賃貸物件を管理している不動産会社では、賃借人による賃料滞納、迷惑行為、無断転貸、夜逃げなどのトラブルに悩まされることも少なくありません。このようなトラブルが生じると賃貸物件のオーナーからの信頼も失ってしまいますので、早期に適切な対処をしていかなければなりません。そのために有効なのが「不動産の明渡し」という方法です。
一定の条件を満たせば、賃借人を当該物件から追い出すことができますので、賃貸物件のトラブルを根本から解決することが可能です。
今回は、不動産の明渡し請求を検討すべきケースやその手続きの流れを不動産問題に詳しい弁護士が解説します。
目次
賃貸物件を管理している不動産会社では、家賃の回収、入居者からのクレーム対応、建物の維持管理・清掃などの管理業務を行っています。不動産会社では、このような管理業務に対応する対価としてオーナーから管理手数料をもらっていますので、きちんと物件を管理してくことが重要になります。
しかし、賃貸不動産では、頻繁に以下のような問題が起こることがあります。
・賃料滞納
・迷惑行為
・無断転貸
・夜逃げ
このような問題が発生すると、入居率の低下や賃料の減少などが生じ、管理を委託されたオーナーに対して、損害を与える事態にもなりかねません。そのため、不動産会社としては、このような管理物件に関する問題を適切に解決していくことが求められます。
上記の問題を解決する方法には、いくつかの方法がありますが、その一つが「不動産の明渡し請求」です。問題を起こす入居者を賃貸物件から追い出すことで、問題を解決でき、別の入居者を見つけることが可能になります。
賃借人が長期間賃料を滞納しており、催促に応じないような場合には、不動産の明渡しを検討した方がよいでしょう。
賃料の滞納期間については、ケースバイケースになりますが、3か月以上滞納が続いており、今後も回収見込みがないような場合が一つの目安になります。このような状態であれば、賃貸人と賃借人との間の信頼関係が破壊されたと評価され、賃貸借契約の解除が認められる可能性が高いでしょう。
賃貸借契約では、以下のような行為が禁止されているケースが多いです。
・ペットの飼育
・楽器の演奏
・共用部分での迷惑行為
・無断駐車
・騒音
他の入居者からクレームがあり、再三注意しているにもかかわらず、一向に改善されないという場合には、明渡しを検討すべきケースといえるでしょう。契約違反の状態が続くと、他の入居者や近隣住民に迷惑がかかり、入居率の低下などの不利益が生じる可能性が高くなりますので注意が必要です。
賃借人がアパートやマンションの居室を第三者に無断転貸することは、重大な契約違反行為となります。民法でも、賃貸借契約の目的物を賃貸人に無断で転貸することは、賃貸借契約の解除事由と定められています(民法612条2項)。
そのため、賃借人による無断転貸が発覚したときは、不動産の明渡しを検討した方がよいでしょう。
賃料の滞納や契約違反などを繰り返す賃借人がいる場合、まずは、電話や書面により違反行為の改善を求めるようにしましょう。
電話や書面による警告により態度を改めてくれれば、それで問題は解決となりますので明け渡し請求をする手間を省けることができます。このような対応は、賃貸不動産の管理を任された不動産会社に期待されている役割ですので、入居者による違反行為が発覚したときは、迅速に対応することが大切です。
賃借人への電話や書面による請求でも問題が改善されないときは、内容証明郵便を利用して改めて問題の改善を求める文書を送付します。
内容証明郵便は、いつ・誰が・誰に対して・どのような内容の文書を送付したのかを証明できる形式の郵便です。内容証明郵便自体には、未払い賃料の支払いなどを強制する効力はありませんが、特別な形式の文書が届いたことで賃借人にプレッシャーを与えることができますので、問題の改善が事実上期待できます。
また、内容証明郵便に期限までに問題が改善されない場合には契約を解除する旨記載しておくことで、賃貸借契約の解除通知としての役割を果たすこともできます。
今後、訴訟に発展した場合には、解除の意思表示の有無や時期が重要になりますので、内容証明郵便を利用することで客観的な証拠を残すことができます。
内容証明郵便に記載された期限までに問題が改善されないときは、賃貸借契約は解除されますので、裁判所に不動産の明渡し請求訴訟を提起します。
裁判というと解決までに長期間かかるイメージがありますが、不動産の明渡し請求訴訟では、争点が明確で、賃借人側も積極的に争ってこないケースも多いため、比較的短期間に結論が出るケースも少なくありません。賃借人とダラダラ交渉を続けるよりも、早期に訴訟提起して判決をもらった方が早期解決が見込めるケースもありますので、状況に応じて適切な方法を選択していくようにしましょう。
裁判所による不動産の明渡しを命じる判決が確定したにもかかわらず、賃借人が明渡しに応じないときは、裁判所に不動産の明渡しの強制執行の申立てを行います。
強制執行とは、法律上の権利を強制的に実現する手続きのことをいい、不動産の明渡しであれば、裁判所の執行官が建物内に残された家具や動産を強制的に搬出し、家の鍵を交換するなどして、建物の支配を賃借人から賃貸人に移転します。
このような法的続きを経ることなく不動産会社が勝手に建物内に立ち入って、荷物を処分すると、賃借人から損害賠償請求や刑事告訴をされるリスクがありますので注意が必要です。
不動産の明渡し請求は、賃借人による問題行動があれば直ちにできるわけではありません。明け渡し請求をするには、その前提として賃貸借契約を解除しなければなりません。賃貸借契約の解除には、信頼関係破壊の法理が適用されますので、賃借人により違反行為によって、賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊されるに至ったかどうかが重要なポイントとなります。
このような状態にあるかどうかを判断するには、法的な知識が不可欠となりますので、弁護士に相談するようにしましょう。不動産会社の顧問弁護士であれば、管理物件にトラブルが生じた場合、いつでも気軽に相談することができますので、迅速に問題に対処することが可能になります。
賃料の滞納や契約違反があった場合、まずは当該賃借人との話し合いにより問題の解決を図ることになります。しかし、トラブルの内容によっては、不動産会社が対応すると弁護士法72条に違反する非弁行為に該当するリスクがあります。非弁行為は、刑事罰の対象になりますので、不動産管理業務の一環だからといってそのようなリスクを冒すのは得策ではありません。
不動産会社の顧問弁護士であれば、オーナーからの依頼を受けて、賃借人との交渉を行うことができます。非弁行為のリスクを回避しつつ、法的観点から適切に解決を図ることができますので、賃借人との交渉は弁護士に任せるとよいでしょう。
賃借人が交渉に応じてくれないときは、裁判所に不動産明渡し請求訴訟を提起する必要があります。また、明渡しを命じる判決確定後も任意に明け渡しに応じないときは、不動産の明渡しの強制執行を申し立てなければなりません。
このような法的な対応は、不動産会社やオーナーでは対応が困難ですので、弁護士に任せるべきでしょう。顧問弁護士であれば、迅速に法的手段に対応してくれますので、トラブルを早期に解決することが期待できます。
賃貸物件の管理を任された不動産会社では、賃料の滞納や賃借人による違反行為などに対応しなければなりません。そのなかには、法的対応が必要なものも含まれていますので、不動産会社の担当者だけで対応するのは危険です。非弁行為のリスクを回避するためにも、まずは専門家である弁護士に相談するようにしましょう。
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