共有持分の妨害排除請求とは|認められるケース・手続きの流れ・注意点を詳しく解説

共有不動産で他の共有者や第三者による迷惑行為・不適切な使用が続くと、「自分の共有持分が侵害されているのでは?」と不安を抱く方も多いのではないでしょうか。共有不動産は、各共有者が持分に応じた権利を有しているため、他者の行為によって使用・収益が阻害される場合は、妨害排除請求によって状況を改善できるケースがあります。

妨害排除請求とは、不法占拠、無断改築などにより共有持分の行使が妨げられているときに、その妨害を取り除くよう求める法的手続きです。ただし、どんなトラブルでも請求できるわけではなく、「妨害といえるか」「変更行為に当たるか」「証拠が十分か」など、判断には法律的な検討が必要となります。

今回は、共有持分に基づく妨害排除請求の意味・認められるケース・手続きの流れ・注意点などを不動産問題に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。

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1 共有持分に基づく妨害排除請求とは


弁護士
荒川 香遥
共有不動産は、複数の共有者がそれぞれの「共有持分」に応じて所有権を有しています。そのため、各共有者は共有物を使用し、利益を得る権利を持ちます。しかし、共有者の一部や第三者の行為によって、他の共有者が本来得られるはずの使用・収益が妨げられるケースは少なくありません。このような場合に、共有持分権に基づき妨害行為の中止や撤去などを求めるのが「妨害排除請求」です。

(1)妨害排除請求の意味

妨害排除請求とは、所有権などの物権を有する者が権利行使を妨げる行為に対し、その妨害を取り除くよう求める請求のことをいいます。共有不動産の場合でも、共有者は共有物全体について権利を有しているため、妨害行為があれば妨害排除請求を行うことが可能です。

たとえば、他の共有者が無断で建物の一部を改築したり、第三者が不法に占拠したりする行為は、共有者が本来有する使用・収益の自由を阻害します。
このような妨害を解消するため、共有者は、妨害行為の中止や元の状態へ戻す原状回復を請求できるのです。

(2)共有持分権により妨害排除を求められる理由

共有不動産は、「共有持分」によって権利割合が決まっていますが、共有者は持分割合にかかわらず、共有物のすべてについて共同所有者としての権利を持ちます。つまり、共有持分は、共有物全体に及ぶのが原則です
そのため、第三者が共有不動産を不法占拠したり、共有者全員の合意が必要な変更行為を勝手に行ったりすると、他の共有者の権利が侵害されてしまいます。これが、共有持分権に基づいて妨害排除が認められる理由です。

なお、妨害排除請求は「現在進行中の妨害行為」を対象とするものであり、すでに回復不能となった損害については損害賠償請求を併せて検討する必要があります。また、妨害の程度や性質によっては「妨害予防請求」「妨害停止請求」など別の法的措置を適切に選択することも重要です。

2 共有持分不動産で妨害排除請求が認められるケース


弁護士
荒川 香遥
共有不動産における妨害排除請求が認められるかどうかは、相手方の行為が共有者の共有持分権の行使を実質的に妨げているかが判断の基準となります。以下では、実務で典型的に問題となる3つのケースに分けて説明します。妨害排除請求が認められるかどうかの境界線はわかりづらいため、具体的な事例とあわせて理解しておくことが重要です。

(1)無断改築・解体などの「変更行為」による妨害

共有物の性質を変える行為や価値に大きく影響する行為は、共有者全員の同意が必要とされています。これに違反して共有者の一部が勝手に建物の改築・増築・解体を行ったり、外壁を変更したりする行為は「変更行為」に該当し、他の共有者の権利を侵害する妨害として扱われます。

たとえば、

  • ・共有者の一人が許可なく建物の一部を取り壊す
  • ・共有者の一人が自分の判断で増築して共有物の構造を変えた
  • ・外壁塗装や屋上防水など、本来は共有者全員の合意が必要な工事を単独で実施した

といったケースでは、妨害排除請求により工事の中止・原状回復を求めることが可能です。
裁判例でも、共有者が無断で建物の用途を変更したり構造を改変したりした場合は、他の共有者の共有持分権を侵害する行為として妨害排除が認められています。

(2)無断賃貸などの不適切使用による妨害

共有者の一人が、他の共有者の同意を得ずに共有不動産を第三者へ賃貸し、賃料を独占している場合は、妨害排除請求が認められることがあります。無断賃貸は、共有物の使用関係を大きく変え、他の共有者が自由に使用・収益できなくなるため、共有持分権の実質的な妨害と評価されやすいからです

一方、共有者自身が共有物を単独で使用しているだけの「独占占有」については、原則として妨害排除請求は認められず、使用料を請求できるにすぎないというのが判例の考え方になります。

