賃貸借契約で共有物の管理行為に該当する具体例を弁護士が解説

共有物の管理行為をするには、共有者の持分の過半数の同意が必要になります。これは共有物が不動産であっても同様です。そのため、共有不動産をお持ちの方の中には「どのような行為が共有物の管理行為にあたるのだろうか?」などの疑問を抱く方もいると思います。

共有不動産は、処分行為・管理行為・保存行為のうちどれに該当するかによって共有者の協力の程度が変わってきますので、しっかりと区別して理解しておくことが大切です。

今回は、賃貸借契約で共有物の管理行為に該当する具体例を解説します。

コラム一覧

1、共有不動産の管理行為とは


弁護士
荒川 香遥
共有不動産の管理行為とはどのようなものなのでしょうか。以下では、共有不動産の管理行為に関する概要を説明します。

民法では、共有物の管理に関して「共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する」と定めています(民法252条)。

共有物の管理とは、共有物の性質を変えない範囲の利用行為または改良行為のことをいいます。共有不動産についても、民法の共有物の管理に関する規定が適用されますので、以下のような利用・改良行為については、共有者の共有持分の過半数で決めなければなりません。

共有不動産の管理行為で特に問題になるケースが、共有不動産の賃貸借契約に関する事項ですので、以下では賃貸借契約における共有不動産の管理行為に該当するものについてみていきましょう。

2、【賃貸借契約】共有不動産の管理行為に該当するもの


弁護士
荒川 香遥
賃貸借契約に関して共有不動産の管理行為に該当するものには、どのようなものがあるのでしょうか。以下で詳しくみていきましょう。

(1)賃貸借契約の締結

賃貸借契約の締結は、一般的には共有物の利用行為にあたりますので、管理行為として共有者の共有持分の過半数で決めることができます。しかし、賃貸借契約の中には共有者による目的物の使用・収益を長期間にわたって制約し、事実上共有物の処分に近い効果をもたらすものもありますので、これについては共有者全員の合意が必要になります。

賃貸借契約の締結に関して、共有物の管理行為と処分行為を分ける基準は、短期賃貸借であるかどうかです。賃貸借契約の目的物に応じた以下の期間を超えない賃貸借契約であれば、「短期賃貸借」として共有物の管理行為にあたります

①樹木の植栽または伐採を目的とする山林の賃借権等……10年

②①の賃借権等以外の土地の賃借権等……5年

③建物の賃借権等……3年

④動産の賃借権等……6か月

他方、借地借家法の適用のある賃借権の設定は、契約期間内での終了が確保されていないため、目的物の使用・収益を長期間にわたって制約することから、共有物の処分行為に該当し、共有者全員の合意がなければ無効となります。

ただし、一時使用目的の賃貸借や存続期間が3年以内の定期建物賃貸借であれば、共有物の管理行為として共有持分の過半数で決めることができますが、更新がないことなど所定期間内に契約が終了することを明確にしておかなければなりません。

(2)賃借権譲渡の承諾

共有不動産の賃貸をしていると賃借人から賃借権譲渡の承諾を求められることがあります。

このような賃借権譲渡の承諾は、共有物の管理行為に該当し、共有者の共有持分の過半数で決めることができます

なお、賃借権譲渡の承諾に関して、裁判例では以下のように判示しています。

【東京地裁平成8年9月18日判決】

既に共有物につき共有者全員の同意により民法602条所定の期間を超えた賃借権が設定されている場合において、賃借権の譲渡について承諾する行為は、原則として共有者に格別の不利益を被らせるものではないから、賃借権の状態が新たな賃借権の設定と同視され、それを承諾していない他の共有者の利益を格別に害するなどというべき特段の事情のない限り、共有持分の価格の過半数を有する共有者の同意があれば足りる管理行為というべきである。

(3)賃料変更の合意

共有不動産の賃貸借契約において、賃借人との間で賃料を変更する合意をすることは、共有物の管理行為に該当し、共有者の共有持分の過半数で決めることができます

なお、賃料変更の合意に関して、裁判例では以下のように判示しています。

【東京地裁平成14年7月16日判決】

一般に共有物の賃貸借契約において賃料変更の合意は、共有物の管理行為に該当し、賃貸人である共有者の過半数でこれをすることができるものと解される。

(4)賃料増額請求

共有不動産の賃貸借契約において、共有者である共同賃貸人が賃借人に対して賃料増額請求をすることは、共有物の利用に関する事項であり、単に現状維持のための保存行為とはいえません。そのため、共有物の管理行為に該当し、共有者の過半数で決めなければなりません。

