入居者からのクレームにどう対応する?弁護士が解説する法的対処と予防策

賃貸経営や物件管理をしていると、入居者からのクレームは避けて通れない問題です。

「隣人の騒音がうるさい」「設備の修理が遅れている」「家賃に納得できない」といった声は、日常的に寄せられるクレームの一例にすぎません。中には、悪質なクレームや理不尽な要求を繰り返す「モンスター入居者」に悩まされるケースもあります。

こうしたクレームに感情的に対応してしまうと、トラブルが長期化したり法的リスクに発展したりするおそれがあります。冷静かつ法的な視点に基づいた対処が求められます。

今回は、入居者クレームの代表的なパターンを整理したうえで、法的対応のステップや悪質クレームへの対処法を解説します。

入居者対応でお困りの方は、不動産業者やオーナーの方はぜひ参考にしてください。

1、入居者から寄せられる主なクレームの種類


弁護士
荒川 香遥
入居者からのクレームは、賃貸物件を管理・所有するうえで避けることはできません。クレームの内容はさまざまですが、対応を誤ると信頼関係の悪化や法的トラブルに発展するおそれもあります。以下では、入居者から寄せられやすい代表的なクレームを5つのパターンに分けて紹介します。

(1)騒音・悪臭などの生活トラブル

もっとも多いクレームのひとつが、生活音や異臭などの生活環境に関する問題です。

たとえば、上階の足音、深夜のテレビ音、ゴミの放置やペットの臭いなどが典型例です。こうした問題は、入居者同士の感情的な対立を招きやすく、適切な対応を怠ると深刻な近隣トラブルに発展しかねません。

(2)建物の設備不良・修理遅延

エアコンや給湯器、インターホンなどの設備が故障した際に、対応の遅れが入居者の不満につながることがあります。

特に、夏場や冬場に設備が使えなくなると、健康被害に結びつくこともあり、管理会社やオーナー側に損害賠償責任が生じる可能性もあります。

(3)近隣住人とのトラブル

騒音問題とも関連しますが、住人同士の対人トラブルも少なくありません。

「挨拶を無視された」「駐輪場の使い方が悪い」など、些細なきっかけが誤解や不信を生み、エスカレートすることもあります。こうしたクレームは、入居者の人間関係に深く関わるため、第三者的視点からの冷静な対応が求められます。

(4)家賃や敷金に関する不満

「家賃が高い」「敷金の返金額が少ない」「退去費用が高額」などお金に関するクレームは特にトラブル化しやすい分野です。

契約内容を確認したうえで対応していても、入居者側の誤解や説明不足が原因で不満が表面化することがあります。

(5)管理会社やオーナーの対応への苦情

クレームの最終的な矛先が管理会社やオーナーの対応そのものに向けられることもあります。「連絡が遅い」「対応が不親切」「説明が不十分」といった苦情は、信頼関係の低下につながる要因です。

対応の質が入居者満足度を大きく左右することを忘れてはなりません。

2、入居者クレームへの正しい法的対応のステップ


弁護士
荒川 香遥
入居者からのクレームに対しては、感情的に対応するのではなく、冷静になり法的観点を踏まえて段階的に対処することが重要です。以下では、実際にクレームを受けた際に取るべき4つの基本的な対応を紹介します。

(1)事実確認と証拠の確保

まず行うべきは、クレーム内容の事実確認です。

入居者が主張している事実が本当に発生しているのかを確認しなければ対応の方向性を誤る可能性があります。たとえば、「隣人の騒音がひどい」という訴えであれば、時間帯や音の種類・頻度などを具体的に聴取し、録音や第三者の立ち会いによる記録を残すなど、客観的な証拠を確保することが大切です。

証拠がない状態で一方的に相手方へ連絡すると、逆にトラブルが拡大するリスクもあるため、慎重な確認が必要です。

(2)内容証明や文書での対応記録

クレーム対応では、言った・言わないの争いを防ぐために、できるだけ書面で記録を残すようにしましょう。注意喚起は、口頭ではなく文書やメール、内容証明郵便などで行うことが望ましいです。

