不動産を共有している家族や親族または投資仲間同士で賃貸経営を行うケースは少なくありません。共有不動産を賃貸に出すことで安定した収益を得られる一方で、複数の共有者が関与する以上、意思決定や利益配分をめぐってトラブルが発生しやすいのも事実です。
たとえば「賃料の分配割合をめぐる争い」「修繕費の負担を誰がどの程度負うか」「一部の共有者が勝手に賃貸契約を結んでしまう」など、共有ならではの問題が起きやすく、放置すると経営が立ち行かなくなるおそれがあります。
今回は、共有不動産の賃貸経営に関する仕組みとトラブル事例、法的な解決手段、予防策を不動産問題に詳しい弁護士が解説します。
共有不動産を円滑に活用したい方はぜひ参考にしてください。
目次

「共有」とは、ひとつの物に対して複数人が持分を有している状態を指します(民法249条)。不動産でいえば、一つの土地や建物に対して、相続人や共同購入者などがそれぞれの割合に応じて権利を持つ状態です。
たとえば、親から相続した自宅を兄弟3人で持分3分の1ずつ相続した場合、その不動産は「共有不動産」となります。持分は登記簿に記録され、各人の権利割合を示しますが、物理的に土地や建物を切り分けるわけではなく、「全体を持ち合う」形で権利を有している点が特徴です。
共有者には、それぞれの持分に応じた権利と義務があります。

このように、共有者は「利益を享受する権利」と同時に「コストを負担する義務」を負っています。
共有不動産を賃貸に出す場合、誰がどのように意思決定できるかを把握することが重要なポイントです。民法では、以下のように共有不動産の意思決定のルールを定めています。
| ①保存行為(不動産を維持するための行為) 各共有者が単独で行える(例:雨漏りの修繕依頼など)。②管理行為(利用や賃貸など、通常の利用に関する行為) 持分の過半数を有する共有者の同意が必要(例:賃貸契約の締結)。 ③変更行為(売却・建替えなど不動産の本質に関わる行為) |
つまり、共有不動産を賃貸に出すためには、共有者の持分の過半数を超える同意が必要になります。一部の共有者だけが勝手に賃貸契約を結んでも無効となる可能性があるため、事前に共有者間でルールを取り決めておくことが重要です。

もっとも多いトラブルのひとつが「家賃の分配」に関する争いです。
共有不動産から得られる賃料は、本来持分割合に応じて分配されるのが原則です。しかし、実際には以下のような問題が生じることがあります。
このようなトラブルは、共有者間の信頼関係を壊す原因にもなります。
共有不動産を賃貸に出すには、持分の過半数を有する共有者の同意が必要です。しかし、賃貸条件をめぐって意見が割れるケースも少なくありません。
合意が得られない場合、契約自体が締結できず、物件が空き家になって収益機会を逃してしまうリスクがあります。
不動産経営には、定期的な管理費や修繕費の負担が伴います。共有者は、持分に応じて費用を負担するのが原則ですが、実際には以下のようなトラブルが生じることが多いです。
特に、築年数が経過した物件では修繕費が高額になるため、負担を巡る争いは深刻化しやすいといえます。
共有不動産では、全員の合意を経ずに一部の共有者が勝手に物件を貸し出してしまうケースもあります。
たとえば、持分を持つ兄弟の1人が単独で賃貸契約を結び、賃料を独占するといった状況です。この場合、契約自体が無効とされる可能性があり、借主との間でも新たなトラブルを引き起こすおそれがあります。
また、民泊や短期貸しのように物件の利用形態を変えてしまう行為もトラブルの原因の一つとなります。
共有不動産が相続によって代々引き継がれると、共有者の数がどんどん増えていく傾向があります。
このような状態では、事実上「誰も管理できない物件」となり、放置されて荒廃してしまうケースも少なくありません。

共有不動産に関するトラブルが発生した場合、まずは共有者同士で協議を行いましょう。
民法上、賃料分配や管理費用の負担などは「持分割合」に従って処理するのが原則です。法的ルールを踏まえたうえで話し合うことで、感情的な対立を抑え、現実的な合意形成につながりやすくなります。
協議で合意に達した場合は、口頭での合意だけで終わらせずに必ず契約書や覚書として書面化しましょう。
たとえば「賃料は代表者が一括受領し、月末までに各共有者の口座へ分配する」など、具体的なルールを明文化しておくことで、将来のトラブルを予防できます。
話し合いで解決が困難な場合には、次のような法的手段をとることが可能です。
共有不動産の賃料は、持分割合に応じて各共有者が受け取る権利を持ちます。
代表者が賃料を独占している場合、他の共有者は、賃料分配請求を行うことで、自身の持分に応じた賃料を取り戻すことができます。
共有状態そのものがトラブルの原因となっている場合には、共有物分割請求が有効です。
これは、民法第256条に基づき、共有不動産の分割を裁判所に求める手続きです。方法は大きく分けて以下の3つです。

