建築条件付き土地の売買の法規制とトラブルの事例を弁護士が解説

建築条件付き土地の売買の法規制とトラブルの事例を弁護士が解説

建築条件付き土地とは、売主または売主の指定する建設業者を利用して建物を建てることが条件とされている土地です。不動産業者としては、土地の売買だけでなく、請負契約も締結することができるため、多くの利益を上げることができる取引形態といえます。
しかし、建築条件付き土地の売買には、通常の土地の売買とは異なる法規制がありますので、不動産業者としてはそのような法規制をしっかりと把握した上で、売買手続きを進めていく必要があります。
今回は、建築条件付き土地の売買における法規制とトラブルの事例について、わかりやすく解説します。

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1、建築条件付き土地とは?


弁護士
荒川 香遥
建築条件付き土地とは、どのような土地なのでしょうか。以下では、建築条件付き土地の概要とメリット・デメリットについて説明します。

(1)建築条件付き土地とは

建築条件付き土地とは、土地の売買契約において、売主または売主の指定する建設業者との間で当該土地に建築する建物の建築請負契約を締結するという条件が付けられている土地です。建築条件付き土地は、以下のような条件を付けて売り出されるのが一般的です。
・売主または売主が指定した建設会社との間で建築請負契約を締結する
・一定期間内に建築請負契約を締結する
このような建築条件付き土地には、建物請負契約が成立した場合に土地売買契約が成立する「停止条件付土地売買契約」と建物請負契約が成立しなかった場合には土地売買契約が解除される「解除条件付土地売買契約」の2種類があります。いずれの契約でも売買契約の対象となるのは土地であり、建物は売買契約の対象外です。

(2)建築条件付き土地のメリット・デメリット

建築条件付きの土地の売買には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

①建築条件付き土地の売買のメリット

建築条件付き土地は、建築条件が付いている分、条件のない土地と比べて価格が割安になっているというメリットがあります。また、施工会社が決まっているものの、建売住宅とは違い、間取りや内装などをある程度自由に決めることができます。
不動産業者としても土地と建物のセットで利益が見込めますので、土地の価格を多少割り引いたとしても十分な利益を得ることができるでしょう。

②建築条件付き土地の売買のデメリット

建築条件付き土地の売買では、売買契約成立から一定期間内に建築請負契約を締結することが条件になっています。その期間としては、3か月程度が一般的で、非常にタイトなスケジュールの中で建物の打ち合わせを進めなければならないというデメリットがあります。
また、建物の施工会社が決まっているため、施工会社が用意する商品やプランの中には希望のものがないというケースも少なくありません。
建物の建築費用について、他の施工会社と相見積もりをとることができないため、建築費用が高くつくというデメリットもあります。

2、建築条件付き土地に関する法規制


弁護士
荒川 香遥
建築条件付き土地の売買に関しては、どのような法規制があるのでしょうか。以下では、建築条件付き土地に関する法規制を説明します。

(1)宅建業法の規制

建築条件付き土地の売買に関して、宅建業法との関係で把握しておくべき規制としては、以下のようなものがあります。

①宅建業法35条1項8号

宅建業法35条1項8号では、「契約の解除に関する事項」を重要事項説明の対象として定めています。
宅地建物取引業者が関与する取引において、建築条件付き土地の売買契約を締結する場合においては、以下の事項を説明する必要があります。
・建物の工事請負契約の成否が土地の売買契約の成立または解除条件である旨
・工事請負契約が締結された後に土地売買契約を解除する際は、買主は手付金を放棄することになる旨
なお、買主と建設業者との間で予算、設計内容、期間などの協議が十分に行われていないまま、建築条件付き土地売買契約の締結と工事請負契約の締結が同日または短期間のうちに行われることは、紛争のリスクになりやすく、青田売り規制の脱法行為となるリスクがあるため、原則として行うべきではないとされています。

②宅建業法37条1項9号

宅地建物取引業者は、自ら売主として売買契約を締結した場合には相手方に、媒介業務・代理業務を行って売買契約を締結させた場合には各当事者に、宅建業法37条所定の事項を記載した書面を交付しなければなりません。
建築条件付き土地の売買契約を締結する場合には、重要事項説明書と同様に、契約の解除に関する定めを宅建業法37条に基づく書面に記載しなければなりません。

(2)不動産公正競争規約の規制

不動産公正競争規約は、建築条件付き土地と建売住宅の売買契約との誤認を防止する観点から、建築条件付き土地の売買契約の表示についての広告規制を行っています。
建売住宅については建築確認などを受けた後でなければ広告することができませんが、建築条件付き土地の売買については、不動産公正競争規約6条が定める以下の事項を明示している場合に限り、建物について広告することが認められています。

