不動産会社の不当表示とは?よくある広告違反の具体例と法的リスクを弁護士が解説

不動産会社の広告では、「駅徒歩〇分」「好立地」「初期費用が安い」など、消費者の目を引く表現が数多く用いられています。しかし、その表現が事実と異なっていたり、実際よりも著しく有利・優良に見せていたりすると、不当表示として問題となるおそれがあります。

不当表示は、景品表示法をはじめとする法令違反に該当し、行政指導や課徴金、業務停止処分など経営に重大な影響を及ぼすリスクを伴います。

特に不動産業界では、広告内容と実際の物件条件とのわずかなズレが、「優良誤認表示」や「有利誤認表示」「おとり広告」と判断されやすく、意図せず違反に該当してしまうケースも少なくありません。また、近年はインターネット広告やポータルサイト掲載をめぐる監視も強化されており、不当表示に対する行政のチェックは一層厳しくなっています。

今回は、不動産会社が注意すべき不当表示の種類や実際に問題となりやすい広告違反の具体例を整理したうえで、不当表示を行った場合の法的リスクや未然に防ぐためのポイントについて解説します。

1 不動産広告で問題となる主な不当表示の種類


弁護士
荒川 香遥
不動産会社の広告における不当表示は、主に景品表示法に基づいて判断されます。広告の内容が、実際の物件条件や取引条件と比べて、消費者に誤解を与えるような表示である場合、不当表示として違法となる可能性があります。不動産広告で特に問題になりやすい不当表示は、以下の3つに大別されます。

(1)優良誤認表示とは

優良誤認表示とは、実際よりも著しく優良であると消費者に誤認させる表示をいいます。

不動産広告においては、物件の品質・内容・性能・立地条件などについて、事実と異なる、または誇張した表現を用いることで、優良誤認表示に該当するおそれがあります。

たとえば、老朽化が進んでいるにもかかわらず「築浅」「リノベーション済みで美麗」などと表示したり、周辺環境に大きな制約があるにもかかわらず「住環境良好」「静かな住宅街」などと断定的に記載したりするケースが典型例です。

重要なのは、事実と完全に異なる場合だけでなく、事実の一部のみを強調し、全体として誤解を招く表示も対象となる点です

(2)有利誤認表示とは

有利誤認表示とは、取引条件が実際よりも著しく有利であると誤認させる表示をいいます。

不動産広告では、賃料、管理費、共益費、敷金・礼金、更新料、初期費用などの金銭条件に関する表示が問題となりやすい傾向があります。

たとえば、「家賃〇万円」と強調しながら、実際には高額な管理費や必須オプション費用が別途かかる場合や、「初期費用が安い」と表示しているにもかかわらず、多額の諸費用が発生するケースなどは、有利誤認表示と判断されるリスクがあります。

消費者が広告を見た時点で抱く全体的な印象が基準となるため、細かな注記を入れていても、不当表示とされる可能性がある点には注意が必要です

(3)その他の不当表示(おとり広告・虚偽記載など)

優良誤認表示・有利誤認表示以外にも、不動産広告では以下のような不当表示が問題となります。

これらの不当表示は、広告媒体(ポータルサイト、チラシ、自社サイト、SNSなど)を問わず問題となります。次章では、不動産会社が実務上とくに不当表示と判断されやすい具体例について、より詳しく解説します。

2 不動産会社が不当表示と判断されやすい具体例


弁護士
荒川 香遥
不動産広告における不当表示は、明らかな虚偽だけでなく、「一般の消費者がどのように受け取るか」という視点で判断されます。以下では、不動産会社が実務上、特に不当表示と判断されやすい代表的なケースを類型ごとに紹介します。

(1)「駅徒歩〇分」「好立地」など立地条件の誤認

立地条件に関する表示は、消費者の物件選択に直結するため、不当表示として問題になりやすい分野です。

典型的なのが、「駅徒歩〇分」という表現です。不動産広告では、徒歩1分=80メートルとして算出するルールがありますが、

  • ・実際には最短ルートではない
  • ・信号待ちや踏切、坂道などを考慮していない
  • ・駅の出入口ではなく敷地端から測定している

といった場合、消費者に誤解を与えるおそれがあります。

また、「好立地」「人気エリア」「利便性抜群」などの抽象的・評価的表現も、周辺環境や交通利便性の実態と乖離している場合には、優良誤認表示と判断される可能性があります。

根拠となる事実がないまま、断定的に良好性を強調する表現には注意が必要です

(2)賃料・管理費・初期費用の不当表示

金銭条件に関する表示は、有利誤認表示として指摘されやすい典型分野です。

たとえば、以下のようなケースが問題となります。

  • ・賃料のみを強調し、高額な管理費・共益費を目立たない位置に記載している
  • ・「初期費用が安い」と表示しているが、実際には鍵交換費用、クリーニング費用、必須オプション料などが別途発生する
  • ・「礼金なし」と表示しながら、実質的に同額の名目費用を請求している