特に、賃貸経営で利用している建物の場合、現物分割が難しいケースが多く、換価分割や代償分割によって共有状態を解消する方法が一般的です。

まず、もっとも大切なのは、共有者同士で賃貸経営に関するルールを事前に取り決めることです。
これらを口頭ではなく書面で取り決めておけば、後々「言った・言わない」の争いを避けられます。特に、相続で共有となった場合は、親族間の感情的な対立を防ぐためにも、文書化が有効です。
共有者間での管理や賃料分配をめぐる摩擦を減らすには、専門の管理会社に委託する方法も有効です。
これらを第三者に任せることで、共有者同士の直接的なやり取りを減らし、公平性を担保できます。管理委託料はかかりますが、トラブル予防のコストと考えれば十分に合理的です。
相続などで共有状態になった場合、持分割合は登記簿に記載されていても、収益分配の方法が明確でないケースが多く見られます。
たとえば「賃料を一旦代表者が受領するが、分配は四半期ごとに行う」「修繕費を控除してから分配する」といったルールを覚書にしておけば、共有者全員が安心して経営に参加できます。
このように、経営ルールを事前に明文化することは、トラブルを防ぐもっとも有効な方法です。将来的に相続人が増える場合を見据えて、次世代への承継ルールまで検討しておくのが望ましいでしょう。

共有不動産は、相続や贈与を経て権利関係が複雑化することが多く、誰がどの割合で持分を持つのかを正確に把握するのは簡単ではありません。また、過去の合意や口約束の有効性をめぐって争いになるケースも少なくありません。
弁護士に相談すれば、登記簿や相続関係図などをもとに権利関係を整理し、曖昧な部分を明確にできます。これにより、将来の紛争を未然に防ぐことが可能となり、安定した賃貸経営の基盤を築くことができます。
賃貸契約書や共有者間の覚書が不十分だと、賃料の分配方法や修繕費の負担をめぐってトラブルの原因となります。たとえば「賃料を代表者が受領した後の分配ルール」や「更新・解約の手続き」などを明文化しておかないと、後々の争いに発展しかねません。
弁護士に依頼すれば、契約内容を法的に有効で抜け漏れのないものに整備でき、紛争予防効果が高まります。安心して経営を進めるためにも、専門家によるリーガルチェックは欠かせません。
共有不動産をめぐる争いが激化すると裁判所での調停・訴訟に発展することがあります。
このような場合に弁護士を代理人とすれば、当事者が直接対立せずに済み、冷静にトラブルの解決を目指すことができます。
また、弁護士は、法的主張の整理や必要な証拠の提出を行うことで、有利な条件での解決をサポートしてくれます。専門家に任せることで心理的な負担を軽減しつつ、最終的な結果をより良いものにできる点は大きなメリットです。
弁護士に相談する利点は、現在のトラブルの解決だけにとどまりません。相続によって共有者が増える将来のリスクや将来的な売却・分割の可能性を見据えた契約内容の見直しなど、長期的な視点での提案が受けられます。
また、税務や登記の専門家と連携して包括的に対応できるのも大きな強みです。中長期的な安定経営を実現するためには、弁護士による戦略的なアドバイスが不可欠といえるでしょう。
共有不動産の賃貸経営は、収益を得られる一方で「賃料分配」「契約内容」「修繕費負担」「無断賃貸」「相続による共有者の増加」など、数多くのトラブルが発生しやすいのが特徴です。放置すれば経営が立ち行かなくなり、資産価値の低下につながるおそれもあります。
そのため、円滑な経営を続けるためには、共有者間のルール作りや契約書の整備、そして専門家の関与が欠かせません。
ダーウィン法律事務所では、共有不動産に関する契約書のチェックから、調停・訴訟の対応、将来の相続リスクを見据えたアドバイスまで幅広く対応しています。トラブルを抱えている方や予防策を講じたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
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