なお、上記の表示が行われていない建築条件付き土地売買の広告は、景品表示法上の不当な表示に該当し、宅建業法上も誇大広告に該当することになりますので注意が必要です。

3、建築条件付き土地の売買でトラブルになった裁判例


弁護士
荒川 香遥
以下では、建築条件付き土地の売買に関してトラブルになった実際の裁判例を紹介します。

(1)神戸地裁平成15年4月17日判決

【事案の概要】

買主は、建築条件付き土地の売買契約を締結し、同日、売主との間で建築請負契約を締結し、手付金を交付しました。その後、建築確認を受けた後に、建築条件付き土地の売買契約と建築請負契約を合意解除し、土地建物の売買契約に一本化した新たな契約を締結しました。
しかし、買主と売主との間では、設計についての食い違いなどから信頼関係が失われ、買主は、本件契約を解除して、手付金の返還と違約金の支払いを請求しました。これに対して、売主は、残代金の不払いを理由に契約を解除し、違約金の支払いを請求しています。

【裁判所の判断】

裁判所は、売主側には、契約解除の理由となる説明義務違反や誠実義務違反はなかったとして、買主の請求を棄却し、買主に対して違約金の支払いを命じました。
この裁判では、売主と買主との間の一連の取引は、契約締結の時期の制限に直接に違反するものではなく、建築条件付き土地の売買契約と建築請負契約を合意解除し、土地建物の売買契約に一本化することは違法行為とはいえないと判断しています。

(2)名古屋高裁平成15年2月5日判決

【事案の概要】

買主は、土地売買契約締結と同時に売主が用意していた標準プランでの建物請負契約(工事価格2000万円)を締結したところ、結局建物建築には至りませんでした。
売主が住宅情報誌に掲載した広告には、「3か月以内に建築しないことが確定したとき、あるいは建築請負契約が成立しない場合は白紙解除となります」との内容が記載されていました。しかし、売買契約では、「買主は本契約締結後3か月以内に住宅建築請負契約を締結するものとする」と記載されているだけであり、広告文言の条項は記載されていませんでした。
買主は、本件売買契約は、建築条件付き土地売買であり広告文言の内容も合意されていることおよび売買契約と同時に締結した建物請負契約は建築条件の対象となる建物請負契約ではないので、売買契約は白紙撤回されたとして、売主に対して、手付金の返還を求めました。

【裁判所の判断】

裁判所は、以下のような理由から、手付金の返還を認めた原審の判断を維持し、売主の控訴を棄却しました。
・本件は、建築条件付き宅地分譲であるところ、本件広告の文言は、独占禁止法に抵触しないために顧客を保護する重要な意義を有するものであり、本件土地売買契約の契約書に明記されていないとしても、本件土地売買契約の契約内容となっているとみるべきである
・買主は5000万円ないし6000万円の建物請負契約を予定していて、売主もグレードを上げた設備にして建坪も増加していたため、本件請負契約は、売主も買主も契約としての拘束力を予定していなかったものであり、設計契約の点を除き、本件建物契約は意味のないものであって、もし仮に売主が本件広告文言の適用をさけることを意図して本件建物契約締結に至ったのであれば、詐欺的行為と言わざるを得ない

4、建築条件付き土地の売買のトラブルは弁護士に相談を


弁護士
荒川 香遥
建築条件付き土地の売買に関してトラブルが生じたときは、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。

(1)法規制とその対処法をアドバイスできる

建築条件付き土地の売買にあたっては、宅建業法や不動産公正競争規約などの法規制がありますので、それらを理解した上で売買手続きを進めていかなければなりません。
建築条件付き土地の売買にあたって法令違反があると、業務停止などの厳しい行政処分が下されるリスクもありますので、不安があるときは弁護士に相談をするのがおすすめです。
不動産取引に詳しい弁護士であれば、建築条件付き土地の売買契約に関する法規制についてアドバイスしてもらうことができますので、それにしたがって取引を進めれば、法令違反になる心配はありません。

(2)代理人としてトラブルの相手方と交渉できる

建築条件付き土地の売買契約でトラブルが生じたときは、取引の相手と直接交渉をして解決に向けた話し合いを進めていかなければなりません。
しかし、トラブルの解決に向けた交渉に社内の貴重な人材を割かなければならなくなると、本業に支障が生じてしまうおそれもあります。また、不動産取引は、金額も高額になるため、誤った対応をすると莫大な損害が生じるおそれもあります。
そのため、取引相手とトラブルが生じたときは、その対応を弁護士に任せるのが安心です。

5、まとめ


弁護士
荒川 香遥
建築条件付き土地の売買契約でトラブルが生じた場合は、法的観点からのアドバイスやサポートが必要になりますので、まずは弁護士にご相談ください。

今回は、建築条件付き土地の売買契約の法規制と実際のトラブル事例を紹介しました。不動産業者には、さまざまな法規制が課されていますので、このような規制に適切に対応していかなければ、重い行政処分を受けるリスクもあります。
このようなリスクを回避するには専門家である弁護士のアドバイスが不可欠となりますので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
不動産業に詳しい弁護士をお探しの方は、ダーウィン法律事務所までお気軽にご相談ください。

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この記事を監修した弁護士

荒川香遥
  • 弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士

    荒川 香遥

    ■東京弁護士会
    ■不動産法学会

    相続、不動産、宗教法務に深く精通しております。全国的にも珍しい公正証書遺言の無効判決を獲得するなど、相続案件について豊富な経験を有しております。また、自身も僧籍を有し、宗教法人法務にも精通しておりますので、相続の周辺業務であるお墓に関する問題も専門的に対応可能です。

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