法定地上権とは?共有不動産の競売による法定地上権の成否を解説

法定地上権とは、競売により土地と建物の所有者が別々になったときに、建物所有者が土地を利用することができる法律上の権利です。

土地や建物が共有になっているときでも法定地上権が成立しますが、共有不動産の場合の法定地上権の成否は、非常に複雑ですので、共有不動産をお持ちの方は、しっかりと整理して理解しておかなければなりません。

今回は、共有不動産の競売による法定地上権の成否について、不動産問題に詳しい弁護士が解説します。

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1、法定地上権とは


弁護士
荒川 香遥
法定地上権とはどのような権利なのでしょうか。以下では、法定地上権の定義と地上権との違いについて説明します。

(1)法定地上権が必要な理由

法定地上権とは、競売により土地と建物の所有者が別々になったときに、建物所有者が土地を利用することができる法律上の権利です。

法定地上権が認められれば、土地と建物の所有者が別々になったとしても、建物所有者には土地を使用する正当な権利がありますので、建物に住み続けることができます

(2)法定地上権と地上権との違い

地上権とは、他人の土地を利用する権利で、地上権の設定を受ければ、土地の所有者の承諾がなくても土地の譲渡、転貸、担保の設定などを行うことができます。

法定地上権も地上権の一種ですが、地上権は、土地の所有者との契約によって発生する権利であるのに対して、法定地上権は、一定の要件を満たせば法律上当然に発生する権利であるという違いがあります。

2、法定地上権の成立に必要な4つの要件


弁護士
荒川 香遥
法定地上権は、どのような場合に発生するのでしょうか。以下では、法定地上権の成立に必要となる4つの要件を説明します。

(1)抵当権設定当時に土地上に建物が存在していた

法定地上権の成立要件の1つ目は、抵当権設定当時に土地上に建物が存在していることです。

抵当権設定当時に土地上に建物が存在しておらず、その後に建物が建てられたようなケースでは、法定地上権は成立しません。なぜなら、このようなケースで法定地上権の成立を認めてしまうと、更地として土地を評価した金融機関が不利益を被るおそれがあるからです。

なお、建物の登記の有無は要件に含まれませんので、未登記建物であったとしても法定地上権の成立に影響はありません

(2)抵当権設定当時に土地と建物の所有者が同じ

法定地上権の成立要件の2つ目は、抵当権設定当時に土地と建物の所有者が同じであることです。

抵当権設定当時に土地と建物の所有者が別々であるようなケースでは、そもそも地上権や賃借権などが設定されていますので、法定地上権の成立を認めなかったとしても、建物所有者に不測の損害が生じることがないというのがその理由です。

(3)土地・建物の一方または双方に抵当権が設定されている

法定地上権の成立要件の3つ目は、土地・建物の一方または双方に抵当権が設定されていることです。

土地・建物の一方または双方に抵当権が設定されていると、競売により土地と建物の所有者が別々になってしまうことがあるため、法定地上権の成立を認める必要があるからです。

なお、強制競売や公売により土地と建物の所有者が別々になった場合は、抵当権設定の有無にかかわらず法定地上権が成立します。

(4)競売により土地と建物の所有者が別々になる

法定地上権の成立要件の4つ目は、競売により土地と建物の所有者が別々になることです。

なお、競売により同一人物が土地と建物の買受人になった場合は、法定地上権の成立を認める必要はありませんので、法定地上権は成立しません。

3、共有不動産の場合でも法定地上権は成立する?


弁護士
荒川 香遥
抵当権が設定されたのが共有不動産であっても法定地上権は成立しますが、具体的な状況によって法定地上権の成否の判断が変わってきます。以下では、「共有者全員による抵当権設定」と「共有持分への抵当権設定」に分けて、法定地上権の成否を説明します。

(1)共有者全員による抵当権設定

共有者全員により共有不動産に抵当権が設定され、競売がなされた場合、法定地上権が成立するのでしょうか。以下では、抵当権設定の対象が土地建物の場合に分けて説明します。

①共有の土地全体への抵当権設定

共有の土地全体に抵当権を設定したケースでは、法定地上権が成立します

土地が共有であっても、土地全体に抵当権が設定され、それが競売にかけられるのであれば、単独名義の不動産の場合と違いがありませんので、法定地上権の成立が認められます。

