賃貸借契約において賃料が不相当な金額になったときは、当事者間の話し合いによって決めるのが原則ですが、当事者間の協議が調わない場合は、裁判所に適正な賃料の額を決めてもらう必要があります。
もっとも、賃料増額請求では、「調停前置」が適用されますので、賃料増額請求訴訟を提起する前提として、裁判所に賃料増額請求調停の申立てをしなければなりません。賃料増額請求の調停前置には、例外もありますので適用範囲をしっかりと押さえておくことが大切です。
今回は、賃料増額請求に適用される調停前置の適用範囲と例外について、不動産問題に詳しい弁護士が解説します。
目次

調停前置とは、訴訟を提起する前にまずは調停手続きを経なければならないという制度です。

賃料増額請求事件で調停前置の制度が設けられた趣旨は、当事者間の話し合いにより解決するのが望ましい性格の紛争であるからです。
賃貸借契約は、長期間の継続的な契約関係になりますので、賃料に関する争いが生じたとしても、裁判所が介入するのではなく、当事者間の話し合いにより円満に解決することが望ましいと考えられています。また、賃料に関する紛争は、比較的少額な問題であることが多いため、時間と費用をかけて裁判で争うよりも調停により迅速かつ低廉に解決するのが望ましいと考えられています。
調停前置というと一般的に家事事件に適用される制度になりますが、家事事件の場合は、「法は家庭に立ち入らず」という趣旨で設けられた制度です。すなわち、家庭内の紛争は、当事者同士の話し合いで解決するのが望ましいと考えらえており、賃料増額請求に適用される調停前置とは若干趣旨が異なります。

調停前置は、当事者同士の話し合いによる解決が望ましいという趣旨で適用されます。そのため、そもそも相手方が調停期日に参加する見込みがない場合には、調停前置を適用する前提を欠いていますので、例外的に調停前置は適用されません。
相手方が調停期日に参加する見込みがないケースとしては、相手方が行方不明などの場合が考えられます。
賃料増額請求調停を申し立てたとしても、調停が成立する見込みがないという場合は、調停手続きを利用する意味がありませんので、例外的に調停前置は適用されません。
たとえば、過去に何度も地代に関する紛争が生じており、毎回訴訟に至っているようなケースであれば、調停による解決は期待できませんので、いきなり訴訟を提起できる可能性が高いでしょう。
賃料増額請求調停では、当事者間の話し合いにより適正な賃料額を模索していくことになります。その際には、不動産鑑定士による鑑定が行われ、適正な賃料相場が提示されることもあります。
他方、当事者の合意により賃料を変更し、変更後の賃料を請求する事案については、合意の有無や合意内容が主な争点となります。これは、一般的な賃料増額請求のように、客観的に適正な賃料額を模索するという性質のものではなく、証拠に基づき合意の有無・内容を認定していくものになりますので、調停ではなく、訴訟手続きの方が適しているといえます。
そのため、当事者の合意で賃料を変更したケースについては、例外的に調停前置が適用されず、いきなり訴訟提起をすることができます。
賃貸借契約締結時に「賃料改定特約」が設けられることがあります。賃料改定特約とは、一定期間ごと賃料を自動的に増額または減額することを内容とする特約です。賃料改定をめぐって当事者同士でトラブルが生じるのを避けるために利用されることが多い特約になります。
当事者間で賃料に関する争いが生じていたとしても、その内容が賃料改定特約の有効性である場合には、調停前置が適用される賃料増額事件には該当しませんので、調停前置の適用対象外となります。

調停前置が適用される事件で、調停を経ることなく訴訟を提起すると、裁判所が職権により事件を調停に付します。これを「付調停」といいます。

調停前置が適用される事件であれば、基本的には付調停により訴訟ではなく賃料増額請求調停の手続きに回されてしまいます。
しかし、調停前置が適用されないケースであれば、付調停ではなく訴訟による審理を行うこともあります。訴訟による審理を優先させるかどうかは、最終的には裁判所の判断に委ねられていますので、付調停になったとしても不服申し立てをすることはできません。

調停前置は、単に調停の申立てをすればよいというわけではなく、調停手続きにおいて当事者間の協議が十分に行われているかどうかによって判断されます。
そのため、賃料増額請求調停において、当事者間の協議がほとんど行われることなく調停不成立となった場合、その後訴訟をしたとしても調停前置の要件を満たしておらず、付調停となる可能性もあります。
このように調停前置を満たすかどうかは、実質的に判断されますので、賃料増額請求調停においてしっかりと話し合いを行うことが大切です。
調停を取り下げると、調停申し立ての効力が遡及的に消滅しますので、調停の申立て自体がなかったものとみなされます。調停の取り下げには、相手方の同意は必要なく、書面や口頭での申し出により調停を取り下げることができます。
もっとも、賃料増額請求調停が取り下げられたとしても、調停期日において当事者が十分な協議をしたといえる場合には、調停前置の要請を満たしているとして、訴訟提起が認められるケースもあります。
このように調停取り下げの場面において、調停前置を満たすかどうかは実質的に判断されます。
賃料増額に関する争いを解決するには、専門的な知識と経験が不可欠になりますので、知識や経験に乏しい一般の方では対応が困難だといえます。また、誤った対応をしてしまうと、本来であれば話し合いで解決できたはずの問題が、訴訟にまで発展するリスクもあります。
そのため、賃料増額に関する争いが生じたときは、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。弁護士であれば、当事者に代わって相手方と交渉をすることができますので、冷静な話し合いにより円満な解決を図ることが可能です。また、交渉が決裂したとしても、調停や訴訟手続きまで任せることができますので、トラブルが解決するまで安心して任せることができます。
賃料増額請求事件には、調停前置が適用されますので、原則として訴訟提起前に調停手続きを経なければなりません。ただし、例外的に調停手続きを経ることなく訴訟を提起することができるケースもありますので、ご自身のケースがどちらに該当するか判断するためにも、まずは専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
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