賃貸借契約において「賃料据え置き」がなされている場合でも、経済状況や建物の老朽化、周辺相場の変動などにより、賃料の見直しが必要になるケースがあります。しかし、どのようなタイミングで、どのような根拠をもとに見直しを求めることができるのか、正確に理解している方は多くありません。賃料の見直しをするタイミングで適切な行動をとれるようにするためにも、基本的な知識を身につけておきましょう。
今回は、「賃料据え置きの見直し」を検討する際に押さえておくべき法的ポイントや、実務上の注意点について、不動産問題に強い弁護士が詳しく解説します。
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「賃料据え置き」とは、貸主と借主との間で合意のうえ、一定期間にわたって賃料を変更せず、現在の水準を維持することをいいます。

特に、事業用物件では、借主の安定経営を優先し、一定期間の賃料固定を希望されることが少なくありません。こうした要望を受け入れて契約期間中の賃料を据え置く合意がなされることも、実務上はよくあります。
賃料据え置きの有無を判断するうえで、もっとも重要なのが賃貸借契約書の内容です。
契約書に「期間中は賃料を改定しない」「更新時に賃料見直しを協議する」といった文言がある場合、それに従って行動する必要があります。特に、「○年間は賃料据え置きとする」など明示的な条項があると、その期間中は見直しを求めることが困難になります。
また、更新条項に「更新後の賃料は別途協議する」と記載されている場合は、更新のタイミングで賃料見直しがしやすい一方で、交渉に失敗すれば契約が終了する可能性もあるため、交渉戦略が重要になります。
貸主としては、契約締結時点で将来の見直し可能性を残す文言を盛り込むことが理想的です。
契約書に明記がなくても、過去に長期間賃料を変更せず、借主の申し出もなかった場合、黙示的な据え置き合意が成立しているとみなされることがあります。このような場合、貸主が一方的に値上げを通知しても、「過去の合意に反する」として借主が反発し、トラブルに発展するおそれがあります。
また、据え置きが当然視される状態が続くと、裁判においても貸主の見直し請求が認められにくくなるリスクがあります。
したがって、貸主としては、定期的に賃料水準を検討し、必要であれば「見直しの意向」を借主に通知するなど、将来的な交渉の布石を打っておくことが大切です。

借地借家法32条では、「土地または建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減、土地若しくは建物の価格の上昇または低下、その他の経済事情の変動により不相当となったときは、賃料の増額または減額を請求できる」と規定されています。つまり、契約の内容や有効期間に関係なく、法的に正当な理由があれば賃料の見直しを請求することが可能です。
この規定は、物価や経済状況の変動によって貸主または借主の一方が著しく不利益を被る事態を避けることを目的としています。貸主にとっては、長年賃料が据え置かれている物件や固定資産税・修繕費の負担が増しているケースにおいて、賃料の増額を求める際の強力な根拠となり得ます。
賃料の見直しが認められるかどうかは、以下の3つの要因に大きく左右されます。

これらの条件を客観的に示す資料(相場表、税金の明細など)を整えることで、見直しの正当性を強く主張することが可能になります。
貸主が見直しを検討すべき具体的なケースとしては以下のようなケースが考えられます。
なお、契約更新時や固定期間の満了など、契約関係の見直しが発生する節目に合わせて改定を申し出ることも、交渉のタイミングとして有効です。いずれの場合も、貸主側から一方的に請求するのではなく、正当な理由と根拠を持って冷静に交渉を行うことが重要です。

契約の更新時は、賃貸条件の見直しを行うもっとも自然なタイミングです。
多くの賃貸借契約では「賃料その他の条件については更新時に再協議する」といった条項が設けられており、これを根拠に賃料増額の交渉を行いやすくなります。また、借主にとっても更新時は契約条件の見直しを受け入れる心理的な準備があるため、スムーズな話し合いが期待できます。
「定期建物賃貸借契約」や「契約期間○年で自動更新なし」といった契約の場合、契約満了後の再契約は新規契約として扱われるため、賃料やその他条件の改定が比較的自由に行えます。
このタイミングを逃さず、相場の変動や経済事情の変化を根拠に適正な賃料設定を再検討することが重要です。特に、築年数が経過した物件や改修工事を行った物件では、適正賃料の見直しによって収益性を高める好機となります。
建物の経年劣化により、外壁塗装、屋上防水、配管更新といった大規模修繕が必要になることがあります。こうした費用は、貸主が原則負担するため、修繕後も据え置きの賃料では、コスト回収が困難になることもあります。
このような場合、修繕の完了を機に「修繕に伴う価値の向上」や「維持費の増加」を理由として、賃料見直しの正当性を主張しやすくなります。
近隣物件の賃料が上昇しているにもかかわらず、自物件のみが低水準に据え置かれている場合、いわゆる「不相当な賃料」に該当する可能性があります。また、近年の物価上昇や固定資産税・都市計画税の増税も貸主にとっては賃料見直しを検討すべきタイミングです。
これらの外的要因が複数重なった場合には、借地借家法32条の「経済事情の変動」に該当しやすく、交渉・請求の成功率が高まります。

弁護士に相談することで、賃料改定が法的に認められるかどうかを、契約書や過去の経緯、近隣相場と照らし合わせながら客観的に判断してもらえます。過去に据え置きの合意があったか、黙示の了解が成立しているかなどは、貸主自身では判断が難しいため、専門家である弁護士による判断が不可欠です。
また、通知や交渉の方法を誤った場合にどのような法的リスクがあるかもあらかじめ把握できるため、貸主とのトラブルを未然に防ぐことが可能になります。
賃料見直しには、契約更新時や市場相場の変化、修繕の完了後など、いくつかの「狙いどき」があります。弁護士は、これまでの事例や裁判例に基づき、貸主にとってもっとも有利に働くタイミングをアドバイスしてくれます。
特に、複数の要因が絡むような状況(例:相場上昇+固定資産税の増加+修繕後)では、それぞれをどのように主張するか、どの順番で通知・交渉を行うかといった「戦略設計」が結果を大きく左右します。こうした点でも、弁護士の関与は非常に有効です。
借主との交渉では、信頼関係の維持やトラブル防止も意識する必要があります。弁護士に通知文の作成を依頼すれば、法的に適切かつ冷静な文面で相手に貸主側の要求を伝えることができますので、誤解や感情的な対立を防ぎやすくなります。
また、第三者である弁護士が関与することで、借主側も真剣に応じざるを得ない空気が生まれ、交渉の進展がスムーズになるケースも多く見られます。万が一調停や訴訟に発展した場合も、初期段階から関与している弁護士がいれば、スピーディかつ的確に対応することができます。
賃料の据え置きや見直しは、貸主にとって収益確保に直結する重要な問題です。契約内容や経済情勢、建物の状況によっては、適切なタイミングで賃料を見直すことで、安定した経営が実現できます。
ただし、見直しには法的根拠や準備が必要であり、対応を誤ればトラブルに発展しかねません。見直しの判断に迷ったときは、不動産問題に強い弁護士に相談し、戦略的かつ円満な交渉を進めることが成功のカギとなります。賃料据え置きの見直しを検討中の貸主の方は、不動産問題に詳しいダーウィン法律事務所までご相談ください。
まずご依頼の流れ(必読)をご確認いただき、お電話で相談希望を受付後、担当スタッフ、弁護士から折り返しいたします。
立場を明確にしていただく必要がありますので、ご連絡時、下記情報お伝えください