相続や離婚などをきっかけに、ひとつの不動産を複数人で所有する「共有状態」になるケースは珍しくありません。
しかし、共有関係が長く続くと、「修繕費を誰が負担するのか」「管理費を支払ってくれない」といった金銭トラブルが発生しやすくなります。
たとえば、共有している実家を兄弟の一方が居住している場合、他方が「自分は住んでいないから支払わない」と主張することがあります。一方で、建物の維持管理には継続的な支出が必要で、誰かが立て替えていると不公平感や不信感が生まれ、関係悪化に発展することも少なくありません。
このような管理費トラブルは、法律上の負担ルールを理解したうえで、正しい手順で請求・回収を行うことが重要です。
今回は、管理費の定義と内容、共有者間の負担ルール、支払いを拒否された場合の法的対応、共有関係の解消手段を、不動産問題に詳しい弁護士が解説します。
目次

共有不動産の「管理費」とは、不動産を維持・利用するために必要となる経費のことを指します。
たとえば、次のような支出が管理費の典型例です。
たとえば、相続で兄弟が共有名義になった戸建て住宅では、屋根の修理、外壁の塗装、庭木の手入れなども「管理費」に含まれます。
また、マンションの共有名義であれば、管理組合に支払う「管理費」や「修繕積立金」も対象となります。
共有不動産では、所有者それぞれの立場や使用状況に違いがあるため、「誰がどの程度負担するか」で意見の食い違いが生じることがあります。
代表的なトラブルの要因としては、
といったケースが挙げられます。
さらに、共有開始時に管理契約や費用負担ルールを明確に定めていない場合、感情的な対立へと発展しやすくなります。

共有不動産の管理費は、民法249条によって、共有者それぞれが自分の持分割合に応じて負担することが定められています。
つまり、共有不動産の維持・修繕などにかかる管理費は、各共有者が自分の持分割合に応じて支払うのが法律上の原則です。

したがって、特別な取り決めがない限り、「持分割合に応じた負担」が基本ルールとなります。
ただし、例外的に持分割合どおりでなく、使用実態に応じた分担が認められることもあります。
たとえば、
といった事情がある場合です。
実際の裁判でも、「使用・収益していない共有者に過大な負担を求めるのは不合理」として、負担割合を調整した例があります。
したがって、共有関係が始まる際には、費用分担ルールを明文化しておくことがトラブル防止の鍵となります。

まず最初に行うべきは、当事者間での話し合いです。
感情的に責め立てるのではなく、管理費の内訳・発生時期・金額・支払根拠(見積書・領収書など)を明示し、冷静に説明することが大切です。
共有者の中には、「どんな費用か知らなかった」「自分の持分に関係ないと思っていた」という誤解から支払いを拒んでいるケースも多いため、まずは事実関係を共有しましょう。
それでも支払いが得られない場合には、内容証明郵便による正式な請求を行います。
内容証明は、送付内容と日付が証拠として残るため、後の訴訟でも有効な資料になります。
内容証明郵便の文面には、以下のような点を明記するとよいでしょう。
文書で明確に通知することで、相手に心理的なプレッシャーを与え、早期解決につながることもあります。
建物の維持に必要な費用を誰も払わないまま放置すれば、損害が拡大してしまいます。
そのため、やむを得ず他の共有者が費用を立て替えて支払う場合があります。
この場合、立替えた共有者は他の共有者に対して、持分割合に応じた金額を請求(求償)することができます。
求償を行う際は、次のような証拠をそろえておくことが重要です。
これらをもとに、内容証明や弁護士を通じて返還請求を行えば、スムーズに回収を進められます。
話し合い・請求でも支払いが得られない場合は、裁判所を通じた手続を検討します。
代表的な方法は次の3つです。

