不動産仲介業を営むうえで、クレーム対応は避けて通れない重要課題です。
契約時の説明不足や重要事項説明書の記載誤り、入居後の設備トラブルなど、日々寄せられるクレームは内容も複雑化しています。また、クレーム対応を誤ると高額な損害賠償請求に発展したり、悪評が広がり事業継続に大きな影響を及ぼしたりするケースも少なくありません。
今回は、不動産仲介業におけるクレームの現状とよくあるトラブル事例、対応時に押さえるべき基本ポイントを不動産問題に詳しい弁護士が解説します。
適切なクレーム対応は、企業の信用を守るとともに、無用な法的トラブルを防ぐために不可欠です。ぜひ最後までお読みいただき、貴社のリスク管理と対応力強化にお役立てください。
目次

不動産業界は、高額取引を扱うことに加え、法規制や契約内容が複雑で専門用語も多いため、一般顧客との認識差や誤解が生じやすい業界です。
また、住まいやオフィスという生活・事業基盤に直結する商品を取り扱うため、契約後に生じた問題が感情的なクレームへ発展することも珍しくありません。
仲介業者が直面する典型的なクレーム事例としては、以下のような事例が挙げられます。
宅地建物取引業法に基づき、不動産仲介業者は取引前に重要事項説明書を交付し説明する義務がありますが、誤記載や説明漏れがあった場合、損害賠償請求や契約解除に発展する可能性があります。
仲介業者と顧客との間には知識や情報量に圧倒的な格差があります。仲介業者としては、当然知っているだろうと思う内容でも、顧客からすれば初めて知る内容であることもあるため、契約内容の説明不足によりクレームが発生することがあります。
特に、賃貸契約や売買契約の条件を十分説明していなかったとして、入居後や引渡し後に「聞いていなかった」「だまされた」とクレームになる事例が多発しています。
入居後にエアコンが壊れた、水漏れがあったなど、設備トラブルに関する苦情も多く寄せられます。管理会社との業務分担が不明確な場合、仲介業者に直接クレームが入ることもあります。
こうしたクレーム対応を誤ると、損害賠償請求や訴訟に発展するだけでなく、企業の信用失墜、顧客離れ、従業員の離職リスクなど多方面に影響を及ぼします。
特に、近年は、口コミサイトやSNSでネガティブレビューが拡散されることで、企業イメージの失墜や営業成績への悪影響も懸念されています。インターネット上の悪評は、半永久的に残り続けるため、早期かつ適切な対応が極めて重要です。

クレーム対応においてもっとも重要なのは、初期対応のスピードと姿勢です。
初動が遅れると、顧客の不満や不信感は一気に膨れ上がり、解決までに必要な時間や労力が格段に増大します。また、「連絡がない」「放置された」と感じた顧客は、SNSや口コミサイトに不満を書き込むことで事態を外部に広げるおそれがあります。
初期対応では、まず顧客の感情を受け止めることが重要です。顧客は事実関係だけでなく「話を聞いてほしい」という感情的ニーズを持っています。そのため、すぐに否定や言い訳をするのではなく、「ご不安なお気持ちをお察しします。事実確認のうえ、できる限り早急に対応いたします」といった共感の言葉を伝えることで、交渉を進めやすくなります。
不動産仲介業のクレーム対応では、社内で解決できるクレームと弁護士など外部専門家に委任すべきクレームを明確に区別しておくことが極めて重要です。現場担当者の判断のみで対応を続けた結果、法的リスクが顕在化し、後から対応方針を変更せざるを得なくなると、かえって顧客の不信感を招きます。
たとえば、「担当者の説明がわかりにくかった」「連絡が遅い」という接客クレームは、上席による謝罪や再説明で解決することが一般的です。一方で、重要事項説明書の誤記載により契約内容に齟齬が生じた場合は、契約無効や損害賠償請求に発展する可能性があり、法的知識なしに対応を進めることは危険です。
また、稀に顧客から高圧的要求や過剰要求(いわゆるモンスタークレーマー)を受ける場合もあります。このようなケースでは、社内で対応を続けることで従業員が精神的負担を抱えたり、対応コストが膨大になったりするため、弁護士への相談や対応委任を検討するべきでしょう。
不動産仲介業におけるクレームは、内容も複雑で解決方法が多岐にわたるため、対応を担当者個人の判断に任せるとリスクが増大します。クレーム対応マニュアルを整備し、全従業員が共通の方針と手順に基づき対応できる体制を構築することが重要です。
具体的には以下の内容をクレーム対応マニュアルに含めると効果的です。

さらに、マニュアルは作成して終わりではなく、法改正や過去のクレーム事例を踏まえて定期的にアップデートする必要があります。
定期的な社内研修を実施し、全従業員がマニュアルの内容を実践できる状態にしておくことが、企業全体のリスクマネジメント強化につながります。