ただし、以下のようなケースでは、共有者による専有も「妨害」と評価される可能性があります。

  • ・鍵の交換などにより他の共有者の立入りを物理的に排除している
  • ・暴言や威圧により立入りを実質的に妨げている

(3)第三者の不法占拠・不当登記による妨害

共有者以外の第三者による妨害行為も、共有持分権に基づき排除を求めることができます。特に多いのは、以下のようなケースです。

これらは共有物の支配関係を乱し、共有者としての権利行使(売却・利用・収益など)を妨げる明確な妨害行為となります。
特に、不当な登記が入ってしまうと売却・担保設定・共有物分割など、あらゆる手続きに影響するため、妨害排除請求により登記抹消を求める必要があります。

3 共有持分の妨害排除請求が難しいケースと注意点


弁護士
荒川 香遥
共有持分に基づく妨害排除請求は、共有者の権利保護に有効な手段ですが、どのような行為でも認められるわけではありません。特に、妨害の範囲や程度が曖昧なケースでは、裁判所が妨害を認めず、請求が棄却される可能性もあります。以下では、実務でよく問題になる妨害排除請求が難しいケースとその際に注意すべきポイントを説明します。

【吹き出し】

(1)単なる占有使用では妨害と認められにくい理由

共有者の一人が共有物を単独で使用しているケースは珍しくありませんが、単に使用しているだけでは妨害排除請求は認められないのが判例の立場です

共有者は共有物の全部を使用する権利を持つため、共有建物に一人が住んでいる、共有土地を駐車場として使っているといった「単独占有」は、法的には他の共有者の権利侵害とは評価されません。
そのため、このようなケースでは妨害排除ではなく、賃料相当額請求や不当利得返還請求で対応するのが基本です

ただし、鍵の交換や実力行使による排除がある場合には「妨害」と認められる余地があり、事実の積み重ねが重要になります。

(2)「変更行為」に該当するかが争点となる場面

共有物の改築・増築・用途変更など、共有者全員の合意が必要な「変更行為」は、無断で行われると妨害にあたる可能性があります。しかし、どこまでが「変更」に該当するかはケースごとに判断が分かれ、軽微な修理・維持行為との境界が争点になることがあります

たとえば、

  • ・壁紙の張替えや設備交換が「単なる修繕」か「変更」か
  • ・外構工事や駐車スペースの整備が「維持管理」か「構造変更」か
  • ・倉庫や物置の設置が軽微か否か

といった点は特に争われやすい部分です。

実務では、工事内容が共有物の性質を変えるか、他の共有者の使用に重大な影響を及ぼすか、事前の同意が必要とされる程度の行為かといった観点から判断されます。
曖昧なケースでは妨害排除請求が認められないこともあるため、工事内容の資料や写真、経緯を丁寧に整理することが欠かせません。

(3)証拠不足により請求が認められないリスク

妨害排除請求は、妨害行為の存在と、その行為によって共有持分の行使が阻害されていることを証明する必要があります。
しかし、実務では証拠不足で請求が棄却されるケースも少なくありません。

特に問題となるのは次のようなケースです。

  • ・無断工事の内容を示す写真・見積書がない
  • ・無断賃貸の契約書や金銭授受の記録がない
  • ・排除行為の事実(鍵交換・立入拒否など)が客観資料で確認できない
  • ・侵害の程度が軽微である

妨害排除請求は、「妨害が現に存在すること」を必ず立証しなければならず、共有者同士の言い分が対立する場合、客観的証拠が極めて重要です
そのため、妨害の事実を裏付ける、写真・動画、メールやメッセージの記録、賃貸借契約書・賃料振込記録、工事の見積書・契約書など、できる限り多くの証拠を集める必要があります。

4 共有持分の妨害排除請求を行う手続きの流れ


弁護士
荒川 香遥
共有持分に基づく妨害排除請求は、いきなり裁判を提起するのではなく、事実整理や証拠収集から始まり、交渉・訴訟・原状回復という段階を踏んで進めていくのが一般的です。以下では、妨害排除請求の基本的な手続きの流れを説明します。

(1)妨害状況の整理と証拠収集

最初に行うべきことは、妨害がどのように行われているかを明確にし、それを裏付ける証拠を集めることです。
妨害排除請求は、妨害行為が現に存在することを証明できなければ認められないため、客観資料の確保が不可欠です

集めるべき代表的な証拠としては、以下のようなものがあります。

  • ・無断工事の写真・動画、見積書、施工業者とのやりとり
  • ・無断賃貸の賃貸借契約書、賃料振込み記録
  • ・鍵交換・立入り拒否など排除行為がわかる証拠
  • ・妨害行為を示すメールやLINE等のメッセージ

証拠が揃っていないまま請求しても、裁判になった際に妨害の存在を立証できず、請求が棄却されるリスクがあります。そのため、早期に事実を整理し、可能な限り証拠を収集することが重要です