共有関係が長期化し、他の共有者が繰り返し負担を拒否している場合には、共有物分割で関係を清算することが根本的な解決につながります。

共有不動産では、持分割合に応じた費用負担や管理方法が法的に定められているとはいえ、実際には、特定の共有者に負担が偏るといった現実的な不均衡が生じやすいのが問題です。
特に、
といった場合、負担と利益のバランスが崩れやすくなります。
このような状態が続くと、管理費の分担を話し合うこと自体がストレスや対立の原因となり、結果的に共有関係の維持が難しくなります。
そのため、「共有を解消し、それぞれが独立した所有関係にする」ことが、長期的にはもっとも安定した解決となるのです。
共有物分割には、大きく分けて次の3つの方法があります。
それぞれにメリット・デメリットがあり、不動産の性質や共有者の希望によって選択が異なります。
不動産を物理的に分け、各共有者が独自に所有する方法です。
たとえば、土地を区切ってそれぞれの区画を所有するケースなどが該当します。
ただし、建物の構造や土地の形状によっては実際に分けられないことも多く、実現が難しい場合があります。
一方の共有者が不動産全体を取得し、他の共有者にその持分相当額の代償金を支払う方法です。
不動産を利用している側が単独所有を望む場合に現実的な手段であり、売却の手間をかけずに共有を解消できる点がメリットです。代償金の評価は、不動産会社による査定や不動産鑑定士の鑑定などをもとに公平に決定します。
共有者間で話し合いがまとまらない場合に、裁判所を通じて共有不動産を競売にかけ、その売却代金を分配する方法です。
ただし、市場価格よりも低い金額で売却されることが多く、最終手段として位置付けられます。共有者の誰もが単独所有を望まない場合や、感情的対立が深刻な場合に選択されることが多いです。
共有物分割は、単なる話し合いだけで解決できるとは限りません。
相手が応じない場合は、裁判所に調停または訴訟を申し立てることになります。
その際に弁護士が関与するメリットは、以下のとおりです。
特に、相続で発生した共有不動産の場合、複数の相続人が絡むため意見がまとまりにくく、弁護士による調整が不可欠となるケースも多いです。

弁護士は、管理費トラブルの内容に応じて、次のような幅広い支援を行います。
法的根拠を明示した請求文書を作成し、相手に支払い義務を明確に伝えます。
自分で作成するよりも法的効果が高く、後の訴訟でも有利な証拠として活用できます。
直接のやり取りを避け、弁護士が代理人として交渉を行うことで、感情的な衝突を防ぎます。
相手が支払いに応じない場合でも、第三者を介することで冷静な対応が可能になります。
少額訴訟や支払督促、共有物分割調停など、裁判所を通じた手続きの代理を一任できます。
手続の選択・書面作成・証拠提出などを任せることで、確実かつ効率的に請求を進めることができます。
共有者同士が親族や相続人である場合、管理費トラブルが家族関係そのものの断絶につながることも珍しくありません。
自分で請求や話し合いを進めると、相手が「責められている」と感じて反発し、関係がさらに悪化することがあります。
弁護士が介入することで、
といったメリットがあります。
このように、弁護士の関与は単なる「代理」ではなく、冷静な解決を導くための緩衝役としても機能します。
弁護士に相談するメリットは、紛争解決だけではありません。
将来のトラブルを防ぐための契約や合意内容の文書化も重要なポイントです。
たとえば、次のような書面を作成することで、再発防止につながります。
これらの書面を作成しておけば、後に「そんな約束はしていない」という争いを防ぐことができます。弁護士に依頼すれば、実際の不動産の性質や共有者の状況に合わせた実効性の高い文面を作成してもらえます。
共有不動産の管理費は、原則として持分割合に応じて負担する義務があります。
しかし、現実には一部の共有者が支払いを拒むことで、他の共有者に不公平が生じるケースも少なくありません。
話し合いや請求で解決しない場合は、法的手続や共有物分割を視野に入れることが重要です。
ダーウィン法律事務所では、共有不動産の管理費トラブルに精通した弁護士が、請求対応から交渉・調停・訴訟まで一貫してサポートいたします。「支払ってくれない共有者がいて困っている」「共有関係を解消したい」とお悩みの方は、早めにダーウィン法律事務所へご相談ください。
まずご依頼の流れ(必読)をご確認いただき、お電話で相談希望を受付後、担当スタッフ、弁護士から折り返しいたします。
立場を明確にしていただく必要がありますので、ご連絡時、下記情報お伝えください