持分を売却したいが相手に知られたくない…法律上のリスクとトラブル回避策を解説

不動産の持分を売却したいが、他の共有者には知られたくない──。

家族間の不和や感情的な対立を避けたい、こじれた関係をこれ以上悪化させたくないといった理由から、ひそかに持分を手放すことを検討する方もいます。

もっとも、持分の売却には他の共有者の同意が不要ですが、完全に秘密裏に進めることは現実的に難しい場合もあります。また、共有者に知られた際に起こりうるトラブルや訴訟リスクにも注意が必要です。

今回は、持分を他の共有者に知られずに売却することが可能かどうか、具体的な方法や注意点を不動産問題に詳しい弁護士が解説します。

コラム一覧

1、持分の売却は他の共有者に知られる?


弁護士
荒川 香遥
不動産の持分を売却する際、「他の共有者に知られずに済むのか?」という点は、多くの方が気にされるポイントです。実際のところ、登記簿や第三者からの伝聞により、知られてしまうケースも少なくありません。

(1)登記簿で所有者は公開される

不動産の所有者情報は、法務局に備え付けられている登記簿に記載され、誰でも閲覧可能となっています。つまり、あなたが持分を売却して新たな所有者に移転した場合、その事実は登記簿に反映され、他の共有者が調べればすぐに判明してしまいます。

特に、共有状態の不動産では他の共有者が定期的に権利関係を確認することもあり、登記情報を通じて持分の移転が発覚することは珍しくありません。

(2)売却後に第三者から知られる可能性も

共有者が登記簿を自発的に調べなくても、買主側の行動や事情によって売却が明るみに出るケースもあります。

たとえば、新しい所有者が現地を訪れて共有者に声をかけたり、リフォームなどの作業を行ったりすれば、事実上、持分の売却が知られてしまう結果となります。

また、固定資産税の納税通知書などを通じて、共有者が所有権の変更に気づくこともあります。つまり、売却後に何らかの形で情報が共有者の耳に入る可能性は否定できません。

(3)売却を隠すことは可能なのか?

持分の売却には、他の共有者の同意は必要ありませんので、理論上は持分の売却を頼共有者に知られずに進めることも可能です。

しかし、上記のとおり持分を売却した事実は、不動産登記や第三者から他の共有者に伝わるケースもあり、売却を完全に隠すのは現実的には難しいといえるでしょう。

2、持分売却を他の共有者に知られずに行う方法はある?


弁護士
荒川 香遥
「できるだけ他の共有者に知られずに持分を売却したい」と考える方も少なくありません。たとえば、家族や親族との関係が悪化していたり、これ以上のトラブルを避けたいといった事情があるケースです。しかし、実際のところ持分の売却は、どこまで秘匿できるのでしょうか。以下では、共有者への通知義務の有無や登記との関係について詳しく説明します。

(1)共有者への通知義務はあるのか

不動産の持分を売却する際、他の共有者に通知する義務は法律上存在しません。つまり、自分の持分については、共有者に断ることなく自由に第三者へ売却することが可能です。共有物全体を処分する場合とは異なり、自己の持分のみであれば単独処分が認められているためです。

関係性が複雑な場合ほど、黙って売却するのではなく事前に弁護士を通じて調整することが望ましいといえるでしょう。

(2)持分譲渡の契約と登記の注意点

売買が成立し、持分を移転したあとは、持分移転登記が行われます。この登記によって、法務局の登記簿に新しい所有者の氏名と住所が記載されることになります。そして、この登記簿は、原則として誰でも閲覧できるため、他の共有者が登記簿を確認すれば、売却の事実は明らかになります。

なお、登記をあえて行わずに売却するという選択肢も理論上は存在しますが、現実的ではありません。なぜなら、登記をしない限り、買主は第三者に対して自らの所有権を主張することができないからです。買主にとって大きなリスクとなるため、登記を伴わない売却に応じれくれる買主はいないでしょう。

3、持分売却で生じやすいトラブルと法的リスク


弁護士
荒川 香遥
持分の売却は、共有者にとって予期せぬ出来事となることも多く、場合によっては深刻なトラブルに発展することもあります。特に、関係性が複雑な家族や親族間では、感情的対立を引き金にトラブルに発展するリスクが高くなります。以下では、実際に起こり得るトラブルや法的リスクについて詳しくみていきましょう。

(1)他の共有者からの共有物分割請求

持分の売却後、買主が新たな共有者となった場合、他の共有者との利害が一致しないことも多く、結果として「共有状態を解消したい」と考える共有者から、共有物分割請求が提起されることがあります。

共有物分割請求とは、共有状態を解消するために、不動産を分筆・売却・競売するなどして、金銭や物理的に分け合う法的手段です。特に、持分のみを取得した不動産業者や投資目的の第三者が関与すると、共有者との協調が難しくなり、裁判所での競売手続きに発展することもあります。

