不動産を複数人で所有している場合、売却の手続きを進める上で「税金」が大きなポイントになります。共有不動産の売却には、譲渡所得税・住民税・復興特別所得税・登録免許税といった税負担が生じます。さらに、共有者ごとに課税される仕組みや、相続で取得した不動産に適用できる特例など、一般の不動産売却とは異なる注意点も少なくありません。
今回は、共有不動産の売却に関する税金をテーマに、売却時にかかる主な税金の種類と計算方法、相続や持分売却に関する特例や注意点などをわかりやすく解説します。
共有不動産を円滑かつ有利に売却するためには、税務上の知識だけでなく、共有者間の合意形成や法的対応も視野に入れることが重要です。トラブルを避け、最適な売却方法を選択するための参考にしてください。
目次

不動産の売却によって利益(譲渡所得)が出た場合に課されるのが譲渡所得税です。譲渡所得は、売却価格から取得費(購入費用など)や譲渡費用(仲介手数料など)を差し引いて計算します。
共有不動産の売却では、各共有者が持分に応じて譲渡所得を算出し、その金額に応じて課税されます。
譲渡所得には、所得税だけでなく住民税も課されます。住民税は、通常、翌年度の課税対象となり、所得税と合わせて税負担が発生します。こちらも譲渡所得の額に応じて課税され、共有者ごとに納税義務が生じます。
復興特別所得税は、東日本大震災からの復興財源確保のために設けられている税金で、所得税額に対して2.1%が上乗せされます。譲渡所得税と一体的に課税されるため、こちらも忘れずに考慮しておく必要があります。
不動産を売却する際には、登記手続きに伴い登録免許税が発生する場合があります。たとえば、持分を共有者間で移転する場合や、相続登記を済ませてから売却する場合などです。こちらは売却益に対する課税とは異なり、登記申請の際に必要となる実費です。

譲渡所得は、以下の計算式で求めます。
譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)
たとえば、売却価格が3000万円、取得費が2000万円、譲渡費用が100万円の場合、譲渡所得は900万円となります。共有不動産の場合は、各共有者の持分割合に応じて譲渡所得を按分し、それぞれに課税されます。
不動産の所有期間によって、譲渡所得税の税率は大きく異なります。

所有期間の判定は、「売却した年の1月1日時点で5年を超えているかどうか」で決まります。相続や贈与で取得した場合は、被相続人・贈与者の所有期間も引き継がれる点に注意が必要です。
相続や贈与によって不動産を取得した場合、その不動産の「取得費」は、原則として前の所有者から引き継ぎます。たとえば、親が2000万円で購入した土地を相続し、3000万円で売却した場合、取得費は、親の購入額2000万円が基準となります。
ただし、古い不動産などで購入時の資料が残っていないことも多く、その場合は「概算取得費(売却価格の5%)」を用いることができます。概算取得費を使うと課税所得が大きくなってしまうケースもあるため、可能であれば購入時の資料を探しておくことが望ましいです。

共有不動産の売却益は、各共有者の「持分割合」に応じて分割され、それぞれが納税義務を負います。
たとえば、兄弟2人で土地を1/2ずつ所有している場合、3000万円で売却して取得費や費用を差し引いた後の譲渡所得が1000万円だったとします。この場合、各共有者は500万円ずつの譲渡所得として計算され、それぞれが税金を負担することになります。
共有不動産では、共有者のうち一部だけが自分の持分を第三者に売却することも可能です。
この場合、売却した共有者だけに譲渡所得税などが課されます。残った共有者は、不動産を引き続き所有しますが、新しい共有者が加わることで権利関係が複雑になることも少なくありません。
特に、持分売却は買い手が見つかりにくく、相場より低い価格で取引される傾向があります。そのため、譲渡所得が少額または赤字(譲渡損)になるケースも珍しくありません。
不動産を売却した結果、取得費や譲渡費用の合計額が売却価格を上回ると「譲渡損」が発生します。譲渡損については、一定の条件を満たせば給与所得や事業所得などと損益通算できる場合があります。
ただし、共有不動産における持分売却では、相続や贈与の経緯、居住用であったかどうかなどにより扱いが変わるため、税務上の判断は複雑になりがちです。場合によっては「譲渡損の繰越控除」といった特例の適用も検討できるため、税理士や弁護士に相談しながら手続きを進めるのが安心です。

相続税を納めた場合には、その一部を不動産の「取得費」に加算できる特例があります。これを「相続税の取得費加算の特例」と呼びます。
たとえば、相続税を500万円納付し、その不動産の評価額が全体で5000万円だったとします。その不動産の持分を1/2相続した場合、納めた相続税のうち250万円を取得費に加算することが可能です。
これにより譲渡所得が圧縮され、課税額を減らすことができます。
被相続人(亡くなった方)が一人で居住していた住宅を相続し、その後空き家となった不動産を売却する場合には「被相続人居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の3000万円特別控除」が適用されることがあります。
この特例を使うと、譲渡所得から最大3000万円を控除できるため、課税額を大幅に減らすことが可能です。
ただし、適用には以下のような要件があります。

共有状態でも、要件を満たせば共有者ごとに特例が適用される可能性があります。
これらの特例を利用するためには、確定申告で必要書類を提出し、要件を満たしていることを証明する必要があります。代表的な書類としては、相続税申告書の写し、被相続人が居住していたことを示す住民票、耐震改修を証明する書類などがあります。
相続した共有不動産では、共有者それぞれが確定申告を行う必要があるため、手続きが煩雑になりがちです。誤った申告をすると特例が受けられない可能性があるため、早めに税理士や弁護士に相談するのが望ましいでしょう。

不動産を共有している場合、原則として売却には全員の同意が必要です。
ただし、持分のみを第三者に売却すると、新たな共有者が加わり、権利関係が複雑化するおそれがあります。また、持分売却では市場価格より低い金額でしか売れないことも多いのが実情です。
「売却したい人」と「売却したくない人」が対立するのは、共有不動産の典型的なトラブルです。この場合、話し合いで合意できなければ、共有物分割請求訴訟によって裁判所に解決を委ねるしかありません。
訴訟の結果としては、以下のようなパターンが想定されます。
いずれも裁判所の判断に従うことになるため、当事者の希望どおりの結果になるとは限りません。
共有不動産を売却した後でも、代金の分配や税負担をめぐって争いになることがあります。たとえば、
このような問題は話し合いだけでは解決が難しいため、弁護士に相談して交渉や訴訟対応を依頼するのが有効です。弁護士であれば、不動産売却に伴う税務と法律の両面からアドバイスを受けられるため、安心して手続きを進めることができます。
共有不動産を売却する際には、譲渡所得税や住民税などの税金が課され、相続不動産では特例を利用できる場合もあります。しかし、共有者ごとの課税や合意形成の問題、売却後の代金分配をめぐるトラブルなど、税務と法律が絡む複雑な課題が生じやすいのが実情です。そのため、安心して取引を進めるには、専門家によるサポートが欠かせません。
ダーウィン法律事務所では、不動産や相続問題に精通した弁護士が、税務上の特例活用から共有者間の交渉、共有物分割請求まで幅広く対応しています。共有不動産の売却でお悩みの方は、ぜひご相談ください。
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