不動産会社の広告では、「駅徒歩〇分」「好立地」「初期費用が安い」など、消費者の目を引く表現が数多く用いられています。しかし、その表現が事実と異なっていたり、実際よりも著しく有利・優良に見せていたりすると、不当表示として問題となるおそれがあります。
不当表示は、景品表示法をはじめとする法令違反に該当し、行政指導や課徴金、業務停止処分など経営に重大な影響を及ぼすリスクを伴います。
特に不動産業界では、広告内容と実際の物件条件とのわずかなズレが、「優良誤認表示」や「有利誤認表示」「おとり広告」と判断されやすく、意図せず違反に該当してしまうケースも少なくありません。また、近年はインターネット広告やポータルサイト掲載をめぐる監視も強化されており、不当表示に対する行政のチェックは一層厳しくなっています。
今回は、不動産会社が注意すべき不当表示の種類や実際に問題となりやすい広告違反の具体例を整理したうえで、不当表示を行った場合の法的リスクや未然に防ぐためのポイントについて解説します。
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優良誤認表示とは、実際よりも著しく優良であると消費者に誤認させる表示をいいます。
不動産広告においては、物件の品質・内容・性能・立地条件などについて、事実と異なる、または誇張した表現を用いることで、優良誤認表示に該当するおそれがあります。
たとえば、老朽化が進んでいるにもかかわらず「築浅」「リノベーション済みで美麗」などと表示したり、周辺環境に大きな制約があるにもかかわらず「住環境良好」「静かな住宅街」などと断定的に記載したりするケースが典型例です。
重要なのは、事実と完全に異なる場合だけでなく、事実の一部のみを強調し、全体として誤解を招く表示も対象となる点です。
有利誤認表示とは、取引条件が実際よりも著しく有利であると誤認させる表示をいいます。
不動産広告では、賃料、管理費、共益費、敷金・礼金、更新料、初期費用などの金銭条件に関する表示が問題となりやすい傾向があります。
たとえば、「家賃〇万円」と強調しながら、実際には高額な管理費や必須オプション費用が別途かかる場合や、「初期費用が安い」と表示しているにもかかわらず、多額の諸費用が発生するケースなどは、有利誤認表示と判断されるリスクがあります。
消費者が広告を見た時点で抱く全体的な印象が基準となるため、細かな注記を入れていても、不当表示とされる可能性がある点には注意が必要です。
優良誤認表示・有利誤認表示以外にも、不動産広告では以下のような不当表示が問題となります。

これらの不当表示は、広告媒体(ポータルサイト、チラシ、自社サイト、SNSなど)を問わず問題となります。次章では、不動産会社が実務上とくに不当表示と判断されやすい具体例について、より詳しく解説します。

立地条件に関する表示は、消費者の物件選択に直結するため、不当表示として問題になりやすい分野です。
典型的なのが、「駅徒歩〇分」という表現です。不動産広告では、徒歩1分=80メートルとして算出するルールがありますが、
といった場合、消費者に誤解を与えるおそれがあります。
また、「好立地」「人気エリア」「利便性抜群」などの抽象的・評価的表現も、周辺環境や交通利便性の実態と乖離している場合には、優良誤認表示と判断される可能性があります。
根拠となる事実がないまま、断定的に良好性を強調する表現には注意が必要です。
金銭条件に関する表示は、有利誤認表示として指摘されやすい典型分野です。
たとえば、以下のようなケースが問題となります。
広告全体を見た消費者が「支払総額が安い」と誤認するような構成になっている場合、細かな注記を入れていても、不当表示と判断されるリスクがあります。
物件の基本情報に関する誤表示も、不当表示の典型例です。
たとえば、
といったケースは、優良誤認表示に該当する可能性があります。
特にインターネット広告では、写真やキャッチコピーによって実態以上に良好な印象を与えてしまい、文章と写真の組み合わせ全体で不当表示と評価されることもあります。
不動産広告において最も問題視されやすいのが、おとり広告です。
おとり広告とは、
を広告に掲載し、来店や問い合わせを誘導する行為をいいます。
「直前で成約になった」「情報更新が間に合わなかった」といった理由であっても、掲載状況や管理体制次第では、不当表示と判断される可能性があります。
悪質と判断された場合には、行政処分の対象となるだけでなく、業界内での信用低下にも直結します。