不動産取引において、重要事項説明書は契約の根幹をなす書面であり、説明内容に誤記載や漏れがあると、仲介業者が損害賠償責任を負うリスクがあります。
たとえば、建物構造の説明で「鉄骨造」と記載すべきところを「鉄筋コンクリート造」と誤記載していた場合、顧客は耐震性や居住性を誤認して契約したとして、契約解除や損害賠償を求める可能性があります。
また、用途地域や建ぺい率・容積率の説明漏れによって、購入後に建て替えや増築ができないことが判明した場合も深刻です。このようなケースでは、「説明義務違反」として多額の賠償請求や悪質と判断された場合には宅建業法違反として業務停止処分を受ける可能性もあるため注意が必要です。
加えて、最近ではインターネット上の口コミで「説明不足で騙された」という内容が拡散され、企業ブランドに致命的ダメージを与える事例も増加しています。重要事項説明書の誤記載は、顧客から見れば単なるミスではなく「信用問題」と受け止められることを認識しておくべきでしょう。
仲介手数料や違約金に関するトラブルは、比較的日常的に発生するクレームの一つです。
たとえば、仲介手数料の計算方法を十分説明していなかった場合や賃貸借契約における違約金の条項が不明瞭だった場合、顧客から「不当に高額な請求をされた」とクレームが入る可能性があります。
宅地建物取引業法では、仲介手数料の上限が定められていますが、これを超えて請求した場合は行政処分の対象となり得ます。また、違約金条項も消費者契約法により過大請求が無効とされるケースがあるため、最新の法令・判例を踏まえた適切な運用が求められます。
このような事態を避けるためには、契約前に説明内容を書面で残すとともに、説明記録(誰が、いつ、どのように説明したか)を社内で保管する体制が重要です。
引渡し後に発覚する瑕疵(雨漏り、カビ、シロアリ被害など)をめぐるクレームも、法的リスクが大きい典型例です。売買契約においては、契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)として損害賠償や契約解除を求められる場合があります。
たとえば、築古戸建てを仲介した際に、雨漏り歴があることを売主が黙っており、重要事項説明書にも記載しなかった場合、仲介業者の調査義務違反が問われる可能性があります。
また、シロアリ被害やカビの発生は、健康被害や建物価値の著しい低下に直結するため、クレームが激化しやすい問題です。
顧客とのトラブル防止のためには、現地調査やインスペクションを実施し、説明内容を明確に記録しておくことが重要です。
賃貸契約・売買契約を問わず、契約解除時の返金をめぐるトラブルは非常に多く発生しています。
たとえば、手付解除の期限や違約解除の要件について正確な説明がなされていなかった場合、顧客から「違約金を払う必要はない」「全額返金しろ」と強く要求されることがあります。
また、解約日の認識違いにより賃料日割計算や原状回復費用の請求額で齟齬が生じるケースも多いです。特に、退去立会時に返金額の算定基準を口頭説明のみで済ませると、後日「そんな説明は受けていない」とクレーム化し、返金交渉が長期化することがあります。
契約解除に関するトラブルは、契約書の条項内容と実際の説明記録が重要証拠となります。法的リスクを最小化するためには、書面化・署名取得・説明記録の三点セットを徹底することが不可欠です。

クレーム対応は初期対応が重要であることは前述の通りですが、弁護士への早期相談はトラブルの長期化・深刻化を防ぐ大きなポイントとなります。
たとえば、顧客から強い口調で返金や賠償を求められた際、現場担当者が誤った説明や謝罪をすると、責任を認めたと解釈されて交渉が不利になることがあります。
このような場合、弁護士に初期相談することで、
などについてのアドバイスができますので、感情的対立を回避しつつ、最短ルートで解決に導くことが可能です。
また、初期対応の段階で弁護士が顧客とのコミュニケーションに同席したり、代理人として窓口になることで、過剰要求を抑制できる効果も期待できます。
クレームが訴訟に発展するかどうかは、現場レベルでは判断が難しいケースが多いものです。
たとえば、数十万円規模の返金要求であっても、法的根拠が薄弱であれば相手方も訴訟を起こす可能性は低い場合があります。

また、法的に認められない要求であることを弁護士から正式に伝えるだけで、顧客が諦めて交渉が終了することも少なくありません。
逆に、訴訟リスクが高い場合には、早期に示談を提案して解決金額を最小化するなど、ダメージコントロール戦略を取ることができます。
弁護士と顧問契約を締結しておくと、クレーム発生時に即座に相談できる体制が整います。これにより、
といったメリットがあります。
特に、不動産仲介業は宅建業法、民法、消費者契約法など多くの法律が関わり、法改正や判例変更への対応も必要です。
顧問弁護士がいれば、法改正情報や実務上の留意点をタイムリーに提供してもらえるため、社内研修や契約書面アップデートも効率的に進めることができます。
不動産仲介業では、クレーム対応を誤ると多額の損害賠償や企業信用の失墜につながるおそれがあります。また、重要事項説明や契約書面の不備など法的責任を問われるケースも多いため、日頃から予防策を講じることが不可欠です。
クレーム対応は感情的側面だけでなく、法的視点での備えが重要です。顧問弁護士と連携し、迅速かつ適切に対応できる体制を整備することで、不要なトラブルを回避し、事業の安定運営につなげていくことができますので、まずは不動産問題に詳しいダーウィン法律事務所までご相談ください。
まずご依頼の流れ(必読)をご確認いただき、お電話で相談希望を受付後、担当スタッフ、弁護士から折り返しいたします。
立場を明確にしていただく必要がありますので、ご連絡時、下記情報お伝えください