近年、夫婦が住宅や土地などの不動産を購入する際に、単独名義ではなく夫婦共有名義にするケースが増えてきています。これには購入資金、税務対策などさまざまな事情が絡んだ上での判断ですので、不動産を夫婦共有名義にすることも不動産購入の選択肢の一つといえるでしょう。
しかし、夫婦共有名義の不動産にはメリットだけでなく、デメリットもありますのでそれをよく理解した上で決断することが大切です。万が一、夫婦間で共有名義の不動産に関するトラブルが生じたときは、共有名義の解消を検討してみてもよいかもしれません。
今回は、不動産を夫婦共有名義にすることで生じるトラブル事例とその解決方法について、不動産問題に詳しい弁護士が解説します。
目次

近年は共働き世帯が主流となり、住宅の購入資金やローンを夫婦で共同負担するケースが一般的です。このようなケースでは、出資割合に応じて不動産の共有持分割合が設定されますので、それにより不動産が夫婦共有名義になります。
共働き夫婦では、「家計も資産も協力して築くもの」という意識が強く、不動産という大きな資産を夫婦で平等に持ちたいという価値観も共有名義を選ぶ背景にあります。
登記を単独名義にしてしまうと、実際に負担した側が経済的リスクだけ負う不公平な状況になるため、共有名義にすることでリスクや権利のバランスを確保しています。
不動産を共有名義にすることで、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられる可能性があります。条件を満たせば、夫婦両方の所得から控除が受けられるため、トータルでの節税効果も見込めます。

不動産を夫婦共有名義にするメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。
住宅ローンを組む際、夫婦の共有名義にすることで、それぞれの収入を合算して借入審査を受けられる「収入合算」や「ペアローン」の利用が可能になります。
これにより、以下のようなメリットが得られます。
このように、住宅ローンの選択肢が広がることは大きなメリットといえるでしょう。
共有名義で住宅ローンを契約し、各自が返済をしている場合、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられる可能性があります。
住宅ローン控除とは、年末時の住宅ローン残高に応じて所得税や住民税の控除を受けられる制度です。具体的には、新築住宅の場合は最大13年間、中古住宅の場合は最大10年間にわたって、年末の住宅ローン残高の0.7%が控除されます。
住宅ローン控除には、控除額の上限が定められていますが、夫婦二人で控除を受ける場合、控除額の上限は夫婦それぞれに適用されますので、単独で住宅ローン控除を受けるよりも控除額が多くなるというメリットがあります。
夫婦共有名義にすることで、将来的に片方の配偶者が亡くなった場合の相続時に、相続税の負担を軽減できるというメリットがあります。

不動産は、高額な資産になりますので相続財産に不動産が含まれていると、相続税の負担も大きくなります。将来の相続税負担を軽減したいなら、夫婦共有名義も有効な手段といえるでしょう。
不動産を夫婦共有名義にすることで借入や節税の面でメリットがありますが、将来的なライフイベントにおいて不都合が生じることもあります。
以下では、不動産を夫婦共有名義にすることの代表的なデメリットを紹介します。
共有名義の不動産は、原則として共有者全員の同意がなければ売却できません。
そのため、一方が売却したいと考えても、もう一方が反対すれば共有不動産の売却は困難です。
また、賃貸に出したり担保に入れるなどの行為も、基本的には共有者の同意が必要です。
夫婦関係が円満であれば、不動産を処分したり、担保に入れる場合でもお互いに足並みをそろえて行動することができますが、夫婦関係が悪化した状態や離婚してしまうと相手の協力が得られず、不動産の処分ができないまま放置しなければならない状態になります。
夫婦が婚姻後の購入した不動産は、夫婦の共有財産として財産分与の対象になります。
しかし、不動産が夫婦の共有名義になっていると以下のようなトラブルが生じる可能性が高くなります。
また、共有名義の住宅ローンが残っている場合には、離婚後の住宅ローンの負担をどうするのかも考えなければならず、非常に複雑な状況になります。
離婚時に不動産の扱いで揉めた結果、離婚が成立するまで長期化するケースも少なくありません。
共有名義で住宅ローン控除を受ける場合、それぞれの持分に応じて各自の所得から控除を受ける仕組みになっています。
しかし、以下のような状況になると、控除の恩恵が十分に受けられなくなる場合があります。
このように、収入状況の変化によって節税メリットが薄れることがあり、「せっかく共有にしたのに結果的に損をした」というケースも実際に起きています。

