共有不動産に関する訴訟では、原告または被告が複数人になることがあります。特に、固有必要的共同訴訟となるものについては、共有者全員が当事者として訴訟に関与しなければならなりません。どのような訴訟類型になるかによって、当事者となるべき人が異なりますので、共有不動産に関する訴訟類型をしっかりと理解しておくことが大切です。
今回は、共有不動産に関する訴訟類型について不動産問題に詳しい弁護士が解説します。
目次
共同訴訟とは、訴訟手続きの一方または双方に複数の人が存在する訴訟形態をいいます(民事訴訟法38条)。このうち、通常共同訴訟とは、共同訴訟が強制されないものをいいます。
このような通常共同訴訟には、以下のような特徴があります。
・一部の者を被告から除外できる
・複数の者を被告にすることもできる
つまり、当事者の選択は自由で、該当者全員でなくても訴訟手続きを行うことができます。
必要的共同訴訟とは、合一確定の必要性があり、共同訴訟とすることが法律上強制されているものをいいます。通常共同訴訟のように、一部の者を除外することは認められず、該当する者全員を当事者に含めなければならない訴訟形態です。
このような必要的共同訴訟には、以下のような特徴があります。
・共同訴訟とすることが法律上強制され、一部を被告から除外することができない
・一部の当事者が欠ける場合、当事者適格を欠くため、訴えが却下される
共有不動産に関する妨害排除請求権とは、共有不動産の利用を妨害されている場合、それをやめるよう請求する権利をいいます。具体的には、以下の3つのケースが挙げられます。
共有不動産を第三者が不法に占有・使用することにより、共有不動産の利用が妨害されている場合、各共有者は、単独で共有不動産の返還を求めることができます。
共有持分は、不動産全体を利用する権利ですので、各共有者は、共有持分に基づいて、共有不動産全体の返還を求めることが可能です。
共有不動産に関して実態と一致しない不実の登記がある場合、各共有者は、単独で無権利者に対して、共有不動産の抹消登記請求をすることができます。
共有不動産の返還請求と同様に、妨害排除として全部の抹消登記請求をすることが可能です。
共有不動産について違法な差し押さえがされた場合、違法な差し押さえを解消する手段として第三者異議訴訟があります。
たとえば、AとBの共有不動産について、第三者CがAに対する債務名義に基づき、共有不動産全体の差し押さえを行った場合、Bは単独で第三者異議の訴えを提起することができます。
共有不動産が第三者により不法に使用・占有されている場合、不動産の共有者は、単独で不法占拠者に対して、不法行為に基づく損害賠償請求をすることができます。
ただし、損害賠償債権は可分であると考えられていますので、各共有者は、自身の共有持分の割合に応じて算出された損害額を請求することになり、この割合を超えて請求することはできません。
共有不動産の返還(明渡・引渡)請求は、各共有者が共有物全体について権利を行使できますが、損害賠償請求の場合は、共有持分の範囲での請求となる点に注意が必要です。
共有不動産の境界が不明確である場合は、共有地の境界確定の訴えを提起する必要があります。
境界確定訴訟は、形式的形成訴訟という特殊な訴訟類型であり、土地の共有者全員が当事者として訴訟に関与しなければならない「固有必要的共同訴訟」に該当します。この場合、必ずしも原告として関与することまでは要求されていませんので、原告側の土地共有者に同調しない人がいる場合には、その共有者を被告に加えることで固有必要的共同訴訟の要請を満たすことが可能です。
このように共有地の境界確定の訴えを提起する際には、共有者全員の参加が強制されることになります。
地役権の要役地の所有者は、承役地の所有者に対して、地役権設定登記を請求することができます。
たとえば、要役地がAとBの共有となっていて、承役地所有者Cに対して、地役権設定登記を請求する場合、要役地の共有者AとBがそれぞれ単独で請求することができます。
つまり、共有不動産における地役権設定登記請求は、固有必要的共同訴訟ではなく、通常共同訴訟となります。
共有者以外の第三者が共有不動産についての所有権や共有持分を主張している場合、裁判所に共有持分の確認を求める必要があります。
共有持分権は、不動産全体に及びますので、各共有者が単独で第三者に対して、共有持分の確認請求訴訟を提起することができます。すなわち、第三者に対する共有持分の確認請求は、通常共同訴訟となります。
共有者間において、共有持分の割合に関する見解の相違が生じることがあります。このような場合には、共有者を相手にして共有持分の確認請求訴訟を提起します。
第三者に対する共有持分の確認請求と同様に、共有者に対する共有持分の確認請求も各共有者が単独で訴訟提起することができます。
共有持分権の確認請求訴訟であれば、相手方が第三者と共有者のいずれであっても、単独で訴訟提起することができます。しかし、第三者に対する共有権全体の確認請求については、固有必要的共同訴訟になりますので、共有者単独で提起することはできません。
このように、共有不動産の確認請求訴訟では、確認の対象となる権利が共有持分権であるか、共有権全体なのかによって、訴訟類型が異なりますので注意が必要です。
共有不動産に関する訴訟形態には、大きく分けて通常共同訴訟と/strong>必要的共同訴訟の2種類があります。このうち、必要的共同訴訟では、共有者全員を当事者にしなければ当事者適格が認められず訴えが却下されてしまいます。
共有不動産に関する紛争をどの訴訟形態で解決すればよいかは、法的知識がなければ適切な選択ができません。一般の方では、適切な選択が困難だといえますのでまずは弁護士に相談することをおすすめします。弁護士であれば、具体的な紛争内容に応じて適切な訴訟手続きを選択することが可能です。
共有不動産に関するトラブルが発生した場合、訴訟以外にも交渉や調停などさまざまな解決方法があります。いきなり訴訟を提起するよりも交渉や調停により解決を図った方が円満にトラブルを解決できる可能性があります。
弁護士に相談をすれば、共有不動産に関するトラブルの内容に応じて適切な解決方法をアドバイスしてくれますので、迅速かつ円満な解決が期待できるでしょう。また、自分で対応するのが難しいという場合には、弁護士が代理人として交渉・調停・訴訟手続きに対応することができますので、まずは弁護士に相談するようにしましょう。
共有不動産に関する訴訟としては、共有物分割請求訴訟が代表的なものといえますが、それ以外にも妨害排除請求、損害賠償請求、確認請求などさまざまな類型があります。単独所有の不動産に比べて共有不動産になると当事者も複数になり、権利関係も複雑になりますので、何らかのトラブルが生じた場合はすぐに弁護士に相談することをおすすめします。
ダーウィン法律事務所では、共有不動産に関する問題を豊富に取り扱っておりますので、共有不動産に関するお悩みは、当事務所までお気軽にご相談ください。
まずご依頼の流れ(必読)をご確認いただき、お電話で相談希望を受付後、担当スタッフ、弁護士から折り返しいたします。
立場を明確にしていただく必要がありますので、ご連絡時、下記情報お伝えください