不動産取引においては、契約の前段階である勧誘に関するトラブルが生じることが少なくありません。販売用パンフレットの記載ミス・曖昧な表現、不正確な販売広告による勧誘、収益物件・投資物件での適合性原則違反など勧誘形態に応じてトラブルの種類も異なってきます。
勧誘段階でのトラブルは、契約の成約を逃すだけではなく、宅建業法違反による行政指導・処分や顧客からの損害賠償請求などのリスクがありますので、しっかりと理解して対応することが大切です。
今回は、不動産仲介事業者向けに、不動産取引の勧誘に関するトラブルとその注意点を不動産問題に詳しい弁護士が解説します。
目次

宅建業法は、宅地建物の取引の公正を確保するために、宅建業者による不当な取引勧誘や誤認による判断を招く行為を禁止しています。具体的な規制内容としては、以下のようなものが挙げられます。

このような不当な取引勧誘は、「業務に関し取引の関係者に損害を与える行為」、「取引の公正を害する行為」、「宅地建物取引業に関し不正または著しく不当な行為」に該当しますので、監督処分の対象となります。
おとり広告とは、売る意思のない物件または売ることができない物件について広告をすることをいいます。このようなおとり広告については、宅建業法と不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)により規制されています。
宅建業法では、以下のような広告を禁止しています。
このような広告表示をすると宅建業法違反となり、指示、業務停止、免許取消し処分の対象となります。また、6か月以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性もあります。
表示規約では、以下のような広告を禁止しています。
このような広告表示をすると表示規約違反となり、景品表示法による措置命令の対象となります。宅建業者が措置命令に従わない場合には、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。

販売用パンフレットや物件概要書の記載ミスを理由に、顧客から損害賠償請求されるといったトラブルがあります。記載ミスというと「些細なミス」と思われがちですが、不動産取引は、高額な取引になりますので、そのようなミスを放置していると顧客から不信感を抱かれてしまいますので、仲介業者としてはしっかり対応していかなければなりません。
特に、取引物件の所在地、地積、床面積などは、登記事項証明書と照合することで簡単に明らかになりますので、原資料をそのまま転記しただけでは、物件調査の基本を怠っていると評価されても仕方ありません。
宅建業者の営業活動では、ウェブサイトなどに取引物件を掲載することが一般的です。閲覧者は、宅建業者が正確な物件情報を提供しているものと信頼していますので、事実に反する情報により取引の誘因をすることや不注意により事実に反する内容・誤認を生じさせる表現は、顧客の判断を誤らせ、取引の公正を著しく害することになります。
そのため、仲介業者は、ウェブサイトに物件情報を掲載するにあたっては、物件情報が正確か、誤解を与える表現がないかを十分に調査・確認する必要があります。
具体的な事例では、

客付け業者は、売主や売主業者、他の媒介業者から物件資料の提供を受けることがあります。他の媒介業者を介して資料を収集することも物件調査の一つですが、提供された資料が正しいかどうかについて、客付け業者は、自らの責任で調査・確認することが義務付けられています。
提供された物件情報に誤りがないかどうかを調査・確認することなく、そのまま自社のウェブサイトに転載し、これを信じた顧客が契約を締結して損害が生じると、客付け業者が不法行為を理由に損害賠償責任を負うことがあります。

宅建業者は、不動産投資のために売買取引を勧誘するにあたって、顧客の属性(職業、年齢、取引の知識、経験、資力など)に照らし、投資物件の購入を勧誘することが適合しているかどうかを判断しなければなりません。これを「適合性の原則」といいます。
宅建業者が投資知識や経験がほとんどなく、不動産購入するだけの資力もない買主に対し、成約させるために必要以上に不動産の収益性や転売利益を誇張したり、収益が得られるなどと虚偽の事実を告げて勧誘し、投資物件を購入させることは不当な勧誘行為または適合性の原則に違反し、不法行為または債務不履行により賠償義務を負う可能性があります。
収益物件・投資物件の勧誘において、適合性の原則違反となった具体的なケースとしては、以下のようなケースが挙げられます。
売主業者が新聞広告で「不動産賃貸による利回りが年36%以上」、「20%のサブリースが可能」などと記載し、買主に購入を勧め、売買契約を締結すると同時にサブリースを締結したものの、約定どおりに賃料が支払われなかったという事案について、裁判所は、賃料収入がないことは建物の価値に関して隠れた瑕疵があるとして、売主業者に対する損害賠償請求を認容しました(東京地裁平成21年12月28日判決)。

宅建業者の従業員が婚活サイトなどを通じて異性に接近しデートを重ね、相手に恋愛感情を抱かせたころに不動産投資を勧め、高額な不動産を購入させるなどのいわゆる「デート商法」が問題になるケースがあります。
実際の事案では、結婚紹介所のウェブサイトを通じて知り合った女性に対し、恋愛心理を逆手にとって、宅建業者が扱う投資用ワンルームマンションの購入を勧誘する行為が違法であるとして、勧誘した男性に不法行為責任を認めたものがあります(東京地裁平成26年10月30日判決)。

不動産取引の勧誘に関するトラブルは、契約の成立前の段階であっても、具体的な状況によっては、仲介業者に債務不履行や不法行為に基づく損害賠償責任が生じる可能性があります。
このようなトラブルに直面した場合、法的知識や経験がなければ適切な対応が難しく、誤った対応により損害を拡大させてしまうリスクがあります。そのため、不正確な知識で対応するのではなく、まずは弁護士に相談するようにしましょう。不動産問題に詳しい弁護士であれば不動産取引の勧誘に関するトラブルの解決方法をアドバイスしてくれるでしょう。
トラブルが生じた顧客との対応を自社の従業員に任せると、通常の業務に支障が生じるだけでなく、従業員のメンタルヘルスにも悪影響を与えるおそれがあります。
自社の従業員では対応が難しいと感じるときはすぐに弁護士にご相談ください。弁護士に依頼すれば、トラブルの相手方との交渉を任せることができますので、仲介業者や従業員の負担を最小限に抑えることができます。また、交渉で解決できない問題については、訴訟などの法的手段により解決を図ることもできます。
不動産取引では、高額な不動産を取り扱いますので、トラブルが生じると莫大な損害が生じるリスクがあります。そのため、仲介業者にとってはトラブルの解決だけではなく、トラブルの予防も重要となります。
顧問弁護士を利用すれば、いつでも気軽に法律相談を行うことができ、不動産取引に潜むリスクなどを洗い出してもらうことができますので、トラブルの予防を図ることができます。弁護士というとトラブルが生じたときに依頼するというイメージがありますが、予防法務も弁護士の重要な役割の一つですので、将来のトラブルを回避するためにも顧問弁護士の利用がおすすめです。
不動産取引においては、取引の勧誘の場面でもトラブルが生じる可能性があります。そのようなトラブルを解決・予防するには、不動産問題に詳しい弁護士によるアドバイスやサポートが不可欠になりますので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
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