| 【事例】
夫婦で住宅を共有名義(持分:50%ずつ)で購入し、住宅ローンも連帯債務で返済していたが、離婚時に「どちらが不動産を引き取るか」「持分をどうするか」で対立。売却か住み続けるかも決まらず、協議が難航。 |
離婚時には、財産分与により不動産の共有状態を解消することが可能です。
しかし、共有状態を解消するには、お互いの合意がなければ進められず、住宅ローンが残っている場合には、金融機関の承諾も必要になります。そのため、財産分与と住宅ローン返済義務が複雑に絡む結果、離婚協議が難航するというケースも少なくありません。
夫婦関係が円満であれば、不動産を夫婦共有名義にしておくことでさまざまなメリットを享受できますが、夫婦関係が悪化すると一転してデメリットの方が大きくなってしまいます。
【解決方法】
このようなトラブルが生じると当事者同士の話し合いでは解決できないケースが多いです。
そのような場合は、家庭裁判所の離婚調停や離婚裁判などで分割方法を決定することになります。離婚時の財産分与の問題については、法的観点から検討すべき事項が多数ありますので、専門家である弁護士に対応を任せた方がよいでしょう。
| 【事例】
元夫が死亡し、夫の共有持分が子ども2人に相続されたことで、妻+子ども2人の三者での共有状態に。共有不動産には妻が住んでおり、子ども2人は不動産の売却を希望しているが、妻は反対しているため不動産が「塩漬け」になってしまった。 |
共有不動産の売却には、共有者全員の同意が必要になります。共有不動産に相続が発生すると共有者が増えることで、意思統一が困難になる結果、共有不動産の処分や活用に支障が出るケースも少なくありません。
【解決方法】
相続時に共有不動産が売却できないトラブルを回避するには、相続の時点で共有状態にしないことが重要です。
生前に遺言書を作成して共有持分を元配偶者に遺贈することで相続発生時の共有トラブルを回避することができます。遺言書がなくて共有状態が発生してしまったときは、共有者間の協議で共有持分を買い取るための交渉を行うことになりますが、話し合いで解決できないときは、裁判所に共有物分割請求訴訟を提起します。

不動産の夫婦共有名義を解消するもっともシンプルな方法は、共有不動産全体を売却する方法です。共有不動産全体を売却し、売却代金を夫婦の持分割合に応じて分け合うだけですので、不動産の権利関係で揉めることもありません。
ただし、共有不動産全体を売却するには、夫婦2人の合意が必要になりますので、お互いの足並みをそろえる必要があります。また、オーバーローンの状態で不動産を売却するには、金融機関の承諾も必要になりますので、事前に相談をしてから進めるようにしてください。
夫婦が離婚するという場合には、離婚時の財産分与が夫婦共有名義を解消する絶好の機会となります。これを逃すとお互いに連絡が取れなくなったり、相手の協力が得られないなどの理由で共有状態の解消が困難になるため、財産分与の機会に共有状態を解消するようにしましょう。
なお、離婚時の財産分与で共有持分を譲渡すれば、贈与税の課税を回避できるというメリットもあります。
夫婦間で共有状態の解消に関する合意がまとまらないときは、裁判所に共有物分割請求訴訟を提起するという方法を検討してみましょう。
共有物分割請求訴訟では、裁判所が以下の方法により共有関係の解消を命じます。

共有物分割請求訴訟を提起しなければならないほど問題がこじれるようであれば、専門家である弁護士のサポートが不可欠となりますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
一般的に共有不動産は、さまざまなリスクがあるため、「共有は避けた方がいい」と言われることがあります。しかし、不動産を夫婦共有名義にすることは、借入や節税などのメリットがあるため、必ずしもそれがあてはまるわけではありません。
しかし、離婚や相続などのイベントが生じたときは、共有状態を解消する絶好の機会といえます。この機会を逃すと後で共有状態を解消するのは困難になりますので、早めに弁護士に相談して共有状態の解消に向けた手続きを進めていきましょう。
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