(3)弁護士への相談・対応方針の決定

クレームの内容が複雑・悪質であったり、感情的にこじれている場合は、早い段階で弁護士に相談するのが得策です。法的リスクの分析や対応方針のアドバイスを受けることで、安易な対応によるトラブルの拡大を未然に防ぐことができます。

たとえば、退去通告を出すべきかどうか、逆にクレーマーから損害賠償請求される可能性があるかなど判断に迷う局面では専門家の意見が不可欠です。

(4)誠実な対応とクレーム抑制策

すべてのクレームが不当とは限らず、正当な要望が含まれている場合もあります。そうしたケースでは、入居者に寄り添いながら誠実に対応することが、関係改善やクレーム沈静化につながります。対応状況を丁寧に説明し、経過を報告する姿勢も重要です。

また、クレームの再発を防ぐために、管理体制の見直しや入居者アンケートの実施なども有効です。クレームは改善のチャンスであることを意識して行動するようにしましょう。

3、悪質クレーム・モンスター入居者への対応方法


弁護士
荒川 香遥
入居者の中には、正当な主張とは言えない理不尽なクレームや、執拗で威圧的な要求を繰り返す「モンスター入居者」が存在します。このような悪質クレームに対しては、通常の誠実対応では解決しないことも多く、毅然とした法的対応が求められます。以下では、悪質なクレームの特徴と具体的な対処法について説明します。

(1)度重なる嫌がらせ・脅迫への対応

何度も繰り返される電話、深夜の訪問、従業員への暴言・威嚇などは、明らかに社会的な許容範囲を超えた迷惑行為です。悪質な入居者は、対応者が怯んだり動揺したりすることで優位に立とうとする傾向があります。このような場合には、やり取りの記録を残すことが不可欠です。通話内容を録音したり、発言内容を日報形式で記録するなどして、後に証拠として活用できる状態にしておきましょう。

また、暴言や脅迫行為がエスカレートする場合には、早期に警察へ相談することも検討してください。

(2)退去・契約解除を検討すべきケース

悪質なクレームが継続的に行われ、他の入居者に対する迷惑行為や管理業務の妨害が著しい場合には、賃貸借契約の解除や退去を検討する必要があります。契約上「信頼関係の破壊」が認められるほどの問題行動があると判断されれば、裁判所も契約解除を認める傾向にあります。

ただし、退去を求める際には、正当な理由と手続きが必要です。一方的な強制退去は違法となる可能性があるため、弁護士と相談しながら慎重に進める必要があります。過去のトラブル記録やクレーム内容の証拠は、この判断の際に大きな役割を果たします。

(3)刑事・民事手続きの活用(警察通報・仮処分等)

悪質な入居者による暴言や威嚇行為、管理会社職員への暴行などがあった場合は、刑法上の脅迫罪、暴行罪、業務妨害罪などが成立する可能性があります。このようなケースでは、状況に応じて警察へ被害届を提出することで、事態の沈静化を図ることができます。

また、入居者が管理会社の業務を妨害してくるような場合には、民事上の「仮処分申立て」などの法的手続きも有効です。たとえば、事務所への立ち入りを禁じる仮処分を申し立てることで、法的拘束力をもって接近や連絡を制限できる場合があります。

このように、通常の対応では収まらないモンスター入居者に対しては、毅然とした姿勢で法的措置をとることが、他の入居者やスタッフを守るためにも重要です。

4、入居者からのクレーム予防のためにできること


弁護士
荒川 香遥
入居者からのクレームは、発生してから対応するよりも、事前に防止する方がはるかに効果的です。クレームの多くは、誤解や情報不足、対応の行き違いが原因となって発生します。ここでは、トラブルを未然に防ぐために管理会社やオーナーが講じておくべき3つの対策について解説します。

(1)契約書・重要事項説明書の工夫

契約時に交付される賃貸借契約書や重要事項説明書を見直すことがクレーム予防の第一歩です。内容が曖昧だったり、入居者にとって理解しづらい表現になっていたりすると、後になって「そんな話は聞いていない」といったトラブルにつながります。

また、特約条項として禁止事項やマナーに関する項目を追記することで、問題行動の抑止にもつながります。

(2)対応マニュアルの整備

入居者からの問い合わせやクレームに対して、対応にバラつきがあると「前はこう言われたのに」「担当者によって言うことが違う」といった二次クレームを招きかねません。対応を一貫させるためにも、社内でマニュアルやフローチャートを整備しておくことが大切です。

