共益費とは、アパートやマンションなどの賃貸物件を維持・管理するために必要な費用をいいます。近年の物価高の影響などもあり、賃貸物件を維持・管理するにも多額の費用がかかることから、賃貸物件のオーナーの方の中には、「共益費を値上げしたい」と考えている方もいるでしょう。
賃料の増額については、賃貸人の権利として借地借家法で認められていますが、共益費に関しては増額請求の根拠が明確ではないため、共益費の増額請求の可否に関して問題になることがあります。賃料と同様に共益費についても増額請求することができるのでしょうか。
今回は、共益費の増額の可否と賃料増額請求により共益費を増額する流れについて、不動産問題に詳しい弁護士が解説します。
目次

賃貸借契約における共益費とは、共用部分の維持・管理のために必要な費用をいいます。共益費のことを「管理費」と呼ぶこともありますが、両者は同じものです。
共益費には主に以下のような費用が含まれています。
| ・共用部分の電気代、水道代
・共用灯保守、交換料 ・ごみ置き場清掃費 ・定期清掃費 ・特別清掃費 ・排水管や枡の清掃費 ・植栽剪定、管理費 ・給水ポンプ保守管理費 ・雨水貯留槽保守管理費 ・自動ドア保守点検費 ・点検費 |

近年、物価が上昇していますので賃貸物件の維持・管理にも多額の費用が必要になります。賃貸物件のオーナーの方の中には、「共益費を値上げすることはできるのだろうか」という疑問をお持ちの方も少なくないでしょう。共益費の値上げができないとなると、不足分はオーナーが負担しなければならず、賃貸経営にとって死活問題となります。
家賃の増額請求については、借地借家法により明文の規定がありますが、共益費の増額請求についてはこのような明文の規定がないため共益費の増額請求が可能であるかが問題になります。
結論から言えば共益費についても家賃と同様に賃料増額請求により増額することが可能です。
後述する裁判例では、「共益費、清掃費等も増減の必要を生ずることは賃料の場合と変わりがない」として共益費の増額請求を認めています。また、国交省の「賃貸住宅標準契約書」では、賃料の増減額要求に加え、建物の維持・管理費用の増減により共益費が不相当となったときは、賃貸人・賃借人の協議により共益費を改定することができると例示していることもその根拠の一つになります。
たとえば、電気料金の値上げ、保守管理費の値上げなどにより賃貸物件の維持管理コストが増加したときは、共益費の値上げを検討してみてもよいでしょう。

【事案の概要】
土地価格の高騰、物価の上昇、公租公課の増額、近隣の賃料に比較して不相当になったことを理由に賃貸人から賃借人に対して賃料増額請求がなされた事案です。
この事案では、共益費が本件建物のエレベーター、ボイラー等の定期点検、機械設備の保守管理など共用部分の維持、管理に関する費用であり、清掃費が本件建物内の清掃に要する費用として賃借人が負担する約定になっていることから、共益費および清掃費についても借家法(旧法)に基づく賃料増額請求に関する規定を類推適用して増額を求めたものになります。
【裁判所の判断】
裁判所は、以下のように判断して共益費および清掃費についても借家法(旧法)の賃料増額請求の規定の適用を認めました。


賃貸人は、物価高の影響により電気料金の改定、保守料金の値上げなどがあり、現状の共益費の金額では不相当な状況になったときは、賃借人に対して共益費の増額請求をすることができます。
共益費を増額する場合、まずは賃借人に対して書面により共益費を増額する旨の申し入れを行います。法的には口頭での申し入れでも可能ですが、トラブル防止のため書面を利用して共益費の増額請求の申し入れをするのが一般的です。
賃借人が共益費の増額に応じてくれたときは、合意内容をまとめた契約書を作成し、当事者双方で署名押印します。その後は合意内容に従って増額後の共益費を支払ってもらうことになります。
当事者同士の話し合いでは共益費の増額に関して合意がまとまらないときは、簡易裁判所に賃料増額請求調停の申立てを行います。賃料に関する争いに関しては、「調停前置主義」が適用されますので、当事者同士の交渉が決裂したからといっていきなり訴訟を提起することはできず、訴訟に先立って調停手続きを利用しなければなりません。
賃料増額請求調停は、基本的には話し合いの手続きになりますが、賃料に関する争いに詳しい調停委員が関与して話し合いを進めてくれますので、当事者同士の話し合いよりもスムーズな解決が期待できます。
なお、賃料増額請求調停における解決方法には、主に以下の3つの方法があります。
共益費の増額および増額後の金額に関して当事者の合意が得られた場合、調停成立により解決となります。
当事者双方の合意が得られなかったとしても、以下のような事情がある場合、裁判所が調停に代わる決定をすることができます。
・調停員会の調停が成立する見込みがなく、決定を行うことが相当であると認められること
・一切の事情を鑑みて当事者双方の申立ての趣旨に反しない内容であること
調停委員会は、以下の要件を満たすときは調停条項の裁定制度により共益費に関する争いを解決することができます。
・合意成立の見込みがない、または成立した合意が相当ではないこと
・調停申立て後に当事者間に調停委員会の定める調停条項に服する旨の書面による合意があること
賃料増額請求調停が不成立となった場合、共益費の増額を希望する賃貸人は、裁判所に賃料増額請求訴訟を提起する必要があります。
賃料増額請求訴訟で適正な共益費の金額について争いがある場合は、不動産鑑定士による鑑定が行われることがあります。
なお、裁判所の判決により共益費の増額が認められると、賃借人は不足する共益費に加えて、不足額について年1割の利息も支払わなければなりません。

近年の物価高の影響により賃貸物件の維持・管理には多額の費用がかかるようになってきています。現状の管理費の金額では大幅な赤字になるようなら、健全な賃貸経営とはいえませんので、共益費の増額を検討した方がよいでしょう。
もっとも、共益費の増額は、賃借人にとっても経済的な負担が増額する出来事になりますので、簡単には増額に応じてくれません。賃借人に対して共益費の増額の申し入れをして拒否されてしまったときは、調停や訴訟などの法的対応が必要になるためまずは弁護士に相談するようにしてください。

共益費の増額請求について明文の規定はありませんが、賃料の増額請求と同様に法的な権利として賃貸人に認められています。現状の共益費の金額が不相当な金額である場合は、賃借人に対する共益費増額請求を検討した方がよいでしょう。
もっとも、共益費の増額請求をする際には、賃借人との間でトラブルが生じるケースも多いため、不動産問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。ダーウィン法律事務所では、賃料増額請求に関する問題を豊富に取り扱っておりますので、賃料増額請求に関するお悩みは、当事務所までお気軽にご相談ください。
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