競売になると、不動産全体の市場価値よりも低い価格で処分されるおそれがあり、関係者全員にとって不利益になる可能性があるため、慎重な対応が必要です。

(2)感情的対立による妨害や訴訟

共有者に無断で持分を売却した場合、「裏切られた」と感じた共有者から感情的な反発を受けることがあります。たとえば、新所有者が不動産の使用を求めた際に、他の共有者が使用を妨害したり、連絡を無視するなどの嫌がらせを行うケースも報告されています。

さらに、感情的な対立が高まると、損害賠償請求や共有関係に基づく訴訟にまで発展することもあります。こうした争いは長期化しやすく、当事者の精神的負担や弁護士費用などの経済的負担も大きくなります。

(3)売却先の業者トラブルにも要注意

持分売却を急ぐあまり、悪質な不動産業者や投資会社などに安易に売却しようとすると、買主側とのトラブルに発展するリスクもあります。たとえば、売買契約後に「登記手続きを急かされる」「契約内容に不備がある」といったケースです。

また、持分のみを買い取った業者のなかには、他の共有者に対して意図的に圧力をかけて買取交渉を進めるような、強引な手法を取る場合もあります。結果として、自分が売却した持分が原因で他の共有者との関係がさらに悪化してしまうおそれもあります。

4、共有者との関係を壊さず売却するためにできること


弁護士
荒川 香遥
持分を売却する際、法的には共有者の同意が不要であるとはいえ、感情的な対立や関係悪化を避けたいと考えるケースも少なくありません。特に、家族間や親族間の共有関係では、売却を機に修復困難な関係になってしまうこともあります。以下では、共有者との関係を維持しつつ、トラブルを回避して持分を売却するための具体的な方法を紹介します。

(1)弁護士を通じた調整・通知

もっとも効果的な方法のひとつが、弁護士を通じて売却の意向や今後の方針を共有者に説明してもらうことです。

法律の専門家である弁護士が中立的な立場から事実関係を整理し、法的根拠を示したうえで通知や交渉を行えば、感情的な対立を和らげる効果があります。

また、弁護士が関与することで、共有者が「一方的に売却された」と感じにくくなり、建設的な話し合いが進みやすくなります。相手との関係を完全に断ちたくない場合やトラブルを未然に防ぎたい場合には、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

(2)共有不動産全体の売却や共有物分割との比較

持分売却以外にも、不動産全体を売却して現金化し、共有者全員で分け合うという方法もあります。この方法は、高値で売却しやすいというメリットがあり、結果的に経済的にも有利になる可能性があります。

これらの方法は、共有者全員が合意する必要はありますが、長期的な関係性の悪化を避けるためには有効な選択肢です。

(3)トラブル回避のための合意形成の工夫

売却を進める際には、できる限り共有者の理解を得られるよう、丁寧な説明と情報共有を行うことが大切です。自分の事情や考えを正直に伝え、相手の意見にも耳を傾ける姿勢を見せることで、相互理解が生まれやすくなります。

また、話し合いの中で合意内容を文書化しておくことも重要です。後々の認識違いや誤解を防ぎ、円滑な手続きにつながります。

不動産の共有は長期にわたる関係性のうえに成り立っているため、法的な手続きだけでなく「信頼関係の維持」も同じくらい重要です。安易に独断で売却を進めるのではなく、共有者との合意形成を図ることが、円満な解決への近道となります。

5、まとめ

不動産の持分は、共有者の同意がなくても売却できます。しかし、売却後は登記簿を通じて他の共有者に知られてしまう可能性が高く、完全に秘密裏に売却することは現実的には困難です。さらに、持分売却は、感情的な対立や訴訟リスク、共有物分割請求などの法的トラブルに発展する可能性もあります。

このようなリスクを回避し、共有者との関係を壊さずに持分を手放すためには、弁護士の関与による事前調整や共有物全体の売却・分割といった他の手段も視野に入れることが重要です。

持分売却をめぐるトラブルは、対応を誤ると長期化しやすいため、慎重な判断と専門家のサポートが不可欠です。円満な解決を目指すのであれば、早めに不動産問題に強いダーウィン法律事務所までご相談ください。

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この記事を監修した弁護士

荒川香遥
  • 弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士

    荒川 香遥

    ■東京弁護士会
    ■不動産法学会

    相続、不動産、宗教法務に深く精通しております。全国的にも珍しい公正証書遺言の無効判決を獲得するなど、相続案件について豊富な経験を有しております。また、自身も僧籍を有し、宗教法人法務にも精通しておりますので、相続の周辺業務であるお墓に関する問題も専門的に対応可能です。

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