継続賃料は、賃貸借の継続している当事者間において成立する経済価値を適正に表示する賃料です。
これに対して、新規賃料は、新たに賃貸借契約を締結する際の賃料をいいます。
裁判所に賃料増額請求訴訟を提起すると、不動産鑑定士による鑑定結果などを踏まえて、最終的に裁判所が適正な賃料を判断しますが、その際には、「新規賃料」と「継続賃料」という概念を使い分けていますので、両者の違いや算出方法、考慮要素などをしっかりと理解しておくことが大切です。
今回は、賃料増額請求における「新規賃料」と「継続賃料」の違いについて、不動産問題に詳しい弁護士が解説します。
目次

新規賃料とは、新たに賃貸借契約を締結する際の賃料をいいます。
新規賃料には、主に以下のような特徴があります。
新たに賃貸借契約を締結する際に設定する新規賃料は、その後の収支計画に大きな影響を与えることになりますので慎重に決定する必要があります。
なお、新規賃料の鑑定方法としては、積算法・賃貸事例比較法・収益分析法という原則三手法を採用するのが一般的です。
継続賃料とは、賃貸借の継続している当事者間において成立する経済価値を適正に表示する賃料です。
すなわち、賃貸借契約が継続している貸主と借主との間で成立するであろう適正妥当な賃料を意味します。
継続賃料には、主に以下のような特徴があります。
賃料増額請求では、基本的には継続賃料が問題になりますので、現在の賃料が周辺の賃料相場より低かったとしてもいきなり新規賃料の水準まで増額するのは困難です。
継続賃料では、従前の合意を無視することはできませんので、現行賃料の水準を踏まえながらそれが経済事情の変化などにより不相当になっているかどうかがポイントになります。

差額配分法とは、新規賃料と継続賃料の差額を賃貸人と賃借人に配分することによって、適正な継続賃料を算出する方法です。
不動産の経済価値に即応した適正な実質賃料または支払賃料と実査の実質賃料または支払賃料との間の差額を算出し、契約の内容、契約締結の経緯などを総合的に勘案して、その差額のうち賃貸人に帰属する部分を判定して得た額を実際の実質賃料または支払賃料に加減して賃料を試算します。
なお、適正な実質賃料または支払賃料は、価格時点において予想される新規賃料であり、新規賃料の算定手法である積算法、賃貸事例比較法などによって求めます。
利回り法とは、基礎価格に継続賃料利回りを乗じて得た額に、必要経費などを加算して賃料を試算する方法です。
継続賃料利回りは、直近合意時点における基礎価格に対する純賃料の割合を踏まえ、継続賃料固有の価格形成要因に留意しつつ、期待利回り、契約締結時およびその後の各賃料改定時の利回り、基礎価格の変動の程度、近隣地域または同一需給圏内の類似地域などにおける類似の不動産の賃貸借事例等における利回りを総合的に比較考慮して求めます。
スライド法とは、直近合意時点における純賃料に対して、その後の価格時点までの変動率を乗じて変動後の価格時点の純賃料を求め、これに価格時点における必要諸経費等を加算し、賃料を試算する方法です。
変動率は、直近合意時点から価格時点までの経済情勢等の変化に即応する変動分を表す数値です。
継続賃料固有の価格形成要因に留意しつつ、土地や建物価格の変動、物価変動、所得水準の変動などを示す各種指数等や整備された不動産インデックスが用いられます。
賃貸事例比較法とは、近隣地域または同一需給圏内の類似地域に存する多数の事例を収集し、その中から適切な事例の選択を行い、これらに係る実際実質賃料に対して、必要に応じて事情補正と時点修正を行い、かつ、地域要因の比較および個別的要因の比較を行って求められた賃料を比較考量して賃料を試算する方法です。
類似性を判断する際の留意事項としては、以下の項目があります。


事情変更に係る要因とは、直近合意時点から価格時点までの期間に変動が認められる要因をいいます。
事情変更に係る要因は、さらに「経済的事由に係る要因」と「その他の要因」に分けられます。
経済的事由に係る要因には、物価変動、地価水準や建築費相場の変動、所得水準の変動、税制の変更や固定資産税路線価の変動などが含まれます。
継続賃料評価において特に気を付けるべき項目を挙げると、以下のとおりです。
その他の要因とは、後述する「諸般の事情に係る要因」のうち、直近合意時点から価格時点までの経過期間の変動に係るものをいいます。
その他の要因は、例外的に発生する事象で当該期間における契約内容の変更などが該当します。
諸般の事情に係る要因のうち、主なものを例示すると以下のとおりです。

サブリース業者の一括借入れの家賃額を決定するにあたり、周辺家賃水準の下落率をそのまま適用するのではなく、以下の事情を考慮すべきであると判断しました。

この事案では、賃料は3年ごとに見直すこととし、第1回目の見直し時は当初賃料の15%増、次回以降は3年ごとに10%増額するという内容の賃料自動改定特約の効力が問題になりましたが、裁判では、将来、固定資産税が大幅に上昇することは予見せず、かつ予見できなかったという事情が考慮され、賃料自動改定特約の効力は否定されました。
血族関係の存在及び同居扶助生活を通じた身分的つながりから、賃料等を低廉に取り決めたという事情がある事案について、裁判所は、賃借人が賃貸人と血族関係にあり、賃貸人が中学を卒業して一人前になるまでそれなりの貢献があり、かつ本件建物の改築についてもある程度の財産上の寄与があるなど、特別の主観的事情がある場合には、右主観的事情を考慮して家賃増額請求に対する相当額を定めるのが相当であると判断されました。
周辺相場よりも現行の賃料が低くなったとしても、直ちに新規賃料に相当する金額まで増額することはできません。賃料増額請求においては、新規賃料ではなく継続賃料に基づいて適正な賃料相場が定められますので、その違いをしっかりと理解しておきましょう。
ただし、適正な賃料額の算定は、一般の方では困難ですので、賃料増額請求をお考えの方は、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
ダーウィン法律事務所では、賃料増額請求に関する問題を豊富に取り扱っておりますので、賃料増額請求に関するお悩みは、当事務所までお気軽にご相談ください。
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