不動産広告に不当表示が認められた場合、まず問題となるのが行政による対応です。
景品表示法に基づき、消費者庁や都道府県などの行政機関から、指導・助言・措置命令が行われることがあります。
措置命令が出されると、
などが求められます。
特に措置命令は、企業名と違反内容が公表されるため、社会的信用の低下や取引先への影響が避けられません。
不当表示の内容や悪質性によっては、課徴金納付命令が出される可能性があります。
課徴金は、不当表示によって得た売上額を基準として算定されるため、広告件数や取引規模が大きい不動産会社ほど、金額も高額になりやすい点に注意が必要です。
また、不動産会社の場合、景品表示法だけでなく、宅地建物取引業法に基づく処分が併せて行われることもあります。
具体的には、
といった行政処分が科される可能性があり、業務継続そのものが困難になるケースもあります。
不当表示によって消費者が誤認し、損害を被った場合、不動産会社は民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。
たとえば、
といった場合、契約取消しや損害賠償請求が問題となります。
近年では、インターネット広告を通じた集団的なトラブルや、SNSでの拡散をきっかけに、クレームや訴訟が拡大するリスクも高まっています。
不当表示は、通常は行政・民事の問題にとどまりますが、悪質性が高い場合には刑事責任が問われることもあります。
たとえば、
といったケースでは、詐欺罪などの成立が問題となる可能性があります。
刑事事件に発展した場合、代表者や担当者個人が責任を追及されるおそれもあり、企業としてのダメージは極めて大きくなります。

不動産広告を作成・掲載する際には、以下のような点を必ず確認する必要があります。
面積、築年数、設備、費用などの数値情報は、最新かつ正確な情報を基に記載することが重要です。曖昧な推測や過去情報の流用は、不当表示の原因となります。
一部に正確な注記があっても、見出しやキャッチコピーで過度に有利・優良な印象を与えていれば、不当表示と判断される可能性があります。
「必ず」「確実に」「絶対にお得」などの表現は、根拠がなければ使用を避けるべきです。評価的表現を用いる場合には、具体的な事実とセットで記載することが求められます。
不当表示にあたるかどうかは、単語単体ではなく、写真・レイアウト・強調表現を含めた全体で評価される点を意識する必要があります。
不当表示を防ぐためには、個々の担当者の注意だけでなく、組織としてのチェック体制が不可欠です。
具体的には、
などが有効です。
特に、インターネット広告やポータルサイト掲載では、更新頻度が高く、担当者任せになりやすいため、ルール化・仕組み化による管理が重要となります。
不動産会社では、業務分担に応じて注意すべきポイントも異なります。
物件説明や広告文案作成時に、現地確認や資料確認を怠らず、口頭説明と広告内容に齟齬が生じないよう注意が必要です。
成約状況や募集条件の変更を速やかに反映し、成約済み物件が広告に残らないよう管理体制を徹底する必要があります。
集客を優先するあまり、誇張表現や曖昧なキャッチコピーを用いないよう、法令遵守の視点を常に意識することが求められます。
各担当者が役割を理解し、情報共有を徹底することで、不当表示リスクは大きく低減できます。

不当表示トラブルを防ぐうえで最も重要なのが、広告掲載前のリーガルチェックです。
弁護士は、
といった観点から、広告文言やキャッチコピー、注記の内容まで含めて確認します。
自社では問題ないと判断していた表現でも、第三者視点で見るとリスクが高いケースは少なくありません。
事前に弁護士のチェックを受けることで、行政指摘やクレームを未然に防ぐ効果が期待できます。
すでに不当表示の疑いで行政から照会や指摘を受けている場合には、初動対応が極めて重要です。
弁護士は、
などを通じて、不利な評価や重い処分を回避・軽減するための対応を行います。
行政対応を誤ると、措置命令や課徴金、業務停止処分へと発展する可能性があるため、早い段階で専門家が関与することが重要です。
不当表示を理由として、消費者から損害賠償請求や契約解除を求められるケースもあります。
そのような場合、弁護士は以下のようなサポートを行います。
不適切な対応をすると、紛争が長期化したり、SNS等での風評被害につながったりするおそれがあります。
弁護士が窓口となることで、冷静かつ法的に適切な解決を図ることができます。
不動産会社の広告における不当表示は、意図的でなくても景品表示法違反と判断されるおそれがあり、行政処分や課徴金、損害賠償請求など、経営に重大な影響を及ぼすリスクがあります。特に「駅徒歩〇分」「初期費用が安い」といった表現は、消費者の受け取り方次第で不当表示と評価されやすいため、慎重な対応が不可欠です。
こうしたリスクを回避するためには、広告表現を事前にチェックする体制を整え、問題が生じた場合には早期に専門家へ相談することが重要です。ダーウィン法律事務所では、不動産広告の適法性チェックから行政対応、紛争解決まで一貫したサポートを行っています。不当表示に不安がある場合は、早期に専門家へ相談することをおすすめします。
まずご依頼の流れ(必読)をご確認いただき、お電話で相談希望を受付後、担当スタッフ、弁護士から折り返しいたします。
立場を明確にしていただく必要がありますので、ご連絡時、下記情報お伝えください