不動産を共有している場合、賃貸に出して得られる家賃収入は、共有者全員で適切に分配されるべきものです。ところが現実には、一部の共有者が賃料を独占してしまったり、管理者が分配を怠ったりするケースも少なくありません。さらに、賃借人の滞納によるトラブルが生じることもあります。
このような賃料の未払いトラブルを放置すると、人間関係の悪化だけでなく、最終的には裁判にまで発展するリスクもあります。
今回は、「共有不動産の家賃収入が未払いになる典型的なケース」や「法的に認められる請求方法」を整理し、トラブルを未然に防ぐための管理方法についても解説します。
共有不動産を持つ方、家賃収入の未払い問題で悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
目次

共有不動産では、共有者それぞれが「持分割合」を有しています。持分割合とは、共有者がその不動産にどの程度の権利を持っているかを示すもので、たとえば、兄弟2人で2分の1ずつ相続した場合は、それぞれ50%の持分を有することになります。
家賃収入は、この持分割合に応じて分配されるのが原則です。たとえば、月額20万円の家賃収入がある不動産を2分の1ずつ共有している場合、各共有者は10万円ずつ受け取る権利を持ちます。仮に1人の共有者が賃貸借契約の管理を担当していたとしても、独占して受け取ることはできず、他の共有者に適切に分配しなければなりません。
民法では、共有不動産から生じる収益は共有者全員に帰属すると定められています(民法249条)。つまり、賃借人から支払われる家賃は、管理を行う人だけのものではなく、共有者全員が平等に享受する権利を持つのです。
また、共有不動産に関する「管理行為」は、共有者の持分価格の過半数で決定できるとされています(民法252条)。ここでいう管理行為には、不動産を賃貸に出す契約や家賃収入の取り扱いが含まれるため、1人の共有者が勝手に契約内容を変更したり、家賃の使途を独断で決めたりすることはできません。
このように、共有不動産における家賃収入は「持分割合に基づいて分配される」「共有者間の合意が必要」という2つの基本ルールが存在します。これらを無視して収益を独占したり、分配を怠ったりすると、他の共有者から法的請求を受ける可能性があります。

もっとも多いのは、共有者の一人が賃借人からの家賃を受け取り、そのまま独占してしまうケースです。たとえば、兄弟で相続したアパートの管理を長男が担当している場合、賃料をすべて自分の口座に入金させ、他の共有者に分配しないといったケースです。
このような行為は、共有者全員に認められた収益分配権を侵害するもので、法的には不当利得や損害賠償請求の対象となり得ます。特に、独占した金額が大きい場合や長期間にわたる場合には、裁判での争いに発展することも少なくありません。
共有不動産では、共有者の合意によって代表者を定め、管理を一任することがあります。その場合、代表者が賃料を受け取った後に、他の共有者へ分配しなければなりません。ところが、故意に分配を怠ったり、経費と称して不透明な支出を差し引いたりするケースが問題となります。
このような状況では、共有者は代表者に対して分配請求を行うことが可能です。また、分配が不透明な場合には、領収書や通帳の開示を求め、適正に処理されているか確認することも重要です。
家賃収入トラブルは共有者側に問題がある場合だけではなく、賃借人が家賃を滞納することで生じるケースもあります。この場合、共有者間で「誰が督促するのか」「未回収分をどう処理するのか」といった責任の押し付け合いが起こり、トラブルに発展することがあります。
また、共有者の一部が「滞納分は立て替えて欲しい」と主張したり、管理体制の不備を理由に責任を追及したりするケースも少なくありません。このように、外部要因である賃借人の滞納が、内部の共有者間トラブルを引き起こす要因になるのです。