②共有の建物全体への抵当権設定

共有の建物全体に抵当権を設定したケースでは、法定地上権が成立します

たとえば、建物がAとBの共有で全体に抵当権が設定されており、土地がAの単独所有で抵当権が設定されていない場合、Aは土地に法定地上権の負担が生じることを想定していたため、法定地上権の成立が認められます。

③共有の土地・建物のどちらか全体への抵当権設定

土地・建物の両方が共有で、抵当権が土地・建物のどちらか一方に設置されたケースでは、法定地上権が成立します

たとえば、建物がAとBの共有で、全体に抵当権が設定されており、土地がAとBの共有で抵当権が設定されていない場合や建物がAとBの共有で、抵当権が設定されておらず、土地がAとBの共有で抵当権が設定されている場合のいずれについても、土地・建物ともに同一人物の単独所有と同様の状態といえますので、法定地上権の成立が認められます。

④共有の土地・建物の両方の全体への抵当権設定

土地・建物の両方が共有で、抵当権を土地・建物の両方の全体に設定したケースでは、法定地上権が成立します

たとえば、建物がAとBの共有で全体に抵当権が設定されており、土地がAとBの共有で全体に抵当権が設定されている場合で、土地または建物のいずれか一方についてのみ競売がなされたときは、土地または建物全体への抵当権設定と同じ状態ですので、法定地上権の成立が認められます。

(2)共有持分への抵当権設定

土地または建物が共有で、その土地または建物の共有持分に抵当権を設定し、実行された場合、法定地上権は成立するのでしょうか。以下では、抵当権設定の対象が土地の共有持分建物の共有持分の場合に分けて説明します。

①土地の共有持分への抵当権設定

建物がAの単独所有で抵当権が設定されておらず、土地がAとBの共有で、Aの共有持分に抵当権が設定されている場合、判例の考え方を前提とすると法定地上権の成立は否定されます(最判昭和29年12月23日)。

②建物の共有持分への抵当権設定

建物がAとBの共有でAの共有持分に抵当権が設定されており、土地がAの単独所有で抵当権が設定されていない場合、法定地上権が成立します

ただし、実際の事案では自己借地権の設定により法定地上権の成立を回避することができます。

③共有の土地・建物のうち土地の共有持分への抵当権設定

建物がAとBの共有で抵当権が設定されておらず、土地がAとBの共有でAの共有持分に抵当権が設定されている場合、判例の考え方を前提とすると法定地上権の成立は否定されます(最判昭和29年12月23日)。

④共有の土地・建物のうち建物の共有持分への抵当権設定

建物がAとBの共有でAの共有持分に抵当権が設定されており、土地がAとBの共有で抵当権が設定されていない場合、判例の考え方を前提とすると法定地上権の成立は否定されます(最判昭和29年12月23日)。

4、共有不動産に関するトラブルでお困りの方は弁護士に相談を


弁護士
荒川 香遥
共有不動産に関するトラブルでお困りの方は、弁護士に相談することをおすすめします。

共有不動産が競売にかけられて、土地と建物の所有者が別々になった場合において、法定地上権が成立するかどうかは、さまざまなパターンがありますので、知識や経験がない方では正確に判断するのは困難です

実際のケースにおいて法定地上権が成立するかどうかは、専門家である弁護士に判断してもらう必要がありますので、共有不動産に関する法定地上権の成否についてお困りの方は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

5、まとめ

法定地上権は、競売により土地と建物の所有者が別々になることにより、建物所有者に生じる不利益を回避するために認められた制度です。一定の要件を満たすことで法律上当然に法定地上権が発生しますが、共有不動産の場合には、法定地上権の成否の判断が複雑になります。正確に判断をするためにもまずは不動産問題に詳しい弁護士に相談すべきでしょう。

ダーウィン法律事務所では、共有不動産に関する問題を豊富に取り扱っておりますので、共有不動産に関するお悩みは、当事務所までお気軽にご相談ください。

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この記事を監修した弁護士

荒川香遥
  • 弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士

    荒川 香遥

    ■東京弁護士会
    ■不動産法学会

    相続、不動産、宗教法務に深く精通しております。全国的にも珍しい公正証書遺言の無効判決を獲得するなど、相続案件について豊富な経験を有しております。また、自身も僧籍を有し、宗教法人法務にも精通しておりますので、相続の周辺業務であるお墓に関する問題も専門的に対応可能です。

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