(2)内容証明による警告・協議

証拠が揃った段階で、まずは相手方に対し妨害の中止や原状回復を求める通知を行うのが一般的です。
その際、内容証明郵便を利用することで、どのような妨害を、いつまでに、どのように解消してほしいかを明確に伝えることができます。

内容証明には、無断工事の中止、無断賃貸の解除、登記の是正、鍵交換の撤回など、具体的な要求事項を記載します。
通知を送ることで、相手が任意に対応するケースも少なくありません。また、協議で解決できれば、訴訟に進む必要はなく、時間・費用を抑えられます。

(3)訴訟による妨害排除請求の進め方

協議で問題が解決しない場合は、妨害排除請求訴訟を提起することになります。訴訟では、妨害行為が実際に存在し、それによって共有持分権の行使が妨げられている事実を、客観的証拠に基づいて主張・立証することが求められます。

裁判手続きは、訴状の提出に始まり、相手方の反論や裁判所での争点整理を経て、証拠の提出・証人尋問などが行われ、最終的には判決が下されるという流れで進みます。
妨害排除請求では、無断工事が「変更行為」に当たるか、無断賃貸の事実があるか、妨害に該当するのかなど、細かな事実認定が争点となることが多く、提出する証拠の内容や主張の整理が非常に重要です

5 妨害排除請求と併せて検討すべき共有持分トラブルの解決策


弁護士
荒川 香遥
共有持分に基づく妨害排除請求は、妨害行為そのものを止めさせるための有効な手段ですが、それだけで共有不動産に関する根本的なトラブルが解決するとは限りません。共有状態には、意思決定の難しさや利用方法の衝突といった構造的な問題があり、妨害排除請求はあくまで「妨害の除去」にとどまる手続きだからです。以下では、妨害排除請求と並行して、または代わりに検討できる3つの解決策を紹介します。

(1)共有物分割請求(現物分割・換価分割・価格賠償)

共有関係を根本から解消したい場合に有効なのが「共有物分割請求」です。共有不動産は、原則としていつでも分割請求が可能であり、共有状態から生じるトラブルを根本的に解決できるのが大きなメリットです

裁判所が行う共有物分割の方法は、主に次の3種類です。

妨害行為が続く場合や、共有者間の関係が悪化して協議が難しい場合には、共有物分割請求によって共有状態そのものを解消することが、長期的にはもっとも合理的な解決策になることがあります。

(2)共有持分の売却によるトラブル解消

共有関係を解消したいが、裁判による分割手続きまでは望まない場合は、共有持分の売却という方法があります。自分の持分だけを売却し、共有者との関係を断つことで、トラブルから離れることができます。

最近では、共有持分を専門に買い取る不動産業者も増えており、従来より選択肢が広がっています。
共有者間の対立が激しい場合や、他の共有者が話し合いに応じない場合でも、自分の判断で持分を処分できる点が大きなメリットです。

ただし、共有持分の売却は市場流通性が低く、通常の不動産より価格が下がりやすいため、複数の業者から査定を取るなど慎重な検討が必要です。また、持分を購入した第三者が新たな共有者となるため、後々新たなトラブルを生まないよう、相手方の性質や意図にも注意が求められます。

(3)賃料相当額請求・不当利得返還請求

共有者による単独占有は妨害排除請求の対象にならないのが判例上の取り扱いです。しかし、単独占有によって利益を得ている場合は、賃料相当額請求(不当利得返還請求)という形で金銭の支払いを求めることができます。

たとえば、

  • ・一人が共有物件に住み続け、事実上無償で利用している
  • ・ある共有者が駐車スペースを独占し、経済的利益を享受している

といったケースでは、妨害排除ではなく金銭の支払いを請求するのが実務上の標準的な対応です。

6 まとめ

共有不動産で妨害行為が生じると、使用や賃料収益が妨げられるだけでなく、共有者同士の関係悪化にもつながりやすく、放置すれば問題が深刻化するおそれがあります。妨害排除請求は、無断工事や不当な登記、無断賃貸など、権利行使を実質的に阻害する行為を止めさせる有効な手段ですが、単独占有のように請求が難しいケースもあるため、状況に応じた最適な法的手段を選ぶことが重要です。

共有関係の根本的な解決を図りたい場合は、共有物分割請求や共有持分の売却、賃料相当額請求など、他の方法を併用することでスムーズに解決できる場合もあります。
共有持分トラブルでお困りの際は、共有不動産の問題解決に精通したダーウィン法律事務所にご相談ください。状況を丁寧に分析し、最適な解決策をご提案します。

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この記事を監修した弁護士

荒川香遥
  • 弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士

    荒川 香遥

    ■東京弁護士会
    ■不動産法学会

    相続、不動産、宗教法務に深く精通しております。全国的にも珍しい公正証書遺言の無効判決を獲得するなど、相続案件について豊富な経験を有しております。また、自身も僧籍を有し、宗教法人法務にも精通しておりますので、相続の周辺業務であるお墓に関する問題も専門的に対応可能です。

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