広告全体を見た消費者が「支払総額が安い」と誤認するような構成になっている場合、細かな注記を入れていても、不当表示と判断されるリスクがあります

(3)面積・築年数・設備内容の虚偽・誇張

物件の基本情報に関する誤表示も、不当表示の典型例です。

たとえば、

  • ・実際より広く見せるために壁芯面積を用いて専有面積として表示している
  • ・大規模修繕や老朽化があるにもかかわらず「築浅」「新築同様」と記載している
  • ・設備が撤去済み、またはオプション扱いであるにもかかわらず「完備」と表示している

といったケースは、優良誤認表示に該当する可能性があります。

特にインターネット広告では、写真やキャッチコピーによって実態以上に良好な印象を与えてしまい、文章と写真の組み合わせ全体で不当表示と評価されることもあります

(4)成約済み物件を掲載するおとり広告

不動産広告において最も問題視されやすいのが、おとり広告です。

おとり広告とは、

  • ・すでに成約済みの物件
  • ・実際には募集していない物件
  • ・当初から紹介する意思のない物件

を広告に掲載し、来店や問い合わせを誘導する行為をいいます。

「直前で成約になった」「情報更新が間に合わなかった」といった理由であっても、掲載状況や管理体制次第では、不当表示と判断される可能性があります

悪質と判断された場合には、行政処分の対象となるだけでなく、業界内での信用低下にも直結します。

3 不動産会社が不当表示を行った場合の法的リスク


弁護士
荒川 香遥
不動産会社が不当表示を行った場合、その影響は単なる広告修正にとどまりません。行政処分・金銭的制裁・民事責任・刑事責任など、複数の法的リスクが重なる可能性があり、企業経営やブランド価値に深刻な影響を及ぼします。

(1)行政指導・措置命令

不動産広告に不当表示が認められた場合、まず問題となるのが行政による対応です。

景品表示法に基づき、消費者庁や都道府県などの行政機関から、指導・助言・措置命令が行われることがあります。

措置命令が出されると、

  • ・不当表示の中止
  • ・再発防止策の実施
  • ・違反内容の公表

などが求められます。

特に措置命令は、企業名と違反内容が公表されるため、社会的信用の低下や取引先への影響が避けられません。

(2)課徴金や業務停止などの処分リスク

不当表示の内容や悪質性によっては、課徴金納付命令が出される可能性があります。

課徴金は、不当表示によって得た売上額を基準として算定されるため、広告件数や取引規模が大きい不動産会社ほど、金額も高額になりやすい点に注意が必要です。

また、不動産会社の場合、景品表示法だけでなく、宅地建物取引業法に基づく処分が併せて行われることもあります。

具体的には、

  • ・指示処分
  • ・業務停止処分
  • ・免許取消処分

といった行政処分が科される可能性があり、業務継続そのものが困難になるケースもあります。

(3)民事上の損害賠償責任

不当表示によって消費者が誤認し、損害を被った場合、不動産会社は民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。

たとえば、

  • ・広告内容を信頼して契約した結果、想定外の費用負担が生じた
  • ・立地や設備の誤表示により、生活上の支障や転居費用が発生した

といった場合、契約取消しや損害賠償請求が問題となります。

近年では、インターネット広告を通じた集団的なトラブルや、SNSでの拡散をきっかけに、クレームや訴訟が拡大するリスクも高まっています。

(4)刑事責任が問題となるケース

不当表示は、通常は行政・民事の問題にとどまりますが、悪質性が高い場合には刑事責任が問われることもあります。

たとえば、

  • ・虚偽の内容を認識したうえで、継続的・組織的に広告を行っていた
  • ・消費者を欺く目的で、意図的に事実と異なる表示をしていた

といったケースでは、詐欺罪などの成立が問題となる可能性があります。

刑事事件に発展した場合、代表者や担当者個人が責任を追及されるおそれもあり、企業としてのダメージは極めて大きくなります。

4 不当表示によるトラブルを防ぐための実務上の注意点


弁護士
荒川 香遥
不動産会社にとって、不当表示トラブルを未然に防ぐことは、法的リスクの回避だけでなく、企業の信頼性維持の観点からも極めて重要です。以下では、広告実務において押さえておくべき具体的な注意点と社内体制整備のポイントを説明します。

