不動産の賃貸借契約は、長期間に及ぶ契約になりますので、その間に租税公課の増減、地価の上昇・低下などの経済情勢の変動が生じることがあります。
・土地の税金が上がり、地主が支払う税金が増えた
・周辺の類似物件と比較して賃料が著しく低い
・物価の上昇で現在の賃料では見合わない
などの状況になったときは、賃貸人は、賃借人に対して、賃料増額請求をすることができます。賃料の増額を求める場合、まずは当事者同士の交渉を行いますが、交渉での解決が難しいときは、調停の申立てが必要になります。
しかし、調停も話し合いの手続きですので、調停でも解決できない場合には、最終的に訴訟により解決をすることができます。
今回は、賃料増額請求に関するトラブルを訴訟により解決する場合の手続きとその流れについて解説します。
目次
賃料の増額をする場合、まずは当事者同士で話し合いを行うのが基本となります。当事者同士の話し合いにより、増額後の賃料の合意が成立すれば、その後は合意にしたがった賃料の支払いを受けることができます。
もっとも、賃借人としては賃料が増額すると経済的な負担が増加しますので、簡単には増額に応じてくれないでしょう。賃貸人としては、賃料の増額を求める根拠を示しながら、賃借人との話を進めていくようにしましょう。
なお、賃料増額請求権は、賃貸人に法律上保障された権利ですが、権利を行使するには、賃借人に対して賃料増額の意思表示をする必要があります。実務では、賃料増額の意思表示をしたことを明確にするために、一般的に内容証明郵便が利用されます。
当事者同士の話し合いがまとまらないときは、簡易裁判所に賃料増額調停の申立てを行います。賃料増額請求は、調停前置主義がとられていますので、いきなり訴訟を提起することはできず、訴訟提起前に調停の申立てが必要になります(民事調停法24条の2第1項)。
調停では、調停委員を介して話し合いによる解決が試みられますが、現状の賃料が不相当であるかどうかを判断するために不動産鑑定士による鑑定が実施されることもあります。
調停は話し合いの手続きになりますので、当事者の合議が得られないときは調停不成立となります。ただし、裁判所が職権により事件解決に必要な決定(17条決定)をする場合があり、これに不服がある当事者は、2週間以内であれば異議の申立てをすることができます。
賃料増額請求訴訟を提起するには、まずは裁判所に訴状を提出する必要があります。また、訴状以外にも以下のような書類の提出が必要になります。
賃料増額請求を根拠づける証拠がある場合には、上記書類とともに証拠の写しも提出します。
裁判所により訴状が受理されると、第1回口頭弁論期日が指定され、訴状の写しとともに口頭弁論期日呼出状が被告に送達されます。
被告は、訴状の内容を確認し、反論がある場合には、「答弁書」という書面に反論内容をまとめて、期限までに裁判所に提出する必要があります。
原告および被告は、指定された期日に裁判所に出頭し、第1回口頭弁論期日を執り行います。第1回口頭弁論期日では、原告から提出された訴状や被告から提出された答弁書の陳述、証拠の確認などが行われ、次回期日が指定されて終了となるケースがほとんどです。
なお、被告は、答弁書を提出していれば、第1回口頭弁論期日を欠席することも可能です。
2回目以降の期日でも同様に当事者からの主張立証が繰り返され、争点の整理が進められていきます。基本的には、1か月に1回のペースで期日が行われますので、複雑な争点がある事案では争点整理に時間がかかり、判決までに1年以上の期間がかかるケースもあります。
賃料増額請求訴訟では、現状の賃料が不相当であるかどうか、増額後の賃料としていくらが相当であるかを判断するために、不動産鑑定士による鑑定が行われます。裁判所は、不動産鑑定士による賃料の鑑定結果を踏まえて、判決を言い渡しますので、どのような鑑定結果になるかが非常に重要となります。
不動産鑑定士による賃料の鑑定結果が出た段階で、裁判所から和解の打診が行われることがあります。和解では、鑑定結果を踏まえた賃料での解決が提示されますので、当事者双方は、裁判所から提示された和解案を検討し、和解に応じるかどうかの判断をします。
当事者双方が和解に応じる意思を示したときは、和解成立により、その時点で訴訟は終了となります。
他方、和解の合意が成立しない場合には、その後も審理が継続されます。
裁判所は、当事者からの主張立証や不動産鑑定士による鑑定結果を踏まえて、判決を言い渡します。
判決に不服がある当事者は、2週間以内であれば「控訴」という不服申し立てをすることができます。
賃料増額請求をした場合の賃料の金額は、最終的に裁判所の判決により判断されることになります。しかし、賃料増額請求訴訟では、当事者からの主張立証や不動産鑑定士による鑑定などを行う必要がありますので、判決が確定するまでには相当な期間を要します。
そのため、借地借家法11条2項では、賃貸人から賃料増額請求がされた場合、賃借人は、増額を相当とする判決が確定するまでは、相当と認める賃料を支払えば足りると規定しています。これにより、賃借人は、自らが相当と考える賃料を支払っていれば、債務不履行責任を問われることはありません。
賃料増額請求訴訟により賃料の増額を相当とする判決が確定すると、賃借人がこれまで支払ってきた賃料との間に不足分が生じることになります。
このような場合には、賃借人は、不足額の賃料に加えて、不足額に対する1割の利息を請求することができます。
なお、裁判上の和解により賃料額が確定し、和解調書に記載された場合にも、不足額に年1割の利息を付すという借地借家法11条2項の規定は適用されます。
賃料増額請求をするには、まずは賃借人との交渉が必要になります。賃料の増額に応じてもらうには賃借人を説得する必要がありますが、不慣れな方ではどのように伝えればよいかわからず賃借人との間でトラブルが生じることもあります。
弁護士であれば、賃料増額が必要になった経緯や理由を客観的資料を提示しながら説明することができますので、賃借人が賃料の増額に応じてくれる可能性が高くなります。
また、話し合いがまとまらず調停が必要になった場合でも、弁護士が調停期日に同行してサポートしてくれますので、不安なく調停手続きに臨むことができます。
相手との交渉が決裂し、調停も不成立になった場合は、最終的に賃料増額請求訴訟により解決する必要があります。訴訟手続きは、非常に複雑かつ専門的な内容となっていますので、知識や経験に乏しい一般の方では適切に対応するのは困難といえます。
弁護士であれば、交渉や調停がうまくいかなかったとしても、引き続き訴訟手続きに対応することができますので、事件が解決するまで安心して任せることができるでしょう。
賃料増額請求に関するトラブルは、最終的には訴訟により解決することができます。しかし、交渉や調停とは異なり、訴訟は一般の方では対応が難しい手続きですので、自分だけで対応するのではなく、弁護士に依頼するのがおすすめです。
ダーウィン法律事務所では、賃料増額請求のトラブルをはじめとした不動産問題に関する豊富な解決実績がありますので、賃料増額請求のトラブルでお悩みの方は、当事務所までお気軽にご相談ください。
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