(5)賃貸借契約の解除

共有不動産の賃貸借契約において賃貸借契約を解除することは、共有物の管理行為に該当し、共有者の共有持分の過半数で決めることができます

一般的に契約を解除する場合、当事者の一方が複数人であるときは、その全員からまたは全員に対してのみ解除できるという「解除の不可分性」(民法544条1項)というルールがありますが、共有物の賃貸借契約には解除の不可分性は適用されませんので、共有者全員の合意までは必要ありません。

3、民法改正により共有物の管理の範囲が拡大・明確化


弁護士
荒川 香遥
以前は、共有物の管理行為と処分行為の区別があいまいで、どちらの該当するのかが争いになるケースも少なくありませんでした。そこで、改正民法では、共有物の「管理」の範囲を拡大・明確化し、以下のような改正がなされています。

(1)軽微変更についての規律の整備

共有物に変更を加える行為であっても形状または効用の著しい変更を伴わないものについては、共有者の共有持分の過半数で決定することができるようになりました

形状の変更」とは、外観や構造などを変更すること、「効用の変更」とは、機能や用途などを変更することをいいます。どのような行為が形状または効用の著しい変更に該当するかについては具体的な事案によりますが、建物の外壁や屋上防水などの大規模修繕工事や砂利道のアスファルト舗装などは、基本的には共有物の形状または効用の著しい変更を伴わないものにあたると考えられます。

(2)短期賃貸借等の設定についての規律の整備

改正前民法では、どの程度長期の賃貸借になれば変更行為になるのかの基準が不明確であったため、比較的短期の賃貸借契約であっても念のため共有者全員の同意を求めるケースが多く、共有物の有効活用が阻害されていました。

改正民法では、共有物ごとに何年までの賃貸借であれば管理行為として行うことができるのかが明確になりました。具体的には、共有物ごとに以下の期間を超えないものについては、管理行為として共有者の共有持分の過半数で決定することが可能です。

4、共有不動産の処分・管理・保存行為に関するお悩みは弁護士に相談を


弁護士
荒川 香遥
共有不動産の処分・管理・保存行為に関してお悩みの方は、不動産問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

(1)共有不動産の処分・管理・保存行為のどれにあたるのか判断できる

共有不動産は、処分・管理・保存行為のどれにあたるかによって必要な共有者の同意が変わってきます。処分行為にあたるにもかかわらず共有持分の過半数の合意しか得られていない場合、当該行為は無効になってしまいますので、これから予定している行為がどの類型に該当するかを正確に判断することが重要です。

不動産問題に詳しい弁護士であれば、予定している行為が処分・管理・保存行為のどれにあたるのか正確に判断することができますので、誤った判断により無効になるリスクを回避することが可能です。

(2)共有不動産に関するトラブルに対応可能

共有不動産は、複数の共有者が関与するため意見の対立などにより共有不動産の処分や管理に支障が生じることがあります。また、一部の共有者の所在がわからず全員の同意が得られないため、適切な利用や管理がなされず共有不動産が長期間放置されているケースも少なくありませんでした。

改正民法では、裁判所を通すことで所在不明の共有者を除いて共有物の管理や変更を行うことが可能になりました。このような手続きも弁護士に任せればスムーズに行うことができます。

(3)共有関係を解消・離脱するためのサポートができる

共有不動産から生じるトラブルが煩わしいと感じるときは、共有関係を解消・離脱することで面倒なトラブルから解放されます。

共有関係を解消・離脱する方法には、共有物分割請求、共有持分の譲渡、共有持分の放棄などさまざまな方法があります。具体的な状況によって選択すべき手段が変わってきますので、まずは弁護士に相談して適切な方法をアドバイスしてもらいましょう。

また、弁護士に依頼すれば共有関係を解消・離脱するための交渉や裁判などの手続きをすべて任せることができますので、ご自身の負担を大幅に軽減することが可能です。

5、まとめ

共有不動産の賃貸借契約においては、共有物の管理が問題になることが多いです。共有物の管理に該当するか処分に該当するかによって、必要な共有者の合意要件が異なりますので、正確に判断することが重要です。

不動産問題に詳しい弁護士であれば、どちらにあたるのかわかりにくい事案であっても正確に判断することができますので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。ダーウィン法律事務所では、不動産に関する問題を豊富に取り扱っておりますので、共有不動産に関するお悩みは、当事務所までお気軽にご相談ください。

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この記事を監修した弁護士

荒川香遥
  • 弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士

    荒川 香遥

    ■東京弁護士会
    ■不動産法学会

    相続、不動産、宗教法務に深く精通しております。全国的にも珍しい公正証書遺言の無効判決を獲得するなど、相続案件について豊富な経験を有しております。また、自身も僧籍を有し、宗教法人法務にも精通しておりますので、相続の周辺業務であるお墓に関する問題も専門的に対応可能です。

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