の購入に携わることから、売主や買主から責任追及されるケースも少なくありません。法的責任追及を回避し、また、法的責任追及に適切に対応していくためにも、顧問弁護士の利用がおすすめです。
今回は、不動産取引における仲介業者の法的責任と顧問弁護士の役割について、不動産問題に詳しい弁護士が解説します。
目次
不動産仲介業者とは、不動産の売主と買主の間に立って、不動産の売買契約などの成立をサポートする専門家です。不動産仲介業者の業務には、以下のようなものがあります。
不動産は、法的な規制も多岐にわたりますので、不動産の売主および買主との間にはさまざまなトラブルが生じることがあります。不動産取引に関与した仲介業者も売主や買主から責任追及をされる可能性がありますので、法的リスクをしっかりと理解した上で、取引を進めていくことが求められます。
不動産仲介業者が負う法的責任は、基本的には、仲介契約が成立後に発生するものになります。ただし、例外的に、不動産仲介業者は、一定の要件のもとでは、仲介契約締結前の段階においても相手方の合理的な信頼を裏切らないよう、誠実に行動する義務があるとされています。
たとえば、将来の見込み客の相談に対応する場合やコンサルティング業務を行うケースでは、仲介契約締結前でも法的責任が問われるリスクがあります。そのため、相手に対する助言内容や対応については、十分に注意する必要があります。
仲介契約成立後は、不動産仲介業者にさまざまな法的責任が生じますので、契約の当事者から責任追及をされないよう注意して行動するようにしましょう。
仲介業者に生じる可能性のある法的責任としては、以下のようなものがあります。
仲介業者は、宅地建物取引業法35条1項により、売買契約上の重要な事項に関して、重要事項説明書を交付して説明する義務が課されています。また、宅地建物取引業法35条1項に明示されている事項以外でも、当事者にとって重要な意義を有する事項については、同様に調査・説明義務が課されています。
仲介業者がこのような調査・説明義務を怠ったために、取引の当事者に損害を与えた場合には、調査・説明義務違反を理由に損害賠償請求をされるリスクがあります。ただし、仲介業者が、当該物件に関するあらゆる事実を調査して、説明しなければならないというわけではありません。このような義務に違反するのは、仲介業者が知っていた事実または容易にすることができた事実を告げなかった場合に限られるといえます。
仲介業者は、宅地建物取引業法35条1項により、取引対象となった物件の法令に関する調査・説明義務が課されています。物件に関する調査・説明義務と同様に、宅地建物取引業法35条1項記載の法令だけでなく、物件の利用目的に影響を与える可能性のある法令については、しっかりと調査し、当事者に説明しなければなりません。
たとえば、借主が飲食店用店舗を探している場合、当該物件で飲食店の開業が可能であるかどうかについて、条例なども含めて調査し、説明する必要があります。これを怠り借主が借りた店舗において飲食店の開業ができない事態になった場合は、損害賠償請求をされるリスクがあります。
不動産に関する契約手続きの終了により、不動産仲介業者の仲介業務も終了します。そのため、基本的には、仲介業務終了後に生じた事由により、不動産仲介業者が法的責任を問われることはありません。
ただし、仲介業務に注意義務違反があり、それが仲介業務終了後に顕在化したような場合には、仲介業者の法的責任を問われる可能性がありますので注意が必要です。
区分所有建物とは、建物が構造上区分され、独立して住居・店舗・事務所などの用途に使用できる建物を言います。代表的なものとしては、分譲マンションやオフィスビルなどが挙げられます。
このような区分所有建物の仲介業務を行う場合には、重要事項説明として、以下のような事項を説明する必要があります。
・管理規約による専有部分の利用方法などの制約
・計画修繕積立金、管理費用の特別徴収
これらの説明にあたっては、規約の調査などが必要になりますが、売主の手元にある管理規約が最新のものであるとは限りません。そのため、仲介業者としては、管理組合に確認するなどして最新の規約内容を調査しなければなりません。
定期建物賃貸借契約は、期間満了により契約が終了しますので、引き続き同一の物件を賃借するには「再契約」が必要になります。
定期借家契約の再契約は、通常の借家契約の更新とは異なり、新規の契約として扱われますので、改めて重要事項説明、定期借家であることの説明、公正証書による契約書の作成などの手続きが必要になります。不動産仲介業者が定期借家契約の再契約に関与する場合、新規契約と同様の厳格な手続きが必要になりますので、これを怠ると、借主側から善管注意義務違反を理由として損害賠償請求をされるリスクがあります。
不動産仲介業者が取り扱う不動産には、さまざまな法規制がありますので、正確に理解しておかなければ仲介契約の当事者から法的責任を追及されるリスクがあります。
顧問弁護士がいれば、いつでも気軽に相談をすることができますので、法的トラブルが顕在化する前に予防することが可能です。法的トラブルが生じるとその対応のために、時間や手間がかかりますので、本業にも支障が生じてしまいます。このようなリスクを回避するためにも、顧問弁護士の利用がおすすめです。
顧問弁護士がいれば不動産売買契約書や重要事項説明書の作成にあたって、法的観点から内容に問題がないかをチェックしてもらうことができます。不動産取引にはさまざまな法律や規制が絡んでいますので、専門的な知識がなければ適切な契約書の作成は困難です。
定型的な契約書ばかりを使用していると、万が一のときに不利益を被るおそれがありますので、顧問弁護士によるリーガルチェックを受けるようにしましょう。
顧問弁護士は、仲介業者に生じるトラブルの予防だけでなく、実際にトラブルが生じた場合の対応も行うことができます。
顧問先企業のトラブルについては、優先的に対応してもらうことができますので、迅速に解決することが可能です。また、顧問弁護士にトラブルの相手方との対応を任せることができますので、仲介業者に生じる負担を大幅に軽減することができます。
トラブルが生じたときの対応を誤ると、さらに深刻なトラブルへと発展するおそれもありますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
不動産の売買や賃貸の仲介では、調査・説明が不十分などの理由で仲介業者の法的責任が問われることがあります。このような法的責任追及を回避し、対応するためには、弁護士のサポートが必要になります。不動産仲介業者に顧問弁護士がいれば、トラブル対応だけでなく、トラブルの予防にも対応することができますので、まだ顧問弁護士がいないという不動産業者は、積極的に顧問弁護士の利用をご検討ください。
不動産業に詳しい弁護士をお探しの方は、ダーウィン法律事務所までお気軽にご相談ください。
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