たとえば、「騒音クレームがあった場合は、初回は文書で注意→改善が見られない場合は直接訪問→3回目で弁護士に相談」といったように、段階的な対応をルール化しておくことで、現場の混乱を防ぐことができます。

マニュアルには、文書のテンプレートや記録シートのフォーマットも含めておくと、担当者が対応しやすくなります。

(3)トラブルに強い管理体制の構築

日々の管理体制そのものを強化することも、クレームの予防につながります。たとえば、定期的な共用部分の清掃・点検を実施し、建物の美観と安全性を保つことで、入居者からの不満が出にくくなります。

また、入居者と管理会社・オーナーとのコミュニケーションを密にしておくことも重要です。連絡手段を明確にし、問い合わせに対して迅速・丁寧な対応を心がけることで、入居者の信頼感を高め、クレーム発生のリスクを軽減できます。

近年では、AIチャットボットや専用アプリなどを活用した入居者対応システムを導入する事業者も増えており、こうしたITツールの活用も効果的です。

5、クレーム対応で弁護士に依頼するメリット

入居者からのクレームがエスカレートした場合、自社だけで対応しきれなくなるケースもあります。特に、内容が複雑で法的判断が必要な場合や相手が感情的・攻撃的になっている場合は、弁護士に相談することが有効です。以下では、クレーム対応において弁護士に依頼する主なメリットを説明します。

(1)感情的トラブルの法的収束

入居者クレームの中には、冷静な話し合いが難しいほど感情的になっているケースがあります。対応を誤ると、怒りがエスカレートして誹謗中傷や業務妨害に発展することもあります。

このような場合、第三者である弁護士が介入することで感情的なやりとりを遮断し、法的な観点から冷静な交渉に持ち込むことが可能です。弁護士の存在そのものが抑止力となり、相手の態度が和らぐことも少なくありません。

また、弁護士はクレームが違法行為に該当するかどうかを的確に判断し、必要に応じて刑事・民事の対応をアドバイスしてくれます。

(2)書面作成や交渉の代行

内容証明郵便や警告書、退去通知書などの法的文書を正確に作成するには、専門的な知識が必要です。誤った対応をしてしまうと、法的効力を持たなかったり、入居者に誤解を与えたりするリスクもあります。

弁護士に依頼すれば、適切な内容・形式で文書を作成してもらえるほか、入居者との交渉ややりとりも代行してもらえます。クレーム対応にかかる時間やストレスを大幅に軽減できるため、管理業務に集中したい不動産会社やオーナーにとっては大きな利点です。

また、相手方の代理人が弁護士である場合でも、対等な立場で交渉を進めることができます。

(3)裁判・調停への備えと安心感

万が一入居者からのクレームが調停や訴訟にまで発展した場合、法的な対応が不可欠となります。初動対応にミスがあると、不利な状況に追い込まれるリスクもありますが、弁護士に早期から関与してもらっていれば、証拠の収集や主張の整理がスムーズに進み、訴訟リスクを最小限に抑えることができます。

また、継続的な顧問契約を結んでおくことで、日常的なトラブルにも迅速に対応できる体制を整えることが可能となります。

6、まとめ

入居者からのクレームは、賃貸経営において避けられない課題です。冷静な事実確認と法的根拠に基づいた対応がトラブルを長引かせないための鍵となります。

特に、悪質なクレームやモンスター入居者には、毅然とした法的措置が必要です。

入居者からのクレーム対応に不安がある場合やトラブルが深刻化した場合は、すぐにダーウィン法律事務所までご相談ください。経験豊富な弁護士がトラブルの予防・解決に向けて全力でサポートいたします。

この記事を監修した弁護士

荒川香遥
  • 弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士

    荒川 香遥

    ■東京弁護士会
    ■不動産法学会

    相続、不動産、宗教法務に深く精通しております。全国的にも珍しい公正証書遺言の無効判決を獲得するなど、相続案件について豊富な経験を有しております。また、自身も僧籍を有し、宗教法人法務にも精通しておりますので、相続の周辺業務であるお墓に関する問題も専門的に対応可能です。

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