(1)広告表現で必ず確認すべきポイント

不動産広告を作成・掲載する際には、以下のような点を必ず確認する必要があります。

①事実に基づいた表現になっているか

面積、築年数、設備、費用などの数値情報は、最新かつ正確な情報を基に記載することが重要です。曖昧な推測や過去情報の流用は、不当表示の原因となります。

②消費者の受け取る全体的な印象に配慮しているか

一部に正確な注記があっても、見出しやキャッチコピーで過度に有利・優良な印象を与えていれば、不当表示と判断される可能性があります。

③断定的・誇張的な表現を用いていないか

「必ず」「確実に」「絶対にお得」などの表現は、根拠がなければ使用を避けるべきです。評価的表現を用いる場合には、具体的な事実とセットで記載することが求められます。

不当表示にあたるかどうかは、単語単体ではなく、写真・レイアウト・強調表現を含めた全体で評価される点を意識する必要があります

(2)社内チェック体制・マニュアル整備の重要性

不当表示を防ぐためには、個々の担当者の注意だけでなく、組織としてのチェック体制が不可欠です。

具体的には、などが有効です。

特に、インターネット広告やポータルサイト掲載では、更新頻度が高く、担当者任せになりやすいため、ルール化・仕組み化による管理が重要となります。

(3)仲介・管理・広告担当者ごとの注意点

不動産会社では、業務分担に応じて注意すべきポイントも異なります。

①仲介担当者

物件説明や広告文案作成時に、現地確認や資料確認を怠らず、口頭説明と広告内容に齟齬が生じないよう注意が必要です。

②管理担当者

成約状況や募集条件の変更を速やかに反映し、成約済み物件が広告に残らないよう管理体制を徹底する必要があります。

③広告・広報担当者

集客を優先するあまり、誇張表現や曖昧なキャッチコピーを用いないよう、法令遵守の視点を常に意識することが求められます。

各担当者が役割を理解し、情報共有を徹底することで、不当表示リスクは大きく低減できます

5 不動産会社の不当表示トラブルで弁護士がサポートできること


弁護士
荒川 香遥
不動産広告に関する不当表示は、違反の有無や悪質性の判断が専門的であり、会社単独で対応するとリスクが拡大するおそれがあります。弁護士に早期に相談することで、違反の予防からトラブル発生後の対応まで、一貫した法的サポートを受けることが可能です。

(1)広告表現のリーガルチェック

不当表示トラブルを防ぐうえで最も重要なのが、広告掲載前のリーガルチェックです。

弁護士は、

  • ・景品表示法・宅地建物取引業法との適合性
  • ・優良誤認・有利誤認に該当するおそれがないか
  • ・消費者に誤解を与える表現になっていないか

といった観点から、広告文言やキャッチコピー、注記の内容まで含めて確認します。

自社では問題ないと判断していた表現でも、第三者視点で見るとリスクが高いケースは少なくありません。

事前に弁護士のチェックを受けることで、行政指摘やクレームを未然に防ぐ効果が期待できます

(2)行政対応・意見書作成

すでに不当表示の疑いで行政から照会や指摘を受けている場合には、初動対応が極めて重要です。

弁護士は、

  • ・行政機関への回答書・意見書の作成
  • ・事実関係や過失の有無の整理
  • ・悪質性がないことを前提とした法的主張の構築

などを通じて、不利な評価や重い処分を回避・軽減するための対応を行います。

行政対応を誤ると、措置命令や課徴金、業務停止処分へと発展する可能性があるため、早い段階で専門家が関与することが重要です

(3)トラブル発生後の示談・訴訟対応

不当表示を理由として、消費者から損害賠償請求や契約解除を求められるケースもあります。

そのような場合、弁護士は以下のようなサポートを行います。

  • ・クレーム・請求内容の法的妥当性の検討
  • ・示談交渉による早期解決のサポート
  • ・訴訟に発展した場合の代理対応

不適切な対応をすると、紛争が長期化したり、SNS等での風評被害につながったりするおそれがあります。

弁護士が窓口となることで、冷静かつ法的に適切な解決を図ることができます

6 まとめ

不動産会社の広告における不当表示は、意図的でなくても景品表示法違反と判断されるおそれがあり、行政処分や課徴金、損害賠償請求など、経営に重大な影響を及ぼすリスクがあります。特に「駅徒歩〇分」「初期費用が安い」といった表現は、消費者の受け取り方次第で不当表示と評価されやすいため、慎重な対応が不可欠です。

こうしたリスクを回避するためには、広告表現を事前にチェックする体制を整え、問題が生じた場合には早期に専門家へ相談することが重要です。ダーウィン法律事務所では、不動産広告の適法性チェックから行政対応、紛争解決まで一貫したサポートを行っています。不当表示に不安がある場合は、早期に専門家へ相談することをおすすめします。

この記事を監修した弁護士

荒川香遥
  • 弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士

    荒川 香遥

    ■東京弁護士会
    ■不動産法学会

    相続、不動産、宗教法務に深く精通しております。全国的にも珍しい公正証書遺言の無効判決を獲得するなど、相続案件について豊富な経験を有しております。また、自身も僧籍を有し、宗教法人法務にも精通しておりますので、相続の周辺業務であるお墓に関する問題も専門的に対応可能です。

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