最初に試みるべきは、共有者間での協議です。家賃収入が分配されていない理由が「単なる手続き上のミス」や「経費精算の認識違い」であることも多く、冷静に話し合えば解決するケースも少なくありません。
協議の際には、賃貸借契約書・入金明細・経費の領収書などの客観的資料を確認し、分配額を明確にすることが重要です。また、共有者間で「毎月○日までに分配する」「管理口座を別途設ける」といった取り決めを行うことで、再発防止につながります。
協議で解決できない場合は、弁護士を通じて内容証明郵便で正式に請求を行う方法があります。内容証明郵便は、いつ・誰に・どのような請求を行ったかを証明できるため、相手に心理的プレッシャーを与えると同時に、裁判に発展した際の証拠にもなります。
たとえば、「あなたが受領している家賃収入のうち、私の持分に応じた金額を支払ってください」と弁護士が代理人として通知することで、相手が自主的に支払いに応じる可能性も高まります。
それでも支払いが行われない場合には、裁判所の手続きを利用します。
まずは「調停」を申し立て、第三者である調停委員を介して話し合いを行います。調停は、訴訟よりも柔軟で、時間や費用の負担も軽いため、共有者間の紛争解決に適しているといえます。
調停で合意に至らなければ、訴訟による解決を検討します。裁判では、相手が受け取った賃料や分配を怠った事実を証拠に基づいて主張し、未払い分の支払いを求めることができます。

もっとも基本的な方法は、共有者間で「管理契約」を取り決めておくことです。

といった具体的なルールを文書にしておくことで、後々の誤解や不信感によるトラブルを防ぐことができます。特に、親族間の共有では「暗黙の了解」で進めがちですが、お互いの認識の違いからトラブルに発展するケースも多いため、できる限り書面化をするべきでしょう。
共有者の誰かが直接管理すると、「賃料を独占しているのではないか」という疑念が生じやすくなります。そのため、第三者である管理会社へ業務を委託するのも有効な方法です。
管理会社に委託すれば、賃料は一度管理会社の口座に入金され、そこから必要経費を差し引いたうえで共有者に分配されます。収支報告も定期的に行われるため、透明性が高まり、共有者間の信頼関係を維持しやすくなります。
また、賃借人からの滞納や契約違反への対応も管理会社が担ってくれるため、共有者自身の負担を大幅に軽減できるメリットもあります。
どうしても共有関係がうまくいかない場合には、抜本的な解決策として「持分売却」や「共有物分割」があります。

これらは「共有関係を解消する」手段であり、長期的に見ればトラブルの根本的な回避につながります。特に、相続不動産では、複数世代にわたって共有関係が続くと問題が複雑化するため、早めに検討すべき選択肢といえるでしょう。

「相手が賃料を独占しているが、請求できるのか」「経費を差し引かれたが妥当なのか」など、状況によって請求の可否は異なります。
弁護士は、民法の規定や過去の判例を踏まえ、請求できる範囲を正確に判断することが可能です。誤った主張をして相手と無用な対立を生まないためにも、専門家によるアドバイスやサポートが不可欠です。
弁護士に相談すれば、協議による解決が望ましいのか、それとも調停や訴訟に進むべきなのかといった戦略的な判断が可能になります。特に、内容証明郵便の作成や調停・訴訟対応などの専門的知識が必要な手続きは、弁護士に任せることでスムーズに進められます。
また、弁護士を代理人に立てることで、相手との直接交渉を避けられるため、精神的負担も軽減できます。
共有者間のトラブルは感情的になりやすく、解決が長期化するリスクがあります。
弁護士は、第三者として冷静な視点を持ち、適切な解決方法を選択してくれるため、早期解決につながります。特に、訴訟になった場合、必要な証拠を整理し、裁判所に対して効果的に主張できるのは弁護士の大きな強みです。
共有不動産の家賃収入は本来、持分割合に応じて公平に分配されるべきですが、実際には一部の共有者が賃料を独占したり、管理者が分配を怠ったり、賃借人の滞納が原因で共有者間に対立が生じることがあります。
未払いが発生した場合は協議での解決を試み、それでも改善されない場合には内容証明郵便での請求や調停・訴訟といった法的手続きを検討する必要があります。ただし、最適な解決方法は状況によって異なるため、早めに専門家へ相談することが重要です。
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